大学のオープンコースウェアサイト探訪3
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 日本人科学者によるノーベル物理学賞、化学賞の受賞のニュースが10月上旬全国を駆け巡った。京都大学オープンコースウェア(OCW)のトップページには、湯川秀樹先生のコースウェアと西田幾太郎先生のコースウェア の間に10月8日に京大で行われた「益川先生 ノーベル賞を語る−学生対話集会」(共催:京都大学基礎物理学研究所)の映像が掲載されるなどOCWスタッフの素早い対応が伺われる。画面をクリックするとYouTubeに飛んで再生される仕組みだ。一方、小林誠先生、益川敏英先生(以上、物理学賞受賞)、下村脩先生(化学賞受賞)の3氏を輩出した名古屋大学は、受賞のニュースが大学HPのトップページに並ぶ。いずれ名大の授業(名古屋大学オープンコースウェア)にも3氏の記念講演が公開されることを期待したい。

 JOCWのトップを切って2006年5月に紹介した「UTオープンコースウェア(東京大学OCW)」を久しぶりにのぞくと「法学・政治学系 労働法 ビデオ・講義ノート(第1回〜第5回)」「学術俯瞰講義 2007「エネルギーと地球環境」(全13回)」「法学・政治学系信託法(講義ノート 第1回〜第2回)」「法学・政治学系 医事法(講義ノート 第1回〜第3回)」が10月公開のニュースに並ぶ。いずれも講義内容の中身は濃い。ちなみにこちらのアクセスランキングのNo1は「学術俯瞰講義 2005「物質の科学」小柴昌俊 教授・・・とこちらもノーベル賞受賞者の人気が高い。JOCWの活動が近い将来、ノーベル賞受賞につながることを期待したい。




【立命館オープンコースウェアへようこそ】
http://www.ritsumei.ac.jp/ocw/
 実際に行われている講義の情報をデジタル化し、インターネットで公開している立命館大学OCWのサイト。2002年度から全学部・研究科でオンラインシラバスを公開しており、2006年6月20日よりオープンコースウェアの公開を開始した。2008年10月現在、学部/研究科では、理工学部/理工学研究科、情報理工学部、法学部/法学研究科、産業社会学部/社会学研究科、国際関係学部/国際関係研究科、政策科学部/政策科学研究科、文学部/文学研究科、経済学部/経済学研究科、経営学部/経営学研究科。インスティテュートでは国際インスティテュート、文理総合インスティテュート。研究科では、応用人間科学研究科、言語教育情報研究科、先端総合学術研究科、テクノロジー・マネジメント研究科。専門職大学院では、法務研究科(法科大学院)、経営管理研究科(経営大学院)、公務研究科(公共政策大学院)が参画しており、コースコンテンツ(概要、シラバス、カレンダー、講義ノート、参考資料で構成)、またはコースコンテンツが未登録のコースはオンラインシラバスのサイトが開く。理工系から法学系、経済系、文学系など専門性の高い、多様なコースが揃っており、今後の充実が楽しみ。

【早稲田大学OCW】
http://www.waseda.jp/ocw/indexj.html
 今年創立120周年を迎えている早稲田大学オープンコースウェアのサイト。公開科目一覧を見ると10月現在で、政治経済学部、法学部、第一文学、文化構想学部、文学部、第二文学部、教育学部、理工学部、人間科学部、大学院商学研究科、大学院アジア研究科、大学院文学研究科、大学院基幹理工学研究科、メディアネットワークセンター、オープンン教育など58コースが公開されている。公開科目一覧の個別の科目から「選択」をクリックすると授業情報とシラバス情報が表示される。シラバス情報には、講義概要、シラバス、教科書、評価方法、関連URL(授業についてのReal形式によるガイダンス)などがある。2008年度に入ってソフトウェア開発工学特論、情報基礎演習12、情報基礎演習14、情報基礎演習18,情報基礎演習21、情報基礎演習28,情報基礎演習50が加わっている。このほか関連してアジア研究機構のアジアサロン、アジアセミナー、シンポジウムなどの資料、動画コンテンツが公開されている。「シンガポールの東アジア戦略」「中国の経済・科学技術パワーをどう評価するか」「日本人とアジアの人々を結ぶ信頼関係‐アジア女性基金の経験を通じて‐」「東アジアの歴史認識をめぐる対立 歴史認識をめぐる葛藤はなぜ生じるのか?その克服の道筋を探る」「インドにおける社会変化と教育」「韓国政治と大統領選挙」「旅人の記憶―日本とインドの近代史の視点から」『中国の「三農問題」』といった興味深いタイトルが並んでいる。

【同志社大学オープンコースウェア】
http://opencourse.doshisha.ac.jp/
 同志社大学オープンコースウェアの活用のページをみると、同志社大学で学びたい学生や一般の人へのメッセージのほか、教鞭をとりたいと考えている人には、大学で行われている教育実践と自身の教育実践との整合性のチェック。現在教員の人には、他の教員と比較して自身の教育内容の再確認・・・をあげている。現在、神学部、文学部、社会学部、法学部、経済学部、商学部、文化情報学部、理工学部、言語文化教育研究センター、全学共通教養教育センター、文学研究科、法学研究科、総合政策学研究科、司法研究科、ビジネス研究科などで授業資料を公開しているが、公開されている資料の形式がいくつかある。最も多いのは提示資料や配布資料としてのPDFだが、神学部「宗教学」では、「講義ノート 同志社大学Podcastへのリンク」、文化情報学部公開科目「数学基礎U」では「提示資料 教材の構成(html)」、経済学部「サブジェクト演習1-12」では「ブログ ゼミの活動日記」、理工学部公開科目「言語理論T」では「ホームページ オンデマンド型インターネット授業」となっており、講義内容や担当講師の講義手法により、講義資料の部分が多様化している点がユニークだ。また、各科目の概要シートには「リンク:可 」「提示上映:可」 「複製:可」 「印刷:可 」「配布:可」「加工改変:不可」の利用条件が表示されている。

【筑波大学オープンコースウェア】
http://ocw.tsukuba.ac.jp/
 筑波大学の授業資料をインターネットで公開し、社会全体で知的資産を共有し、蓄積することをめざしている筑波大学オープンコースウェアのサイト。公開コース一覧によると、学群・学類(学士課程)、社会・国際学群 、 国際総合学類、生命環境学群、生物資源学類、理工学群、応用理工学類、物理学類、社会工学類、第二学群:平成19年学群再編以前の学群、 比較文化学類、 第三学群:平成19年学群再編以前の学群、工学基礎学類、大学院(博士・修士課程)、人文社会科学研究科、現代文化・公共政策専攻、 国際政治経済学専攻、ビジネス科学研究科、 経営システム科学専攻、数理物質科学研究科 、数学専攻、物理学専攻、化学専攻、電子・物理工学専攻、物質材料工学専攻、システム情報工学研究科、社会システム工学専攻、経営・政策科学専攻等がオープンコースウェアに参加している。多くの講義資料はPDF資料だが、生物資源学類の「基礎数学2008」の講義ノートが公開されている。今年度講義ノートを見ると「黒板の板書画像」と「Comment」と称して各講義内容に関するコメントの書き込みが公開されている。ちなみに2007年の講義ノートには各回とも受講者の記録ノート画像が公開されており、改善、工夫が見受けられる。

【JOCW Video Sharing Service】
http://cliplife.jocw.jp
 日本オープンコースウェア・コンソーシアム(JOCW)が9月からスタートしたビデオ講義サイト。ここでは参加大学が個別に公開している動画コンテンツ等を順次ライブラリー化し、集中的にオンデマンド公開していく計画。10月現在、女子栄養大学、慶應義塾大学、明治大学の3大学の講義が視聴できる。女子栄養大学、慶應大学はすでに独自にOCWのサイトを運営しているが、"明治大学商学部が作成しました「商学部キッズ」と「大学の社会連携のすすめ」が掲載されました。明治大学のオープンコースウェアの第一歩です"(明治大学HP 8月29日掲載、商学部Informationより)とあり、事実上明治大学はこれをもってOCWデビューを飾った格好。コンテンツは大学別、分野別、新作順の3つの入口からアクセスできる。分野別カテゴリーと現在登録されているタイトルは次の通り。人文科学系統、社会科学系統(社会思想史 Part 1〜Part 3)、理学系統、工学系統(画像工学 Part 1〜Part 4)、農学系統、医療・保健系統、家政系統(栄養生理学第4回講義:消化器系と栄養、第5回講義:泌尿生殖系と栄養、第6回講義:内分泌系-糖尿病と栄養 、第8回講義講義:脳と神経系)、教育系統(キッズプログラムPart 1〜Part 3、Part 5、Part 6)、芸術系統、総合・学際系統(MIT OCW 取り組みPart 1〜Part 4、キッズプログラムPart 2、Part4、大学の社会連携のすすめPart 1〜Part 4)。今後の充実が楽しみだ。

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