学習コンテンツのニューフェース
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 いよいよ2008年。今回は「学習コンテンツのニューフェース」として、以前、インターネット放送局「生涯学習講座」として紹介した京都府企画環境部スポーツ生涯学習室が、新規に運営を開始した「京都eラーニング塾」、「e−夢・まなびと」を運営する福島県教育委員会と生涯学習事業で連携している福島大学生涯学習教育研究センターの「市民向けインターネット配信講座」、そして大阪外国語大学eラーニング、大谷大学生涯学習講座ストリーミングコンテンツ、梅花女子大学デジタルコンテンツ・・・の5サイトを紹介する。

 それぞれ公開されているコンテンツのボリュームはそれほど揃っているわけではないが、試験公開中とうたっているサイトもあるが、ニューフェースとして今後に期待したい。今回、いろいろ見ていてとくに気になったコンテンツは、福島大学生涯学習教育研究センターの「金縛りを科学する(全3回)」だ。自分も時々体験するこの現象は、苦しい寝方(姿勢)に原因があると自分では感じていた。圧迫感から悪い夢を見て、恐怖で体が硬直したようになる。でもこれは夢だとわかっている自分もいる。で、夢から覚めて、早く楽になりたいと思うのだが、なかなか覚めない・・・悪魔や呪のせいだとは考えなかったが、こういう現象を科学する講義はなかなか楽しいものだ。




【京都eラーニング塾】
http://info.pref.kyoto.lg.jp/el/general/
 京都府では、インターネット放送局「生涯学習講座」に続き、府と市町村がインターネットで学習講座を提供するシステム「京都eラーニング塾」を2007年9月よりスタートした。自宅のパソコンでインターネット配信の講座が見られ、講師と受講者の間で質問、回答等のやりとりが可能で、講座配信中は何度でも繰り返し見られる。オープニング・コンテンツは京都府提供の「すこやかトレーニング教室」。続いて、城陽市の提供で城陽の遺跡・古墳と指定文化財を中心に紹介する「城陽2万年の歴史」、宇治市提供の「eラーニングで学ぶ 庭木の育て方と管理」、京都府提供の「すこやかトレーニング教室2」を開講している。今後、無料講座と有料講座、受講者を地域住民に限定する講座、スクーリングのある講座、地域的な制約なしに全国誰でも受講できる講座など、さまざまなタイプの講座を提供していく考え。システムや運営はインターネット市民塾と同じで、利用登録すると「MyPage」が設定され、メッセージや学習ノートなどの機能が利用できる。市民講師やNPO、学習サークル等の参画による手作り講座が歴史、伝統、文化が豊かな地域でどう広まるか注目される。京都のことをもっと知りたい、学びたいという全国のファンの期待に応えてほしい。

【市民向けインターネット配信講座(福島大学生涯学習教育研究センター)】
http://www.lll.fukushima-u.ac.jp/
 県民カレッジ「ふくしま学習空間・夢まなびと」と連携した大学公開講座や公開授業、出前講座などを実施している福島大学生涯学習教育研究センターのサイト。同センターでは、一般市民を対象としたeラーニングのあり方についての研究開発も進め、2006年度より一般市民を対象にした「インターネット配信講座」を試験公開している。現在、公開されている講座は「金縛りを科学する(全3回)」(講師 福田一彦教授)、「疲労と体力」、「運動とダイエット」(講師 安田 俊広 助教授)、「小学校教師のための器械運動指導法シリーズ(全3回)」(講師:白石豊教授/1,運動課題方式と前転/ 2,開脚前転・伸膝前転/3,後転)、「心理学の諸領域(2回)」(講師:木暮照正准教授)、「知の心理(全6回)」(講師:木暮照正准教授)・・など。利用希望者は公開されているIDとパスワードを入力してログインすると学習できる。なかでも眠りにつくとき、あるいは目覚める時に起こる現象ともいわれている「金縛りを科学する」の講義は、日本、香港、米国の黒人ニューファンドランドなどにおける睡眠時の出現率調査の報告など、興味深い。原因は魔女、呪い、零のせいにしたりしていて病気だと思われていないところがあるが、実際には思春期や疲れているときに起きやすい現象とか。ちなみに香港では「鬼圧(Ghost Oppression)」と呼ばれているとのことだ。

【大阪外国語大学eラーニング】
http://el.osaka-gaidai.ac.jp/lang/
   日本語を含む世界の25の言語の教育研究を行うと同時に、言語の運用能力に基づき、さまざまな世界の地域研究を行っている大阪外国語大学のサイト。このeラーニング・プロジェクトは同大学が蓄積した言語に係る教育研究資源をもとに、語学教育の補完教材を最新のIT技術を駆使して広くインターネットで公開し、大学の内外での語学教育の発展に貢献しようとするもの・・・とか。公開中の教材は映像コンテンツと問題集コンテンツの二つで、現在、公開されている言語はドイツ語、スペイン語、ロシア語、トルコ語、ヒンディー語、ウルドゥー語、中国語、朝鮮語、ビルマ語、モンゴル語、ハンガリー語、ポルトガル語、スウェーデン語・・・の13言語。 各言語とも、学習内容、言語の魅力、関連リンクなどのメニューがあり周辺情報も充実している。語学で重要なのは発音と文字の書き方、ということからネイティブの口元を見ながらの母音や子音の発音練習や板書きをじっくり見せる文字の書き方など、言語の基礎が学習できる。ヒンディー語、ウルドゥー語など普段あまり馴染みのない言語を学習できるサイトとして大変貴重な取り組み。

【大谷大学生涯学習講座ストリーミングコンテンツ】
http://web.otani.ac.jp/streaming/
 大谷大学では学内で開催した各種式典やイベント、生涯学習講座などのストリーミングコンテンツを配信している。現在、公開されている主なコンテンツは、大谷宗教学会 第二十六回「大拙忌」記念公開講演会「中華なき辺境」の宗教性(内田 樹 神戸女子学院大学文学部教授)、鈴木大拙没後四十周年 記念講演「菩薩の威儀(おこない)」(ノーマン・ワデル 大谷大学名誉教授)、「鈴木大拙の仏教観と東西思想の出遭い」(マイケル・パイ 大谷大学客員教授)、『間(あいだ)』の妙 −鈴木大拙と曽我量深−(上田閑照 京都大学名誉教授)、マイケル・パイ博士特別講演会 「グローバル社会と宗教学−宗教学の立場から社会不安を考える−」・・・など。また、仰木の里公民館の地域の子育て支援事業で、同大学児童文化研究会が実施したパネルシアターや人形劇、短期大学部幼児教育科音楽教科学生が湖西キャンパスフェスタで実施したミュージカル「人魚姫」のビデオ映像等もストリーミングコンテンツとして公開されており、教育資源を活用した大学の地域貢献活動の一端がネットで体験できる。

【梅花女子大学総合学術ポータルサイト 学び舎 デジタルコンテンツ】
http://manabiya.baika.ac.jp/el/
 本サイトで公開されているコンテンツの中で、卒業制作絵本をデジタルブック化して公開している『卒業制作絵本「児童文学科絵本制作 ―世界でたった一冊の絵本−』に強く惹かれた。デジタルブックは読み語りモードと手動再生モードがあり、どちらも本物の絵本をめくるような感覚で読むことができる。受け手のペースでページを繰りながら、楽しめ、それぞれの作品を在学生が「読み語り」している。「へいへいへい」「ほたる狩り」「夏まつり」「本のおいしい食べ方」「空とぶヒヨコ ヒュージ・ヒュージとパブター・ヒュージ 砂漠の宝石」の5作品が公開されているが、いずれもたいへん魅力的な作品だ。その他、梅花女子大学図書館で所蔵しているちりめん本(平紙を含む)167冊(長谷川弘文社以外のものも含む)を全てデジタル化した『長谷川弘文社の「ちりめん本」の世界』は、静止画と丁寧な解説文で構成され、初心者にもわかりやすいものとなっている。「チーズケーキを作ろう」(講師:短期大学部生活科学科 製菓コース 富永 明)、「俄という芸能ー新喜劇のみなもと」(講師:短期大学部日本語表現科 荻田 清)、「英語の名字のおもしろさ」(講師:短期大学部英語コミュニケーション学科 松原正行)、「世界の国々 カナダ編(講師:国際英語学科 FRANCES Kanabe)などのコンテンツもユニーク。

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