子どもたちの未来に伝承するもの
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今回は試行錯誤の末、「わらべうた 光への旅」(TBS)、「NPO法人メダカのがっこう」、「絵本ナビ」、「NPO法人国際自然大学校」、「シューレ大学」の5サイトを取上げた。この5サイトをひとつのテーマで括るのはむずかしいが、選んだ意図は子どもたちの未来に伝承するもの・・・という視点でいろいろなサイトを見ていて、たまたま今回はこの5サイトとさせていただいた。

 「わらべうた 光への旅」は懐かしい地域映像と懐かしい歌声に出会える。子どもや孫に自分では歌ってやれない人が大半だと推察されるので、このサイトは貴重だ。「めだかの学校」も、つい50年ぐらい前までは全国各地に当たり前にあったのかもしれないが、いま改めて広め、継承する必要性が高まっている。また、本を読む習慣はやはり幼児からつけると、後々の読書力や生きる力につながる。それには大人も絵本を読むことが重要。「絵本ナビ」は、その点面白い仕掛けである。「国際自然学校」と「シューレ大学」は、ますます生きにくくなっている子どもや青少年の心と体を解き放し、鍛える場として注目される。片や広大な自然に囲まれて培う人間性、片や都心のマンションの一室でさまざまなテーマと対峙するなかで培われる人間性、どちらもFeel(感じる力)・Think(考える力)・Act(行動する力)を鍛える試みとして取上げてみた。




【わらべうた 光への旅】
http://www.tbs.co.jp/inpaku/warabe/pro01.html
 通称インパク(インターネット博覧会―楽網楽座:2000年12月31日から2001年12月31日までの1年間開催)に参加したTBSのサイト。時代と共に埋もれてしまいそうな「うたのDNA」 を発掘し、ほんの少しでも「伝えてみたい」、と考え、奄美、佐渡、鹿児島、種子島、壱岐、椎葉、秋田、村上、但馬、遠野、愛媛、京都、五箇山、富山、北海道、会津、錦糸町、 沖縄、竹富島、流山・・と20地域のわらべうたをアーカイブ。コンテンツの構成は、地域の紹介とわらべうたマップ、旅に記憶、歌の記憶、取材協力先の紹介からなる。取材協力先 は老人クラブや小・中学校、幼稚園、こどもクラブ、公民館、伝統芸能の保存会、わらべうたの伝承者など。「遠野」を例に紹介すると「遠野の紹介」には「民話伝承が根づいたわ け」「わらべうた誕生の背景」「遠野人の信仰」「石碑は何を語るのか」「南部曲がり家」「遠野まつり」などの解説文が並び、「旅の記録」では遠野の風物詩の写真20点のスライ ドショーが楽しめる。そして「歌の記憶」は「あそびうた」(赤ちゃんと遊ぶ唄/幼い子と遊ぶ唄/みんなと遊ぶ唄/女の子の遊び唄)、「呼びかけの歌」(つぶどん/てるてるぼう ず/とび/からす/夕焼け小焼け/よんどりほい)、「はやし歌」(なきびっちょ/あのガキどこのガキ/返事をはやす唄)、「子守歌」(こかお/からすぁあっぱ)・・・の解説と歌の 再現ビデオが見れる。「取材協力者」は伝承者の阿部ヤエさんと阿部さんに運命的な出会いをして弟子入りしたという露木大子さんの2人。懐かしい歌声を聴くと歌のDNAは自分の DNAでもあることを痛感。

【NPO法人メダカのがっこう】
http://www.npomedaka.net/
 約300年前の『会津農書』に記されている「田冬水」という農技術は、耕さない冬には田んぼに水を張っておくと有機物が生成されて土が肥える・・・という技術だとか。これは今 でいう自然農法、有機栽培技術の考えにつながる。NPO法人めだかの学校は、環境破壊やエネルギーの枯渇が問題となっている現在こそ、こうした自然再生が重要とし、環境教育、 生物指標確立のための準備、命を活かした田んぼづくりをする農家の支援・・・などの活動を展開している。主な活動をみると「美しい日本」は生き物が賑わう田んぼから・・・を キャッチフレーズに「たんぼから自然再生」「命を活かしたたんぼのつくり方」「田んぼの生き物調査」「ありがとう田んぼ」「プロジェクト」「ネットワーク」等のコンテンツが 公開されており、昔ながらの田んぼの再生を出発点に環境教育や環境改善活動の普及を推進している。「たんぼから自然再生」のコンテンツには(1)なぜ耕さなくていいの? (2) なぜ農薬がいらないの?(3) なぜ肥料がいらないの?(4)なぜ除草剤がいらないの? (5) なぜ殺虫剤がいらないの? (6) こういう田んぼが増えると何が変わる の?(7) これは新しい技術なの? ・・・といった自然再生のポイントが解説されている。また、田んぼの生き物調査では、イトミミズの抑草効果、クモ、カエル、ツバメなど多 くの生きものの大好物であるもっとも小さなユスリカ・・・など、役に立っている生物について具体的に紹介。また、田植え前に農家お金を払うと4分の1反歩(2.5アール)分の 広さを、一年間サポートしてくれる「田んぼ組」の取り組みが紹介されている。

【絵本ナビ】
http://www.ehonnavi.net/
   株式会社 絵本ナビが運営する、子どもに絵本を選ぶための情報を集めた「参加型絵本情報サイト」。「対象年齢別」(0〜1歳から、1〜2歳から、2〜3歳から等)、「新着レ ビュー」(毎日投稿される新着の感想を画像入りで紹介)、「評価ランキング」(登録メンバーによる作品評価を数値化した人気ランキング)、「新刊情報」(最近数ヶ月の新刊絵 本の案内)、「話題の絵本」(テレビや新聞・雑誌などで話題になった絵本をピックアップ)、「パパ's 絵本プロジェクト」(育児まっ最中の3人のパパが、父親ならではのセレ クトで絵本をリコメンド)・・・などのメニューから絵本をチェックできる。参加メンバーに登録すると絵本の感想を書け、感想文が掲載されるとポイントがつく。ポイントが貯ま ると「絵本ナビShop」で商品を購入する際に使用できる。運営サイドでは、感想文の投稿について『子どもと一緒に感じたことを思い出して、記しておくことができるとか。「この 絵本を読んであげたとき、うちの子はこんなことを言っていたっけ」「この絵本は、こんな想いで買ってきたんだった」といったふうに、感動をいつまでも鮮やかに思い起こすこと ができる』のでは、と一石二鳥の効用を説く。実際、お母さんやお父さんのレビューはリアリティも味もあって参考になる。因みに現時点の評価ランキングベストテンは「おへその あな」「うんぴ・うんにょ・うんち」「ゆうちゃんとれいちゃん」「幸せの絵本」「幸せの絵本 2」「こんとあき」「さっちゃんのまほうのて」「きょうはなんのひ」「あっちゃ んあがつく たべものあいうえお」 「ちょっとだけ」・・・。

【NPO法人国際自然大学校】
http://www.nots.gr.jp/modules/tinyd0/
 自然や人とのかかわりの中で、前向きに生きる人を育てることをモットーにしているNPO法人国際自然大学校のサイト。本校は自然の中の体験活動を通して子どもから大人まで、よ りよい人間形成が行なえる教育活動を開発し、実施している。東京校、山梨県日野春校、群馬県にいはる校、栃木県日光霧降校という4校を拠点に全国規模で野外教育・自然体験活 動を積極的に展開・普及している。自然学校の主な主催事業をみると、こどものための事業として、ビギナー、フロンティア、アドベンチャークラブ等の子ども体験教室(年間プロ グラム)、田舎暮らし等の週末利用プログラム、春・夏・冬のシーズンのキャンプ。大人のための事業では、里山自然塾、自分を見つめ直すプログラムのアウトフィッターコース。 指導者養成のための事業では、プロ養成として 自然学校指導者養成学校、アマチュア・ボランティアの養成としてキャンプカウンセラー養成コース(勉強会)など。また、ユニー クなプログラムとして、いつ来てもいつ帰ってもいいキャンプ「いついつキャンプ」がある。このキャンプには決められたプログラムはなく、夜、子ども達が集まり、明日何をする かを相談して決めるのだとか。因みに次の「いついつキャンプ」の開催は、8月1日〜20日の期間、山梨県北社市の国際自然大学校日野春校で予定されている。参加対象は小1〜中 3。定員は各日30名、費用は1泊10000円。子どもの人間形成には、時にゲームから引き離し、今は少なくなった年の違う子どもたちが一緒に生活する、キャンプや自然体験活動が求 められるのでは。

【シューレ大学】
http://shureuniv.org/top/
 あいさつ文に「シューレ大学は、1999年4月、「自分の知りたいこと・表現したい ことを、自分にあったスタイルで探求しよう」「学生たちで運営していく大学とし、入試なし、 入り たい人が入り、単位や年限・卒業条件はなく、それらは探求する学生自身が自己決定をしていこう」 「キャンバスは日本中、世界中であり、自宅も大学の場と考えよう」な ど、全く新しい発想のもと、 そんな大学を創ってみたいという若者たちの手でスタートしました。』(東京シューレ代表 奥地圭子)とある。大学の活動の「具体的な活動」をみ ると「alternative education」(不登校研究会、フリースクールスタッフ養成講座等)「art」(クロッキー、ポップミュージック、スクリーン)「computer」(PC講座、ホーム ページ委員会)「language」(comprehensive English、韓国語等)「life issues」(心理学、生命論、生き方創造)「management」(運営会議、掃除)「social science」(現代 世界史、文化史、環境講座等)「sport」(スポーツサークル)「special」(異分野交流、公開講座、ゲストパフォーマンス)「project」(ソーラーカープロジェクト、映像プロ ジェクト、演劇プロジェクト)・・等の分野・テーマがあり、自由闊達な雰囲気がストレートに伝わってくる。マンションの一室をキャンパスにした多様な活動による人間力づくり が注目される。

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