市民力と社会の課題解決を支援する市民メディア
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今月はインターネット時代を最も象徴する動きとして注目される市民によるニュースや映像情報の発信活動にスポットを当てた。TBS報道局出身の自称市民メディア・アドバイザーでジャーナリストの下村健一さんは「自分で撮ったリポートを、ビデオ化して上映会を開いてる人。 ブロードバンドの普及が待ちきれず、マッチ箱サイズの小窓の画面で 動画配信を始めている人々。常設の発信集団を目指して、NPO体制作りを進めているグループ。既存メディアの伝え方に不満があっても、<<批判>>することしかできなかった20世紀から、<<代案>>を発信できる21世紀へ。―胎動は、急速に広がっている」(http://www.ken1.tv/index.html)・・・とのべ、市民、学生、こども、若手報道陣たちの情報発信活動を注目している。

 30年の歴史を持つ日本ビクター主催の第29回(2007)東京ビデオフェスティバルのビデオ大賞「漢字テストの不思議」(長野県梓川高校放送部)をみても、高校生が制作した番組が、最早、プロの放送番組を完全に超えていることは明瞭だし(http://www.jvc-victor.co.jp/tvf/29th/prize/tvf2007_prize.html)、オーマイニュースの記事『「格差社会」のリーダーはテレビ、それとも新聞? その高給が報道姿勢に影響していないか』(岡田 克敏さん執筆)は、テレビ局や新聞社が格差社会について書けない痛いところをズバリ暴いている。いまや映像制作やニュース作成のマインドや視点、機材といった制作環境に加え、BBインターネットという情報発信手段が普及したことで、世界的な課題、地域の課題、社会問題、歴史的な出来事から自然や文化,暮らしまで、生活者や市民の視点、マスコミの制約を超えた専門的な視点で問題提起や課題報告が可能な時代となっている。市民力の向上と社会の課題解決を支援する市民メディアの充実と健闘を期待したい。




【オーマイニュース】
http://www.ohmynews.co.jp/
 市民参加型インターネットニュースサイト『オーマイニュース』は、"市民みんなが記者だ"をコンセプトに、誰もがニュースを発信することができるプラットフォームとして2006年8月 28日に創刊。一般のニュースは専門の記者が作って発信するのに対し、『オーマイニュース』は、これまで「読者や視聴者」だった人々がニュース作りの主役。ただし、編集局に送ら れた市民記者の原稿は、事実確認、校正などが行われた上で記事として掲載される等、情報としての信頼性や品質チェックはプロフェッショナルに行われる。また、掲載された記事に は原稿料が支払われる(料金は内容に応じて1本あたり2,000円、1,000円、300円のランクがある)。市民記者になるにはネット上から誰でも登録が可能。市民記者は男性が多いものの 職業、年齢、地域構成は多岐にわたっている。登録者は2007年5月現在で3,400人を突破した。 ニュースのカテゴリーとそれぞれの記事数は「わたし(1196)」「生活・医療(546)」 「社会(1757)」 「政治(770)」 「経済(358)」 「海外(1097)」 「カルチャー (897)」 「スタイル(705)」 「スポーツ(332)」 「IT(373)」 「地域版(519)」。「読者が選んだ注目記事」一覧には、見出し、記者名、評価点が一覧で公開されており、注 目度の高い記事は明快。また、各記事へのコメントとその閲覧数、推薦数も公開されており、市民記者のニュースを多角的にフォローしている。特に社会性の高い記事やコラムに特徴 がある。運営は、オーマイニュース・インターナショナル株式会社。

【インターネット新聞JANJAN】
http://www.janjan.jp/
 インターネット新聞『JANJAN』は「市民の、市民による、市民のためのメディア」を標榜し、2001年12月に登場。創刊にあたって「多くの人々が市民記者になって生活や仕事、ボランティア活動の現場からニュースを送ります」「市民のボランティア活動とカンパが編集作業を支えます」「既存マス・メディアのニュース価値にかかわりなく市民の視点に立って 良質な言論を創り上げます」「正義と自由、公正を大切にする市民社会の創造を目指し、市民主権と地域自治を確立する制度改革に取り組みます」「国境を越える情報交流による異 文化の相互理解を進めます」・・・の5つを宣言。記事のカテゴリーは「暮らし」「地域」「文化」「メディア」「ビジネス」「政治」「世界」「選挙」「写真」「コラム」「特 集」「編集便り」「裁判」「記者会見」「映像」「音声」。「特集」では2006年12月に行った市民記者共同企画『ザ・職人』が目についた。これはjanjanの市民記者講座の受講者有 志が実現した企画で初回のテーマはお正月を意識した「おみくじ」。市民記者有志が総力取材したさまざまなおみくじに出会えて面白い。また「編集便り」には、毎月のJANJAN大 賞、編集委員選賞、編集部長賞が紹介されている。市民記者の原稿は基本的に無料だが、報奨金制度があり、優れた記事には賞金が出る。さすがにJanJan大賞者の記事はどれもレベ ルが高く「夕張無惨〜写真家「風間健介」の目を通して」(佐藤弘弥記者)等、感慨深い。そのほか 映像論壇〜ビデオで語る時代の証言者たち〜「堀田力 新しいふれあい社会づく り」、スーダンやパレスチナをレポートした「NGOが行く」、レバノン危機を訴える「アラブ人の目 ナジーブ・エルカシュ氏は語る」、日本外国特派員協会・記者会見「国連報告 者・アルストン氏:フィリピンの暗黒状態の人権に警鐘」など、ビデオジャーナリズムが充実している。運営は”NPO型株式会社”日本インターネット新聞社。

【OurPlanet-TV】
http://www.ourplanet-tv.org/
   映像による情報発信に特化し、プロ・アマを問わず、ボランティアスタッフ中心に活動している社会貢献型非営利放送局。NPO活動としてはネット配信事業の他、NPOを対象にした広 報セミナーや映像作品の上映会、コンクール等のイベント、映像制作事業等を行なっている。OurPlanet-TVの番組内容は、平和・環境・人権・教育といった社会的課題に光をあて、 マスコミが見過ごしてしまうような事柄を救い上げ、映像化・番組化を支援し情報発信している。担い手は、ジャーナリストのほか子どもから大人まで一般市民が対象。活動拠点の メディアセンターでは撮影用カメラや編集機材などを提供し、制作活動をサポートしている。番組はNGO関係者やジャーナリスト、当事者などが「現場」で実際に見た、聞いた、感 じた実感を隔週で配信する「ContAct」(人と人が知り合い行動を起こすきっかけになるように、という願いを込めて命名)、「Live Program」(シンポジウム等のライブ配信・オ ンデマンド配信)、「Planet-Eyes」(オリジナルコンテンツ)、「Planet-Blinks 」(寄せられたビデオレポートやワークショップの映像)、「Preview&Review」(お勧めのイン ディペンデントフィルムの紹介)、「ART&Music」「Archive」・・・など。大量消費国なのに、温室効果ガスの削減には非協力的であり続けた国、アメリカ。その背景には、どん なカラクリがあったのか?・・の衝撃的なレポート「なぜ遅れたアメリカの温暖化対策」「日本の環境首都はどこだ?」(ContAct)、『 全国シェルターシンポジウム2006 』(in 函館)『日本のODAは世界の貧困を救えるか? 』 『イラクに咲く花〜見る、聞く、知る、イラクの今と私たち』(Live Program)、伝えたい私の農業〜19歳 宮下紗妃さんの夢」 「本のワンダーランド神保町〜歴史をつなぐ町〜」(Planet-Blinks)など力作が並ぶ。運営はNPO法人OurPlanet-TV。

【日刊ブログ新聞「ぶらっと!」】
http://www.burat.jp/top
 日刊ブログ新聞「ぶらっと!」は「スローライフ」と「まちづくり」の視点から地域の動きを情報交流する会員制のコミュニティサイト。「地域ライター」に登録するとそれぞれの 視線でとらえた地域の話題を「記事」として発信できる。記事のテーマは「まち自慢」「衣食住」「遊・学」「自然」「あれこれ」「スローグラフ」の6つ。一般会員はこれらの記 事にコメントしたり、1日1回気に入った記事に「拍手」を送ったりして、ライターのポイント獲得や人気NEWSランキングに参画すことができる。このサイトの特長は「スローラ イフ」と「まちづくり」に絞った全国ネットのコミュニティメディアが形成されているところか。地域ライターの条件は、1.ライター業務を継続的かつ情熱的にやっていただける方、 2.地域に根付いた活動を実際に行い、かつ生活者の視点で情報提供ができる方、3. 仕事や興味を通じて特定のテーマで情報提供ができる方、 4.スローライフを実践している 方・・・の4つで、記事に責任を持つよう本名での活動が求められている。「拍手」によるランキングメニューをみると、特定の記事のランキングとライターのランキング があ り、ライターのランキングでは昨日、1週間、1ヶ月の3つのランキングが公開されている。全国の地域ライターが魅力的な記事、他地域の参考になる記事、自分の地域をアピールす る記事等をコンスタントに提供する手腕を競っている。地域ライター一覧をみると、主婦やNPO活動者、行政関係者、大学教授等のまちづくり関係者や農業、詩人、写真家等のスローラ イフ実践者など、さまざまな立場の方々が参画している。シニアの生涯学習や地域貢献にも有効で、結構楽しめるサイトでは。 また、「一日一善」や「拍手」で獲得したポイントを応援したいNPO団体や市民 団体への投票により、経済面での応援もできる「CSR BANK ぶらっと!賞」も実 施中。運営は日本テレネット株式会社。                          

【杉並テレビ(杉並住民ディレクターWEB SITE)】
http://www.suginami-tv.jp/
 「仕事」と「生活」の場が二分しがちな都会の生活。子供の育つ地域のことを自分たちも考えていきたいと住民ディレクター活動に着目。2005年春、「住民ディレクター」の産みの 親・育ての親である(有)プリズム代表の岸本 晃氏(http://www.prism-web.jp/index2.html=2003年12月のgoodsiteで紹介)を講師に招いて開催した「子供のCMつくり自主講 座」がきっかけとなり、有志により「杉並住民ディレクター」を発足。以後、熊本ケーブルテレビ(KCN)の「使えるテレビ」で5分のレギュラー枠「杉並便り」を放映。「市民メ ディア全国集会in山江村」やCEATEC JAPAN 2005の「ユビキタス村TV」、高知県大方町「黒潮テレビ局」開局イベント等に参加するなど、各地の住民ディレクター活動に参画し、発 表やインターネット中継を行うなど持ち前の行動力を発揮。 その後、地元杉並区の協力を得て、都市型住民ディレクター活動のスタートアップとして、教育委員会主催の「ホーム ビデオを活用した地域つくり講座」、ジョイフル杉並講座「ホームビデオで発見!わが街・地域ドラマ」、青少年児童課主催の「あなたもCMディレクター」等の企画・運営・協力等 に携わるなど、中山間地のまちづくり、地域活性化の手法として注目された住民ディレクター活動を都市部で挑戦し続けている。現在公開中の作品は、2006年10月開催講座の受講者 らが「杉並の魅力」をテーマに制作した「善福寺川周辺の自然」「ファーム荻窪」「杉並で学ぶ」「古くて新しい街・阿佐ヶ谷」や「杉並住民ディレクターの活動紹介」、杉並の高 校生が制作した、商店街のCM」など。肩肘はらずに自然や暮らしなど身近な事柄を題材に映像化しており、映像作りや情報発信を通じた都会における人と人のつながりづくりが期待 される。

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