民間主導による地域のキャリア教育
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今回は「地域のキャリア教育」というテーマで国のモデル事業の関係サイトを中心に選定を行なった。経済産業省の「地域自律・民間活用型 キャリア教育プロジェクト」では平成17年度モデル事業を25件採択。18年度はこれらの継続事業に加え新規事業を4件追加。現在、29事業が走っている。今回は17年度の実施事業の中から4事業をピックアップし、goodsiteに選定。また、平成13年度から「産業協力授業」のモデル化と普及に取組んでいる(財)コンピュータ教育開発センターの「産業界との協力授業について」を選ばせていただいた。

  今回、モデル事業のサイトをひととおりチェックして、事業についてきちんと情報公開しているところとおざなりなところの差が大きいことをまず感じた。また、17年度事業の終了から18年度事業の立ち上がりまでの空白期間とか、事業の受託契約期間の谷間はサイトの公開がままならないということもあるようだ。こういうサイトコンテンツはモデル事業が終了したらどうなるのか気になる。事業が終了しても活動を自律して継続できることや、せめて事業成果の公開は続けて欲しいものだ。  さて「地域」の「キャリア教育」だが、今回、紹介を見送った地域を含めて、それぞれの地域で個性的な取組みがされており、地域を越えて情報が流通することにより、さまざまな関心や興味を喚起し、先生にも子どもたちにも、そして企業にもたいへんいい刺激を与えているという印象をもった。




【瀬戸キャリア教育推進協議会】
http://www.setocci.or.jp/career/
 瀬戸の大人がみんなで瀬戸の子どもを育てるプロジェクト。子どもたちが健全な人生観、社会観、仕事観をもち、進路を主体的に決めていける力を育む「瀬戸キャリア教育推進協議会」のホームページ。経済産業省の「地域自律・民間活用型 キャリア教育プロジェクト」に瀬戸商工会議所が提案した「やきもののまち・瀬戸におけるものづくり『原体験』を通じたキャリア教育の推進」が採択され、17年度から3年間のプロジェクトとして「キャリア教育のヒアリング調査」「キャリア教育の専門家による教員研修」「市民講師活動を支援する市民講師事前研修」「ものづくり体験学習の支援」「市民講師派遣による授業実施」「職場体験受け入れ先開拓の支援」「教材カリキュラムの作成」「広報活動」・・・などに取り組んでいる。瀬戸市祖母懐小学校の5・6年生の総合学習「21世紀の民吉をめざして」では、「身近な地域の学習を通して問題解決の力を育む」「自分で考える力の醸成、子どもたちのアイディア、独創性を伸ばす」「子どもが共同して事業を立ち上げることのおもしろさを体験させる」ことを狙いとして、地場産業・伝統産業のやきものを題材に、ものづくりから販売までを体験。中学生の職場体験では、食品向けパッケージ工場の「パッケージづくりの魅力」や電器メーカーの組立作業を体験する「一人屋台方式ものづくり」などの体験を実施し地域の産業や仕事を学びながら職業観を育てている。やきものとファインセラミックスのまちの未来を担う子どもたちに期待しよう。

【鳳雛塾 ケースメソッドを活用した一貫型ビジネス人材育成】
http://www.nhk.or.jp/miraijin/
   民間プロデューサーが佐賀県内の行政機関、教育機関と産業界をつなぎ、地域活性化のための人材育成に取組むNPO法人鳳雛塾のキャリア教育事業のページ。同NPOは小学生から大学生・社会人に至るまでのすべてのステージで「起業家教育」を実践している。その特色は「ケースメソッドを活用した一貫型ビジネス人材育成キャリア教育事業(佐賀モデル)」にあり、「地域自律・民間活用型 キャリア教育プロジェクト」にも採択された。ビジネススクール形式の実践的な起業家教育を小学生・中学生・高校生の授業に応用することで自ら考え、自ら学び、自ら行動するという「生きる力」と「人とつながる力」の2つの力があわさり、起業家精神(アントレプレナーシップ)が養成される。学習は、ステップ1:ビジネスや商売の基礎学習、ステップ2:ケースメソッドを用いた学習(ビジネス等の仮想体験)、ステップ3:実地体験のための事前学習(調査や広報、制作活動など)、ステップ4:実地体験学習(キッズマート、インターンシップ、きゃーもん祭)、ステップ5:振り返り、発表会(企業への提案、協力者へのお礼など)で構成されている。小学生の教育では、地元商店街や佐賀駅等での出店体験活動(キッズマート)を実施するために、市場調査から商品の仕入れ、値付け、広報活動、事業計画作成、商売実践、収支決算に至るまでの一連の企業(商売)活動をケース教材等を用いて学びながら、また、様々な人たちとの触れ合いや自主性を尊重した教育活動を実施している。将来の佐賀県のリーダーたちを育む取組みとしても注目される。

【羽島商工会議所 小中高一貫型キャリア教育】
http://www.hashima-cci.or.jp/kyaria/top.htm
   地域自律・民間活用型 キャリア教育プロジェクトに採択されている岐阜県羽島商工会議所のキャリア教育事業のページ。羽島市のキャリア教育は、将来の産業を担う子どもたちに対し、働くことの意義・面白さを理解し、ものづくり技術やビジネススキル等、実社会で活かす取組みとなることを目指している。そしてその特色はロボットの設計・製作・制御を通じ、ロボットやITなどの地域のものづくり産業の担い手を養成する・・・というところにある。産業界が求める能力を「人間関係形成能力」「問題解決能力」「将来設計能力」「意思決定能力」「創造性・企画力・実行力」とし、小学校では働くことの意義を理解し、興味と仕事のつながりを知る。中学校では働くことに必要なキャリアを理解し、興味・関心にもとづく職業観を形成。高等学校では社会人としての資質心得を理解し、自立的な将来設計を伝達する、としている。マナー学習、進路学習、キャリア学習などのカリキュラムに加えて、昨年度事業では、小学生はロボット製作&プログラミングとして「かたつむりライン・トレーサーロボット」の製作、中学生はロボットテクノロジー教育として「フォークリフト・ロ ボット」の製作、テクノフェアへの出展、また校長会特別プロジェクトとして小中高ロボットコンテスト「ロボフォースG勝利を目指せ」を開催した。IT立県・岐阜は未来の人材育成にも意欲的。

【NPO法人企業教育研究会】
http://ace-npo.org/
 企業と地域が連携しながら、新時代にふさわしい授業実践を開発するNPO企業教育研究会(理事長:藤川大祐・千葉大学教育学部助教授)のページ。千葉大学教育学部で実践してきた企業教育のノウハウを活かして、「企業等との協力による授業・教材づくり」「学校のための授業づくりに関する相談・サポート」「企業のための教育貢献活動に関する相談・サポート」「教育を学ぶ学生のための実践の場の提供」・・・などに総合的に取組んでいる。『教育ルネサンス ことばの教室』(読売新聞)、「食の時間」(マクドナルド)、「好きなことを将来の仕事にする!」(千葉ロッテマリーンズ)、「ゲームとの付き合い方を学ぼう」(ソニー・コンピュータエンタテインメント)、「次世代ネットビジネスの提案」(ヤフー)、「チョコレートから考える日本と関係の深い国々」(ロッテ)、「太陽光発電について学ぼう!」(京セラ)、「千葉県の伝統産業」(キッコーマン)、「福祉とコンピュータ〜技術でつくるバリアフリー社会〜」(NEC)、「クイズで学ぶ食品の輸入」(明治屋)、「未来の車をプロデュースしよう!〜環境のことを考えて〜」(ダイハツ)などの実践事例がある。「地域自律・民間活用型 キャリア教育プロジェクト」でもシャープ、キッコーマン、JAL、NECなどの協力の下、各企業の専門分野を活かしたキャリア教育を千葉県内で実践中。                                                     

【産業界との協力授業について(コンピュータ教育開発センター)】
http://www.cec.or.jp/e2a/sangyou/indexs.html
 (財)コンピュータ教育開発センターが教育機関と産業界との連携を推進し、交流を活性化させることを目的に平成13年度から15年度に実施したモデル事業(H13情報経済基盤整備事業・H14地域産業協力型教育情報化推進事業・H15産業協力授業プロジェクト)の調査研究報告に基づいて、協力授業35モデルを紹介している。産業界の講師が実施する授業の「ガイド」、授業を紹介する「授業情報」、国内・海外の事例などを掲載。「授業情報」には、企業のノウハウを活かした授業アイデアがあり、それらをもとに実践した事例も参考として掲載されていて「キャリア教育」という視点で見ても参考となる。また、平成16年度からは「産業協力情報授業」(H16教育情報化促進基盤整備事業・H17・18 教科「情報」[高校]における産業協力情報授業)として、産業界講師によるIT先進技術や情報活用技術をテーマとした授業をモデル化している。17年度に実施した「非接触IC技術から学ぶユビキタス社会」(NPO法人 企業教育研究会)、「フェリカ活用事例 沖縄編」(NPO法人 企業教育研究会)、「CGアニメ入門」-CGアニメーションをつくろう(有限会社カヤ/株式会社ドーガ)、「自分だけの地図作り-GIS、GPSによる情報の利用活用」(NPO法人GIS総合研究所)、「世界一のサッカーロボット「VisiON」と制御技術U」(NPO法人 マルチメディア・エデュケイショナル・フォーラム/ヴイストン株式会社)、「コンピュータに日本語をしゃべらせよう」(言語工学研究所)の紹介では、テーマが情報技術だけにビデオレポートやロボット、3DCG制作ソフトの実演ムービーもあり、楽しめるほか、学びの場に感動を呼び起こす授業事例が豊富に蓄積されていて便利。

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