イノベーションする公共図書館−2
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 前回に続いて「イノベーションする公共図書館」なる視点で北から南までいろいろアクセスしてみたが、図書館のホームページは「蔵書検索」「お知らせ」「利用案内」といった旧態依然としたコンテンツで運営されているところが圧倒的に多い。まだまだメールマガジンやホームページの運営など、情報発信活動にエネリギーをかけられる、予算や人財をもつ図書館は限られている、というべきか。そもそも情報発信を通じて生活やビジネスを支援するというような政策的な位置づけが図書館にはされていない、というべきか。

 そんな中で、今回は「デジタル岡山大百科」で注目される「岡山県立図書館」。洗練されたデザインとコンテンツ、ダイナミックな活動ぶりが評判の「奈良県立図書情報館」。歴史的な資料のデジタル化と公開に挑戦している「函館市中央図書館」と、ここ4、5年前に地域情報拠点として開館した3館と、ここ数年、地域活性化の拠点として台頭してきた「山口県立山口図書館」と「青森県立図書館」の2館を取り上げた。それぞれの県や都市を代表する基幹図書館だけに先鋭的な取り組みや特色あるコンテンツが注目される。また、今回、山口県、青森県の両県立図書館のホームページが平成21年度(4月〜3月)のバナー広告を募集していることが印象的。広告の効果があるかないか。妥当な広告費はどのくらいかは、アクセス数が基準となる。このため両図書館とも月間平均アクセス数を公開している。この公開されている数字をもとに自館のホームページのアクせス状況を評価するのも良いのでは。図書館がイノベーションするためには、自ら収入の道を切り拓かなければならない時代でもあることを改めて感じた次第。




【岡山県立図書館】
http://www.libnet.pref.okayama.jp/
 2004年9月25日オープンの岡山県立図書館のサイト。ここの目玉は「デジタル岡山大百科」と銘打った岡山県立図書館電子図書館システム。登録されているメディアの種類は「ビデオ」「音声」「デジタル絵本」「Web」「レファレンス」「文字」など6種類。「Web」には県立図書館の郷土情報募集事業で新谷松雄さんが制作した「岡山県の鬼瓦写真の目録」(県内12市62寺社の鬼瓦を収録)や竜之口電子町内会編集委員会が制作した「絵馬 天神八王子月尾宮奉納絵馬 ホームページ」など、図書館のメディア工房を利用して制作した県民参加型のコンテンツが目立つ。「レファレンス」では県立図書館のレファレンスデータベースから「岡山県内の淡水魚の漁獲高について」「俗説“耳の遠い人は長生きする”の起源」など百科事典に相応しいものが再利用されている。また「デジタル絵本」は岡山県立大学メディアコミュニケーション支援センター等の協力を得てメディア工房で開催している「デジタル絵本制作講座」から生まれた作品や修了生たちの作品が並ぶ。「ビデオ」には情報政策課など県や関連機関が提供しているコンテンツや郷土情報募集事業で個人が制作したコンテンツなど多彩で、耳の遠い人や聴覚障害者の理解を助ける字幕付き映像が目立つ。これには岡山要約筆記クラブが協力している。デジタル岡山大百科は県民参加型郷土情報の発信の場であり、県立図書館はそのための「知識・技能」や「施設・設備」の提供を通じて県民の活動をする機能を果たしている。

【奈良県立図書情報館】
http://www.library.pref.nara.jp/index.html
 2005年11月のオープン以前よりWebによる新館情報の発信が注目されていた奈良県立図書情報館のサイト。数ある公共図書館のHPの中でもFlashを多様した洗練されたデザインとシンプルなコンテンツ構成が際立つ。メインメニューの「所蔵検索」には「蔵書検索(所蔵資料検索)」「公文書・古文書・絵図検索」「県内公共図書館蔵書横断検索」「奈良産業大学図書館蔵書検索」「リサーチエンジンon奈良」と5種類の検索メニューが用意され、「所蔵資料」には「オンラインデータベース・電子資料一覧」「国土地理院地形図所蔵一覧」「新聞等所蔵一覧」「雑誌50音リスト」「視聴覚資料リスト」「奈良県地方新聞所在一覧」「ふるさとデジタル化書籍一覧」「絵図展示ギャラリー」「戦争体験文庫」の9種類に案内される。また、サブメニュー「利用方法いろいろ」には「B-SIDE (ビジネス・行政支援サービス)があり、「資料・情報リスト」「データベース紹介」「お仕事便利ナビ」「調査相談」などにアクセスできる。そのほか、20年度は奈良の酒食文化をテーマに隔月で開催してきた「千田稔館長公開講座 図書館劇場」や2月28日(土)に平城遷都1300年記念事業・奈良県立図書情報館開館3周年記念事業として、図書情報館を一日だけの体験型演劇テーマパーク化して行う、知られざる奈良の歴史を演劇化したイベント「劇的☆めくるめく図書館−ならノれきしデたわむれロ」開催など、従来の図書館の概念を超えたエネルギッシュな活動が注目される。

【函館市中央図書館】
http://www.lib-hkd.jp/
 2005年11月27日オープンの函館市中央図書館のサイト。江戸時代の交易拠点、日米修好条約による国際貿易港と外国人居留地の設置など、幕末から明治・大正・昭和にかけて北の政治・経済・文化の中心地として栄えた函館には、古地図、絵葉書、ポスターなどの貴重資料が保存されている。旧市立函館図書館時代の平成15年度からデジタルアーカイブ事業に取り組み、これら貴重資料の整理、デジタル化、Web公開が徐々に進められてきた。「デジタル資料館」は公立はこだて未来大学の協力により高精細画像で公開している「函館の古地図」(195件)、「函館の絵葉書」(2233件)、簡易データベース公開している「はこだてポスターコレクション」(約2500点)、函館市史デジタル版、情報誌「ステップアップ」 に連載された「函館ゆかりの人物伝」のデジタル化した「函館人物史」などで構成。最近、これに古写真公開の試験運用として「函館の古写真」が加わった。これは北海道の写真黎明期に活躍した田本研造(別名、音無榕山:1832年〜1912年)の手による「田本アルバム」に収められている貴重な記録。田本研造は開拓使の依頼により道内各地に赴き、各地を撮影、当時の風景や習俗を伝える写真を多数残し、その写真は北海道のみならず日本写真史上貴重なものとして位置付けられている。画像の拡大、視点の移動が可能でインターネットで居ながらにして明治初期の風景や建造物が楽しめる。今後の活動にさらなる期待が高まる。

【山口県立山口図書館】
http://library.pref.yamaguchi.lg.jp/
 山口県立山口図書館のサイト。「図書館からのお知らせ」「館内展示やイベントのお知らせ」「ホームページ更新のお知らせ」「子ども読書支援センターからのお知らせ」と、お知らせ4本立て中心のページ構成。上から下へざっと流してみると、「ハローワーク山口の情報誌を配布しています」「離職された方への再就職支援・生活支援等の相談窓口案内コーナーを正面玄関側に設置しました」「ビジネス支援ビデオライブラリーの貸出サービスを行っています」(以上、図書館からのお知らせ)。「会社の悩み&チャレンジ 経営相談会 in 図書館」を開催します!」「発明&特許の「土曜相談会 in 図書館」を開催します!」「特許・商標に関する無料相談会を定期開催!」(以上、館内展示やイベントのお知らせ)。「まちなかライブラリー in 商店街」報告のページを公開しました」「ビジネス情報シリーズNo.11「ビジネス雑誌の歩き方」を更新しました」(以上、ホームページ更新のお知らせ)など、産業・ビジネス・仕事に関する専門雑誌、調査レポート、映像資料などの情報提供やイベント開催が盛んなことがうかがわれる。「絵本ってすごい、おもしろい! ドキドキワークショップ」「高等学校図書館支援に関するアンケート調査集計結果について」「新刊児童書出前研究会」「マイ・ベスト・ブック この本、おすすめ!」(以上、子ども読書支援センターからのお知らせ)も充実しており、「ビジネス支援」と「こども支援」が特長となっている。「松下幸之助に学ぶ成功のための経営塾」「危機克服への道 〜松下幸之助に学ぶ指導者の条件〜」など、(財)やまぐち産業振興財団から寄託されたビジネス支援ビデオライブラリー(約500本)も充実している。

【青森県立図書館】
http://www.plib.net.pref.aomori.jp/top/index.html
 1928年4月オープンし、今年80周年を迎える青森県立図書館のサイト。トピックスを目立たせたデザインで、「当館ホームページ広告掲載事業者募集 」「ご意見・ご要望への対応」「青森県立図書館自己評価公開」「新型インフルエンザ」に関するWeb資料紹介」などがまず目に飛び込んできた。最近、公共施設のホームページに企業のバナー広告を掲載する動きが増えているが、青森県でも"民間事業者等の事業活動を促進し、地域経済の活性化を図るとともに、新たな財源の確保を図るため"としてトップページの月間平均アクセス数:約15,400件を明示して、広告掲載事業者を募集している。また、常時、図書館利用者から意見・要望を受付ており、寄せられた意見要望の内容と対応方を毎月まとめてホームページに公開している。図書館の自己評価について、一般的には利用者の満足度調査が多いのだが、ここでは非利用者へのアンケート調査も実施して結果が公開されている点が興味深い。社会的なテーマである「新型インフルエンザ」についても、「新型インフルエンザ対策ガイドライン」(青森県教育委員会)、「インフルエンザの予防について」(青森県庁ホームページ)などにリンクされていて、県内のインフルエンザ発生状況、警報レベル状況などの情報にたどり着く。また、メニューボタン「産業支援」から飛ぶ「お役にたちます県立図書館 産業支援情報案内のコーナー」は、ネット上の資料を案内する「情報検索案内」とキーワード検索等で所蔵資料を案内する「館内資料案内」があり、仕事を支援する情報源等の玄関となっている。

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