大学生涯学習系センターWebサイトの動向−1
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 地方自治体教育委員会の生涯学習課が地域連携課や家庭・地域課などに名称が変わる例がでているが、改めて大学の生涯学習センター系のサイトを見てみると地方の国立大学を中心に「地域連携センター」というネーミングが目立つようになっている。これは数年前より、国立大学の独立法人化に伴い、地方大学が大学そのもののミッションや機能の見直しと組織の再編成を検討し、改革を推し進めた結果と見られる。そこには地域の人材育成、地域の課題解決、地域活性化、地域の自立に向けて大学が総力を結集しようとしている姿が見受けられる。

 地方自治体の生涯学習推進施策も政策見直しによる事業の縮小、予算削減、人員削減などが進んでいるが、地方大学は文字通り大学の生き残りと生涯学習のリニューアルが密接にからまりながら、かつ地域と一緒になって、再生への道のりを築こうとしているように思う。これも社会はそれだけ厳しく難しくなっていることの証しであり、自己判断・自己責任時代の市民を支援する社会インフラの再編ともいえる。今回はそんなサイトのなかから「熊本大学 社会連携 地域連携」「高知大学国際・地域連携センター」「宮崎大学教育研究・地域連携センター」「富山大学 地域連携推進機構」「岩手大学地域連携推進センター」の生涯学習部門の動向について紹介することとした。




【熊本大学 社会連携 地域連携 生涯学習】
http://www.kumamoto-u.ac.jp/syakairenkei/
 熊本大学は平成19年4月、地域社会とのインターフェイス機能を果たしてきた政策創造研究センターと生涯学習教育研究センターを統合し、その取り組みをより強化するために政策創造研究教育センターを新たにスタートさせている。この政策創造研究教育センターは熊本大学の社会連携活動及び地域連携活動の傘下に位置づけられており、熊本大学で行われている研究・教育の成果を総動員することで、地域課題を解決するための政策研究を行い、その成果を提言するとともに、課題を解決するための技術開発や技術提供を行うこととされている。対象領域としては自治体経営や地域政策の検討、地域の活性化、防災、都市計画、公共交通、健康福祉政策、環境保全、産業振興など、幅広い分野に及ぶ。また、これからの地域社会を担う人材育成に向けて、学内及び学外の関係機関と連携し、大学が持っている各分野の教育研究成果を活かした生涯学習を積極的に推進することとしている。平成20年度も公開講座、授業開放、知のフロンティア講座等を実施しており、公開講座では「教師が使えるカウンセリング講座」「リーダーシップ・トレーニング(アドバンス」「先生のための食育講座」「看護識者のためのリフレッシュ講座」「健康で幸せなおもてなしを考えよう」「くらしの中の生命科学」「自治体経営の理念と手法」「陶芸教室」「ハーンと漱石」「ワーグナー芸術への招待」「陸上競技教室〜速く走る秘密〜」「映画芸術を楽しく味わう」「現代ドイツへのいざない」などがラインナップされている。

【高知大学 国際・地域連携センター 生涯学習部門】
http://www.kochi-u.ac.jp/~wwwlife/index.html
 高知大学の生涯学習部門の国際・地域連携センターは、「敬地愛人(地域を敬い、人を愛する)−地域発展のために−」をミッションに、平成17年7月から活動をスタート。生涯学習部門も地域との連携をますます加速させている。地域の独自性や地域の活性化が求められる現在、「現場」では「人材育成(人づくり)」が緊急の課題となっているため、生涯学習には、まちづくり、産業振興、教育、福祉など、地域のすべての領域にかかわることや、その担い手となる人材の育成が強く求められている。センターの役割についてホームページでは(1)地域社会における高等教育の享受のための機会の拡大と生涯学習に資する場や学術情報の提供を行うとともに、地域社会の文化的交流のための取組を推進する。(2)教育研究、共同研究、受託研究及び生涯学習研究を通した教育研究成果を地域社会に還元し、地域の活性化を支援する。(3)高知大学における知的財産の合理的な集積、管理及び運用を行うことにより、研究意欲の向上と社会貢献に寄与する。(4)教育研究等の国際的な連携及び国際的な大学間交流を推進し、地域の国際化にも寄与する・・・とある。高知大学ラジオ公開講座のプログラムをみると、医学部、理学部、教育学部、農学部などから多様なプログラムが提供されている。過去のコンテンツはデジタルアーカイブされており、2005年7月〜12月の第1期以降、約150タイトルがポッドキャストで聞くことができる。このほか高知県内の市町村教育委員会と提携した出前公開講座や秋の公開講座など活発な活動を展開している。

【宮崎大学 教育研究・地域連携センター】
http://www.miyazaki-u.ac.jp/~lifelong/
 平成19年4月、それまでの生涯学習教育研究センターと大学教育研究企画センターが統合し、教育研究・地域連携センターが発足。共通教育、専門教育から大学院教育までの大学教育の在り方、大学が果たす生涯学習支援の方策、学社融合に関わる研究を中心に、教育方法、教育環境、入試方法等を改善すること、県民を対象とした大学公開講座の企画・運営、市町村の職員研修、高等教育コンソーシアム宮崎における地域高等教育機関との連携等を通じて大学と地域社会の交流を図ることなどを目標に掲げている。平成20年度の公開講座を見ると「源氏物語 〜初音巻を読む〜」「上手な話し方講座−アナウンサーのテクニックに学ぶ−」「宮崎大学医学部脳神経外科学市民公開講座−Do you 脳 ?−脳と脊髄の病気のことをご存じですか?」「みやざき夏期大学」「こころの健康-知っておきたいこころの問題と処方箋-」「農場を利用した楽しい野菜栽培、あなたが作る美味しい野菜」「シニアライフプランセミナー」「木花フィールド公開講座:エンジョイ・ライフ!果樹・花木との上手なつきあいかた」「『耳の日』市民講座 耳をたいせつに」などが並ぶ。シニアライフプランセミナーは、主として50代以上を対象に、ライフプランづくり、わがまちの台所事情、快適な住まいづくり、トラブル防止法、マネープラン、年金・保険、心と体の健康などについて学習する機会を提供するとともに、高齢期を賢く、健康に、かつ豊かに過ごすための知識の習得と学習のきっかけづくり、住みよい高齢社会づくりについて考える機会としている。

【富山大学 地域連携推進機構・生涯学習情報Webサイト】
http://www.life.u-toyama.ac.jp/
 富山大学では年間70以上の公開講座を開講し、年間1000科目以上の正規学生向け授業を公開しており、本Webサイトは県民・市民に開かれた窓としてサイト機能、コンテンツとも充実している。公開講座(五福キャンパス、高岡(芸術文化系)キャンパス、杉谷(医薬系)キャンパス:各講座8名から25名程度)、サテライト講座(富山駅前CiCビル3F学習室:各講座50名程度)、公開授業(Openclass 各授業科目2名〜20名程度)、講演講座データベース、生涯学習e-News(メールマガジン)、生涯学習の窓(機関誌 PDF)などのメニューがあり、なかでも富山大学講演講座データベースは、県内で学習講座を企画する人には便利。任意の学部を選択して「検索する」ボタンをクリックすると講演・講座等のタイトルが表示され、タイトルをクリックすると講師担当者名、学習対象者、内容コメント・・が表示される。ちなみに「工学部」57件、「人文学部」52件、「経済学部」43件、「理学部」40件、「人間発達学部」38件、「研究所・センター」35件、「医学部」26件、「芸術文化部」25件・・が登録されていた。また、公開講座やオープン・クラスの受講者同士の交流の場、交流の機会として富山大学地域連携推進機構・生涯学習部門1F会議室に「生涯学習サロン」を開設(毎週水曜日の13時から15時)しており、自由に集まり、語り合う場として開放している。

【岩手大学地域連携推進センター 生涯学習・知的資産活用部門】
http://www.ccrd.iwate-u.ac.jp/
 地域連携推進センターは融合研究・教育プロジェクトを担当する「企画管理部門」、産学官連携活動、競争的外部研究資金等を担当する「リエゾン部門」、知的財産創出・管理・活用、インキュベート支援等を担当する「知的財産移転部門」、裁判員制度の普及・広報を行う「地域司法部門」、分子構造解析室、電子顕微鏡室、機能計測室などの「機器活用部門」、生涯学習に関する研究を進めるとともに大学が有する教育機能を地域の生涯学習活動に提供する橋渡しの役割を果たす「生涯学習・知的資産活用部門」で構成されている。この生涯学習・知的資産活用部門では、県内の地方自治体、社会教育・生涯学習関係団体、NPO、グループなどの生涯学習活動を支援する目的で、各種企画・立案等の相談を受け付けており、分野別(地域づくり、スポーツ/健康/食品、環境/森林/木材、生物/地学、物理/化学、電気/機械、情報科学/数学、経済/社会/政治/法律、歴史、文学/語学、哲学/心理、教育、福祉、書道/音楽/美術)、学部別(人文社会科学部、教育学部、工学部、農学部、その他)で講師名・専門領域と講座テーマ例、条件・対象等を整理した一覧表を公開している。公開講座では、教育関係者、市民一般、小学生、中学生、高校生、小学生と保護者、学校教員などを対象に多様なプログラムを提供している。

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