大学のオープンコースウェアサイト探訪2
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 先日放送されたBS特集 未来への提言「思想家 ノーム・チョムスキー 〜真の民主主義を育てる〜」(8/30放送、9/7再放送)を見て感動された方も多いのでは。この番組には2人の巨人が登場した。もちろん一人は『チョムスキー、21世紀の帝国アメリカを語る――イラク戦争とアメリカの目指す世界新秩序』(明石書店, 2004年)、『メディア・コントロール――正義なき民主主義と国際社会』(集英社[集英社新書], 2003年)等の著書のある言語学者であり思想家でもあるMIT教授のチョムスキー氏。そしてもう一人はインタビュー役としても登場した慶應義塾大学DMC教授の宮川繁氏。

 この宮川先生こそMITの授業をインターネットで配信する「オープンコースウェア構想」を推進した中心人物。日本のOCWの活動もここが原点といわれる。OCW構想のベースにはMITの教育に対する理念、とくに幼児教育(日本の小学校教育)の時点から与えられた課題を覚えて試験で点を取るだけの教育では、知識が身につかない。自分で問題を発見してそれに取り組むことを通じて得る知識でないと喜びを感じないし、身につかない。子どもの頃から生涯役に立つ「学ぶ力」を与えることこそが大切である”ということがあり、学ぶ力を育てるには質の高い授業を行い、その資料を世界にオープンにすること、そうすることで世界各地で吹き荒れている報復の連鎖を抑止する民主主義を育てることに繋げるのだという。大学OCWの活動に期待が膨らむ。




【TOKYO TECH OCW(東京工業大学)】
http://www.ocw.titech.ac.jp/
 TOKYO TECH OCWは東京工業大学が、すべての講義資料を全世界に向けて無償で公開し、最高水準の理工系教育を全世界の共有財産とすべく提供しているプラットフォーム。2008年9月13日現在、理学部 12、工学部 159、生命理工学部 5、学部全学科目 75 、大学院理工学研究科 44、大学院生命理工学研究科 3、大学院総合理工学研究科 57、大学院情報理工学研究科 8、大学院社会理工学研究科 17、大学院イノベーションマネジメント研究科 5、合計334の講義ノートを公開中。公開内容は各講座共通で、概要、シラバス、講義ノートの3種。また、各講義とも「ユーザーアンケート」(とても参考になった、参考になった、やや参考になった、どちらでもない、参考にならなかった)、「アップデートお知らせメールへの登録」、 「お気に入り講座リストに追加」機能がある。これらの機能により利用データを収集することにより、公開講義ごとに、アクセス数に応じて星の数(最高が★★★★★)でアクセス指標を表示したり、「アクセスランキング」を公開している。因みに9月時点のアクセスランキングトップ5は、1位「応力とひずみの基礎」(金属工学科 H18年度後期)、2位「位相幾何学」(数学科 20年度前)、3位「信号処理特論」(集積システム専攻 H20年度前期)、4位「電磁波」(電気電子工学科 H16年度後期)、5位「電磁波特論」(電気電子工学専攻 H20年度前期 )。

【大阪大学 OpenCourseWare】
http://ocw.osaka-u.ac.jp/index.php?lang=_ja
 大阪大学のOCWは、コースホーム(スタッフ、授業時間・回数、レベル)、シラバス、カレンダー、講義ノートで構成されている。現在公開されている講義ノート(講義資料やプレゼンテーションのパワーポイント)は、学部講義が「生物情報工学(マクロ生物学)」「バイオインフォマティクス」「 数値計算法演習/バイオ情報解析演習」「量子力学A」「量子力学B」「フランス語初級I」「現代哲学講義-オルターグローバリゼーションの思想」「哲学史講義-フランス近代哲学史概説」「世界は今-サンフランシスコから」「西洋美術史」の10講義。大学院講義は「Fluid-Solid Multiphase Flow」「アナログ集積回路設計」「ディジタル集積回路設計」「高周波集積回路設計」「分子変換化学(有機合成化学特論)」「バイオテクノロジー・ファンダメンタルズ」「データマイニング工学」「アフガニスタンからの遠隔講義」「代謝情報工学」「システムインタフェース設計論」「情報技術と倫理」「兵庫県立大学/大阪大学・タイ王国タマサート大学SIIT遠隔教育」「計算数学基礎I」「商法1」「商法4」「会社法基礎」「言語情報科学論」「理論言語学研究A」「臨床コミュニケーション入門」「現場力とコミュニケーション」の20講義。その他、大学院講義の留学生向け特別プログラムや大阪大学在任時代(1933年〜1938年)に残した写真や書などの「湯川秀樹博士関連資料」が公開されている。

【関西大学 教えと学びのショーケース】
http://www.sc.kansai-u.ac.jp/
 関西大学では、教える側の視点から教育実践の知識と経験の公開を目的として、教え方の要約表と教育実践事例集を紹介する「教えのショーケース」と学ぶ側の視点で個別の科目で使われた学習コンテンツ(教材や課題など)を授業回数ごとに整理して紹介する「学びのショーケース」の2つの視点から公開している。「学びのショーケース」の授業実施資料一覧 はMITのOCWと同様「授業資料」「URL」「選択式テス」「 記述式テスト」「アンケート」「レポート」「記号入力式テスト」などで構成されており、ICTを活用した教育の過程で授業支援型e-LearningシステムCEASとインフォメーションシステム上に蓄積されたコンテンツを変換したものとのこと。 また、2つのショーケースに紹介されているコンテンツに相互関連がある場合、科目単位で相互にリンクが張られている。2008年9月現在で 法学部5講義、文学部26講義、経済学部13講義、商学部2講義、社会学部5講義、総合情報学部9講義、環境都市工学部1講義、工学部21講義、大学院1講義、合計83講義が公開されている。また「アンケート」項目をみると、「パワーポイントを使用した授業を行なっていますが、いかがですか?」「CEASを利用したテストを行なっていますが、CEASの使い勝手はいかがですか?」「CEASにアクセスしてテストを受けるのは、どのくらい負担になりますか?」などといった学習コンテンツや教育方法についての設問が設けられている。

【京都精華大学オープンコースウェア】
http://sjocw.kyoto-seika.ac.jp/
 人文学部、芸術学部、デザイン学部、マンガ学部の4学部がある京都精華大学では、専門基礎科目の「社会メディア論 I(2003年)」「@環境と社会(2004年・前期)」「環境と社会(2003年・前期)」「環境社会学1B(2003年・前期)」「環境ジャーナリズム(2002年・前期)」「環境ジャーナリズム(2001年・前期)」「文化表現論 II(2005年)」「文化表現論(2003年)」「表現基礎1」「工芸基礎1」「工芸基礎2」「自由制作1」「自由制作3」「マンガ制作実務演習(2008年)」「脚本概論1(2008年)」「アニメーション原論1(2007年)」。共通科目の「芸術学1(2007年)」「芸術学2(2007年)」、ワークショップ科目の「農的くらし I(2007年)」、基礎教育科目の「生物学 I(2007年)」といった授業資料が公開されている。講義風景や活動記録ビデオについては、文化表現論2005「間テクスト性」の詩学、「ものの見方」というキーワー ド、芸術学2「モダン・モダニティ・モダニズ ム」「日本における「美術」の成立」「芸術/アート」とはなにか?、農的くらし:収穫1-とうもろ こし・じゃがいも、畑のくさひき、収穫 、パン作り、 表現基礎1 テキスタイル型染め(合評会)、テキスタイル型染め(色置き1 ) 蝋けつ染め(水洗い)など100件以上がYouTubeに登録することで公開されている。

【女子栄養大学オープンコースウェア】
http://ocw.eiyo.ac.jp/
 私立の女子大のトップを切ってJOCWに加盟している女子栄養大学では、実践栄養学科の「実践栄養学(AB)」「実践栄養学(CD)」保健栄養学科・栄養科学専攻の「情報処理統計学実習(F)」「情報処理学実習」、食文化栄養学科の「栄養生理学」の授業資料が公開されている。実践栄養学は学長自ら14回分のレジュメとして、1.栄養学の実践とは、2.食品のエネルギーと四群点数法の基礎、3.自分の食事を見直そう、4.バランスのよい食事とは、5.食品の栄養成分について、6.適切な栄養量とは、7.栄養摂取の現状、8.食品群とその栄養的特徴と疾病との関連1、9.食品群とその栄養的特徴と疾病との関連2、10.食品群とその栄養的特徴と疾病との関連3、11.食品群とその栄養的特徴と疾病との関連4、12.食品群とその栄養的特徴と疾病との関連5、13.四群点数法の臨床的応用、14.まとめ・・・を公開している。また、食文化栄養学科「栄養生理学」では、1.予備試験 序論 栄養-内的環境- 人体構成、2.食事摂取基準と食物の三機能、3.呼吸-血液-循環と栄養、4.消化器系と栄養、5.泌尿生殖系と栄養、6.内分泌系-糖尿病と栄養、7.運動系の栄養、8.脳と神経系、9.悪性腫瘍と栄養、10.炎症、免疫、アレルギーの栄養、11.遺伝子と栄養、12.ストレスと外科の栄養、13.時間栄養学、14.環境と栄養・・・のカラフルなパワーポイントが公開されている。

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