大学のオープンコースウェアサイト探訪1
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 OCW(オープンコースウェア)とは、大学等で正規に提供された講義とその関連情報のインターネット上での無償公開活動をいうが「正規に提供された講義」以外に公開講座やその他の特別講義などの情報を公開することも含まれており、「知の集積拠点」である大学等がその蓄積された知の典型的な体系化された情報である「講義」の公開を通じて一層の社会貢献を目指していこうということを基本的な狙いとした取り組みである。

 OCWとして提供されている情報 は原則として「非営利の教育目的」については、使用、コピー、配布、翻訳および変更が自由に認められており、知の循環型社会の情報基盤の発展・充実の先頭を走るプロジェクトだ。現在、JOCW(日本オープンコースウェア・コンソーシアム)には大阪大学、関西大学、九州大学、京都大学、京都精華大学、慶應義塾大学、女子栄養大学、筑波大学、東京工業大学、東京大学、同志社大学、名古屋大学、北海道大学、明治大学、立命館大学、立命館アジア太平洋大 学、早稲田大学、 国連大学・・・の18大学(JOCW http://www.jocw.jp/index_j.htm より引用)が正会員として加盟している。

 goodsiteでは、過去に東京大学を紹介しているが、今回はその中から慶應、京都、北海道、九州、名古屋の5大学を紹介する。なお、AVCCもオープンコースウェア活動の援助・普及の協力する准会員に加わっている。




【慶應義塾オープンコースウェア(OCW)】
http://ocw.dmc.keio.ac.jp/index.html
 JOCWの事務局も担当している慶應義塾オープンコースウェア(OCW)のサイト。コース一覧を見ると文学部、経済学部、法学部、理工学部、薬学部、国際センターがコースナビとして、コースガイド、シラバス、講義一覧、参考資料など教育情報を公開している。また、講義ノートを公開しているコースや映像配信しているコースが一括表示できたり、一覧からアイコンクリックでアクセスできるなど、多様なコンテンツが利用しやすく整理されている。2007年6月からはOCWで公開しているすべてのコンテンツをCreative Commonsライセンスで提供しているほか、2008年3月からは映像配信しているコンテンツのビデオポッドキャストも行っている。経済学部が提供している「近代日本と福沢諭吉」コースをみると「明治の実業と福沢諭吉」「福沢諭吉と慶應義塾」「近代日本法の形成と福澤諭吉(1)−福澤諭吉の法思想」「近代日本法の形成と福澤諭吉(2)−法律学校としての慶應義塾」「近代国家形成と福澤諭」「近代西欧の社会哲学と福澤諭吉」「地縁・家・家族と福澤諭吉(1)−福沢諭吉と中津士族社会」「地縁・家・家族と福澤諭吉(2)−福沢諭吉の男女論・家族論」・・・の8回の講義ノート、参考文献、試験問題が閲覧できる。映像配信コンテンツも「日本経済史」「社会思想史」や講演会シリーズの「学問のすすめ21」など多数公開されている。

【京都大学オープンコースウェア(OCW)】
http://ocw.kyoto-u.ac.jp/jp/index.htm
 京都大学OCWのアクセスできる授業リストの講義一覧を見ると総合人間学部、文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部、医学部、薬学部、農学部がシラバス、授業スケジュール、講義ノート、参考資料などを公開している。また、特別公開資料として日本で最初にノーベル賞を受賞された湯川秀樹先生のオープンコースウェアと近代日本最初の独創的哲学:京都学派を築いた西田幾多郎先生のオープンコースウェアが公開されている。前者は「湯川先生のノーベル賞論文の手書き原稿と印刷版」「朝永先生から湯川先生に宛てられた自筆の手紙」「九後太一 前京都大学基礎物理学研究所所長による解説」とビデオ「ー素粒子の世界を拓くー湯川理論から朝永くりこみ理論、そして素粒子の標準理論へ」(講演者:九後太一教授)が公開されており、後者では『岩波新書「日本文化の問題」(手書き原稿)』(提供:京都大学文学部図書館)、「西田幾多郎先生の書・断章ノート・書簡」(提供:石川県西田幾多郎記念哲学館)、『藤田 正勝 教授(文学研究科)による解説 西田幾多郎の思索「日本文化の問題」をめぐって』が公開されている。映像公開されている「京都大学オープンコースウェア総長懇談会」「永遠のフロンティア人間を見つめた情報学」(情報学者 長尾 真)、全学共通科目の「メディアアート」(土佐尚子教授)などをみると動画公開サイトYouTubeを活用して動画配信するなど工夫がうかがわれる。

【北海道大学オープンコースウェア(OCW)】
http://ocw.hokudai.ac.jp/index.php?lang=ja
 北海道大学では全学教育、学部専門教育、大学院教育、特別講義セミナーというカテゴリーごとに教育コース一覧があり、シラバス、講義スケジュール、講義資料(配布資料・スライド)が公開されている。また、大学文書館と共同で、大学文書館が所蔵している北大の前身・札幌農学校当時の講義ノートの一部をデジタル化し、WEB 上で公開する「知」の系譜 −札幌農学校の教育− の公開を開始した。札幌農学校初代教頭であるウィリアム・スミス・クラーク博士の講義ノート「植物生理学 (1876)」(佐藤 昌介 著)、「農学 (1877-1878) 」(ウイリアム・ペン・ブルックス 教授・新渡戸 稲造 著 )がすでに公開されており、今後、順次「数学 (1879)」(セシル・ホーバート・ピーボディー 教授・南 鷹次郎 著)、「土木工学 (1881) 」(セシル・ホーバート・ピーボディー 教授・広井 勇 著) 、「植物学」(デーヴィッド・ピアス・ペンハロー 教授=推定・宮部 金吾 著)、「測量学」(セシル・ホーバート・ピーボディー教授・伊吹 鎗造 著)といった我が国の高等教育の源泉を知る上で貴重な資料が公開される。講義映像としては観光学高等研究センターの講座「映像観光立国の時代における観光学」(1. いまなぜ観光立国か 2. 観光立国の国際的背景 3.観光立国の国内的背景 4.観光創造の必要性 5.新しい観光学の必要性/講師:観光学高等研究センター長 石森 秀三)。環境科学院国際南極大学プログラムのサロマ実習(2007) スイス実習(2007) などが公開されている。

【九州大学オープンコースウェア(OCW)】
http://ocw.kyushu-u.ac.jp/
 九州大学では全学教育、大学院共通教育、人間環境学府、理学府・理学部、医学系学府・医学部、工学府・工学部、芸術工学府・芸術工学部、システム情報科学府などの授業で、シラバス、スケジュール、講義ノート、参考資料、レポートおよび試験などの情報が公開されている。コースリストをみると「九大生よ、リーダーになろう!(全学教育「リーダーシップ論−起業家精神の勧め」)として梶山 千里総長と松尾カリフォルニアオフィス所長の対談、松尾正弘(元)株式会社ワーナーミュージックジャパン取締役人事本部長の講演「組織における実践的コミュニケーション」、長嶺安政サンフランシスコ日本国総領事の国際社会のリーダーシップに関する講演や生物資源環境科学府・農学部の「気象環境研究40年を振り返って」(講師:真木 太一 教授 )、人間環境学府の21世紀COEプログラム「循環型空間システムの構築」(講師:川瀬 博 教授ほか4名)、システム情報科学府の「発見科学への軌跡」(講師:有川 節夫 教授)など、講座ビデオがあるものいくつかある。また、情報基盤研究開発センターの研究用計算機システム講習会2006年度講習会ビデオ「UNIX初級-UNIX のコマンドやエディタの基本的な使用方法の解説と実習」、「UNIX中級-UNIXにおけるファイル管理,プロセス管理,シェルプログラミング等についての解説と実習」も視聴できる。

【名大の授業(名古屋大学オープンコースウェア)】
http://ocw.nagoya-u.jp/
 名古屋大学では情報メディア教育センター、高等教育研究センター、情報連携基盤センター、附属図書館の協力のもと、-インターネット上への教材の無償公開-として名古屋大学オープンコースウェア事業を推進している。教養教育院、文学部・文学研究科、教育学部・教育発達科学研究科、法学部・法学研究科、経済学部・経済学研究科、情報文化学部、理学部・理学研究科など16部門がシラバス、スケジュール、講義ノート、課題(練習問題)などの授業資料を公開している。授業そのもののビデオ公開はしていないが、各授業の担当講師による1分間授業紹介ビデオが公開されていて楽しめる。“1万人の学部学生、 6千人の大学院生、3400人の教職員、1200人余の留学生が日々活動している巨大な組織の中で、ともすれば「孤独な群衆」の一人になってしまいがちな学生に向けた授業「全学教養科目 - 未来の大学像をつくる」の講義ノートを開いてみると、「大学での学習で特に困ったこと」「名大で最もおもしろかった授業とその理由」『「学びの基本編」を改良するためのアイデア』「社会人の勉強法 (学生時代と何が変わるか)」「大学時代に伸ばしたい力」といった興味深い授業内容が並んでいる。また、名古屋大学で開催される高校生向けセミナーも「名大の授業」サイトで紹介している。

-UP-