わが国を代表する科学技術研究組織のサイトを見る
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今月のgoodsiteは、中央省庁関連組織の中から、とくに科学技術に関係する研究機関のホームページを探索し、わが国の将来を左右すると思われる研究に取り組んでいる機関を5つ紹介 することした。

 科学技術政策研究所では、研究報告書や定期刊行物のインターネットによるの情報発信や研究成果の公開が進んでいる。また、国立情報学研究所は文字通りわが国を代表する情報技術研究の専門機関かつ大学共同利用機関でもあることから、様々なソフトやアプリケーションの開発とその提供の広がりが注目される。特筆すべきは年間プログラムとして毎年実施している市民講座がなかなかの見ものとなっていることだ。筆者も一昨年は平日夕刻から開かれる市民講座でずいぶん勉強させていただいた。

 高エネルギー加速器研究機構、核融合科学研究所は、ともにわが国を代表し、国際的にも有数の核関連研究施設として注目されており、将来の日本のエネルギー政策を背負う技術として期待は大きい。また、地球温暖化が加速する中で環境研究所の活動は、ますます重要度を増している。縦割り行政の垣根を越え、あらゆる分野の専門家が一層研究成果を交流し、相互啓発しながら知の蓄積と発信を拡充してほしい。




【科学技術政策研究所(NISTEP)】
http://www.nistep.go.jp/
 国の科学技術政策立案プロセスの一翼を担うために設置された国家行政組織法に基づく文部科学省直轄の国立試験研究機関、科学技術政策研究所(NISTEP)のサイト。ミッションは(1)将来新たに発生する政策課題を予見して自発的かつ掘り下げた調査研究を行うこと。(2)行政部局からの要請を踏まえた機動的な調査研究を行うこと。(3)科学技術政策研究分野における中核機関として、知の蓄積・拡大に資すべく、他の研究機関や研究者の研究基盤となる各種データを提供する役割を果たすこと。調査研究としては、科学技術システム、イノベーション、将来発展する分野・領域の探索、科学技術と社会の包括的な関係、第3期科学技術基本計画のフォローアップ、科学技術政策の成果等の評価・・・等が挙げられている。本サイトではこれら調査研究のレポート「NISTEP Report」「POLICY STUDY」「調査資料「DISCUSSION PAPER」「科学技術動向・月報」や定期刊行物の「政策研ニュース」のバックナンバーが読め、トピックスから掘り下げた調査分析まで、わが国の科学技術の動向や課題を知るうえで役立つ。また、2005 年より、科学技術への顕著な貢献者を「ナイス ステップな研究者」として選定しており、研究部門、プロジェクト部門、地域・産学連携・イノベーション部門、人材育成部門、成果普及・理解増進部門から毎年10数名が選ばれている。

【国立情報学研究所(NII)】
http://www.nii.ac.jp/
 情報学という新しい研究分野での「未来価値創成」を目指すわが国唯一の学術総合研究所として、ネットワーク、ソフトウェア、コンテンツなどの情報関連分野の新しい理論・方法論から応用展開までの研究開発を総合的に推進している国立情報学研究所のサイト。平成20年度市民講座「未来へつながる情報学」(全8回/参加費無料)は、第1回「インターネットで画像や映像の権利を保護するための技術とは? 画像情報と電子透かし」(6月5日)、第2回「ロボットが世界を見て理解するために必要となる技術とは? 画像情報とマシンビジョン」(7月3日)、第3回「年金記録問題などに見られる情報管理の重要性とは? データ社会とアーカイブ」(8月25日)、第4回「膨大なデータから見えてくるウェブ社会の姿とは? データ社会とウェブ」(9月10日)、第5回「脳の理解に結びつく脳科学情報のデータベースとは? 脳科学と情報学」(10月7日)、第6回「未来の創薬などに結びつく化学情報の体系化とは? 化学と情報学」(11月6日)、第7回「人間の文法とコンピュータの文法とは何が違うのか? 言語情報とコンピュータ」(1月19日)、第8回「文化遺産を未来に継承するデジタル化の技術とは? 文化情報とコンピュータ」(2月18日)・・・がラインナップされており、NIIの資産である若手研究者による社会貢献事業に力が注がれている。

【高エネルギー加速器研究機構(KEK)】
http://www.kek.jp/ja/index.html
 巨大な加速器と呼ばれる装置群を使って基礎科学の研究を行っている高エネルギー加速器研究機構(KEK)のサイト。加速器とは、電子や陽子などの粒子を光の速度近くまで加速して高いエネルギーの状態を作り出す装置のこと。高いエネルギーの粒子を使った研究には大きく分けて二つがあり、一つは高いエネルギーの粒子を衝突させ、宇宙誕生時に多数存在した粒子を発生させて反応を調べる研究や、ニュートリノを発生させ、その振る舞いを調べる研究など。これらは物質の根源や宇宙誕生時の物質の起源にせまる謎を解明してくれる基礎科学研究。もう一つは高エネルギー粒子が曲がる時に放つ強力な光や、粒子の衝突反応から生まれるミュオンや中性子と呼ばれる粒子を使って、物質の極微の世界の構造を調べる研究・・・とか。この領域はたんぱく質の立体構造の研究など薬品や新素材の開発研究につながる基礎科学研究。注目されるコンテンツは実験画像など見れる「イメージライブラリ」と江崎玲於奈博士らのインタビューや講義が見れる「ビデオライブラリ・講演ビデオ集」。ビデオインタビュー「研究者にインタビュー」「素粒子原子核の研究って何?」「物質構造科学の研究って何?」などがRealPlayerで再生される。

【核融合科学研究所(NIFS)】
http://www.nifs.ac.jp/
 世界最大の大型ヘリカル装置(LHD)により未来のエネルギー核融合の実験研究に取り組んでいる核融合科学研究所(NIFS)のサイト。一般にはほとんど馴染みのない専門領域の研究だが、キッズを対象とした「何を研究」「核融合って何」をみるとプラズマ現象など少しずつ核融合の世界が掴めてくる。「ウォッチングLHD」では、なんと世界最大の大型ヘリカル装置の制御棟と本体棟内部に設置されたLIVEカメラの映像が24時間見れる。核融合施設の内部をインターネットで誰でも見れるというのも不思議ではある。ビデオライブラリーには核融合と核融合装置を解説したビデオ「星からきたエネルギー」「核融合エネルギー」「ファーストプラズマへの道」のほか、研究所の一般公開において行われた講演会のビデオ「おもしろ・わくわく・ロボットばなし!」『未来のエネルギー源「核融合」』「日本における核融合研究のフロンティア」「LHDの最新の成果と安全について」「すばる望遠鏡とこれからの宇宙像」「陶磁器のマイクロ波焼成について」・・・などがRealPlayerで再生される。調査報告書も公開されていて「大型ヘリカル装置における重水素実験計画」「大型ヘリカル装置における重水素実験の安全管理計画」を詳しく学ぶことも可能。

【独立行政法人国立環境研究所(NIES)】
http://www.nies.go.jp/
 理学・工学・農学・医学・薬学・水産学から法学・経済学にいたる多様な分野の専門家が協力して環境問題を総合的に研究している国立環境研究所(NIES)のサイト。多様なコンテンツの中から環境学習−ここが知りたい温暖化のメニューを見ると、「太陽黒点数の変化が温暖化の原因?」「二酸化炭素以外の温室効果ガス削減の効果」「エアロゾルの温暖化抑止効果」「IPCC報告書とは?」「水蒸気の温室効果」「オゾン層破壊が温暖化の原因?」「氷床コアからわかること」「気温変化予測に幅があるのは?」「森林の二酸化炭素吸収量の測定方法」「二酸化炭素の増加が温暖化をまねく証拠」「海と大気による二酸化炭素の交換」「地球全体の平均気温の求め方」「コンピュータを使った100年後の地球温暖化予測」などがQ&A形式で学習できる。また、関連する環境ポータルサイトの環境技術ライブラリーには、「レアメタルリサイクル技術の動向」「ESCO事業の動向」「小規模排水処理技術の現状」「屋上緑化・壁面緑化の普及状況と技術開発」「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)技術の現状と課題」「ビオトープの現状と創造技術」「POPs農薬の無害化処理技術」「燃料電池自動車(FCV)の開発」などの技術解説が充実している。

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