ネットで学べる大学の高度な知識や技術
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 先月、紹介したTODAI TVでは、今月はじめに新コンテンツとして東京大学公開講座「ロボット新世紀」(http://www.todai.tv/)を公開した。ロボット研究の最新状況がここで一挙に公開されたことに刺激され、今月も一般公開されていて「これは・・・」と感心した大学のeラーニングサイトを5つ紹介する。

  まずはじめは「東北大学インターネットスクール(ISTU)」。ここは興味深いコンテンツのオン・パレード。科学分野の先端的な研究成果、研究動向に関する講義が多数公開されていて圧倒される。次は「長岡技大eラーニング講座」。今回紹介するコンテンツは公開されてからだいぶ時間が経過しているが、いまでも高品質な学習コンテンツなので、あえて取り上げさせていただいた。自治医科大学のビデオ・オンデマンド・サービスについては学内用のほか、一般公開されているコンテンツも数多くあって、たいへん有意義なサイトになっている。一般の人が無料で健康や医療を学べるサイトとしては特筆されるのではないだろうか。公共図書館や生涯学習センターの利用者端末ではぜひリンクして欲しいサイトだ。千歳科学技術大学の「PC Maestro(マエストロ)」は基本ソフトの使い方をひそかに学んで、すばやくマスターしたい人にお薦めできる。画面に登場する女性インストラクターは一人だが、とても衣装持ちなのでPCスキルが身につくだけでなく映像も楽しめる。最後に紹介する「山口大学共通教育物理学実験」の実験及び実験装置のコンテンツは、技術や工学、職業訓練、技能訓練等における視聴覚教育の基本、原点のような教材になっていて大変感銘した。科学や技術に関わるこの種のコンテンツが充実することを期待したい。




【東北大学インターネットスクール(ISTU)】
http://www.istu.jp/index.html
 東北大学は明治40年(1907年)に3番目の帝国大学として創設され、平成19年(2007年)に100周年を迎えた。ISTUが一般公開している「特別講義」のメニューを見ると、平成17年から開 催している100周年記念セミナー「科学が次の100年で創り出せること」が超目玉コンテンツと思われる。特別講義一覧によれば第2回〜第7回まで、以下のような興味深い講義の動 画・音声が配信されている。第6回:テーマ「文明の危機とグローバルコミュニティの再生」(平成18年8月2日)「地球規模大災害と国際協力 〜インド洋津波から見えるもの〜」 (今村 文彦 工学研究科附属災害制御研究センター 教授)、「国境を越えるウィルス感染症 〜鳥インフルエンザと地球規模大感染の危険性〜」(押谷 仁 医学系研究科 教授)など6 講義。 第5回:テーマ「生き方、老い方、死に方を科学する」(平成18年2月10日)「人工生殖を考える --生まれてくる小さな生命の視点から--」(水野 紀子 法学研究科 教授)、 「葬送・墓・遺影 --生者と死者の新たな関係--」(鈴木 岩弓 文学研究科 教授)など4講義。第4回:テーマ「生命の質への飛躍」-先端科学と次世代医療- (平成17年12月5日) 「世界標準となった日本発のEBM --血圧測定を科学する--」(今井 潤 薬学研究科 教授)、「2型糖尿病治療への挑戦 --最先端工学で生体反応を視る--」(神崎 展 先進医工学研究 機構 助教授)など4講座。 第3回:テーマ「心・言語・脳・電子情報」 -科学はどこまでヒトに迫ったか-」(平成17年8月5日)「脳とことばの不思議な関係 --ことばで脳はよみ がえる--」(川島 隆太 東北大学未来科学技術共同研究センター 教授)など7講座。 第2回:テーマ「サイエンスの冒険と私たちのくらし」-宇宙・地球・生命と未来文明-(平成17 年4月14日)「動く植物の謎を解く」(上田 実 理学研究科 教授)など4講座。

【長岡技大eラーニング講座】
http://www.e-net.city.nagaoka.niigata.jp/gidai/index.html
 「e-ネットシティ ながおか」(http://www.e-net.city.nagaoka.niigata.jp/)の一環で長岡科学技術大学が2003年11月〜2004年4月にかけてアップしたコンテンツ。現在(2007年4 月現在)トップページからのリンクは外されているようだが、コンテンツは視聴できるので紹介しよう。基本的に科技大の先生の講義を収録しネット上に公開したもので、ラインナッ プは次のとおり。「システム思考論」(中村 和男 教授/経営・情報系)、「技術者と社会 技術者倫理入門」「産業技術政策論 安全規制とマネジメント」「経営情報学基礎」(三 上 喜貴 教授/経営・情報系)、「現代社会とデザイン」(淺井 達雄 教授/経営・情報系)、「経営工学概論」「経営のしくみ」(嶋田 英輔 教授/経営・情報系)、「健康の為 のスポーツ科学」(塩野谷 明 助教授/体育・保健センター)、「情報社会と情報倫理」「人間システム学基礎」「基礎統計学 」(植野 真臣 助教授/経営・情報系)、「情報技術 基礎T」(1.情報とコンピュータ/2.経済と情報/3.生産と情報/4.流通と情報/5.通信技術と情報/6.経営計画論)、「情報技術基礎U」(1.教育と情報/2.文化 と情報/3.医学・医療と情報/4.スポーツと情報/5.生活と情報/6.環境と情報/7.情報とセキュリティ)。なお、「e-ネットシティ ながおか」は、長岡市の行政・観光・ 文化・イベントなどのビデオ・ライブラリーがたいへん充実している楽しみなサイト。市民へのeラーニング提供に再チャレンジを期待したい。

【自治医科大学図書館 ビデオオンデマンド・サービス 一般公開の部屋】
http://lib.jichi.ac.jp/video/video-openlist.html
  自治医科大学では大学公開講座、研修医セミナー、臨床問題解決セミナー、抗菌薬 はじめの一歩、病院感染へのアプローチ、RIセンター放射線従事者向け講義・講演会、緩和ケア講 演会、医療安全対策講演会、医療人GP地域医療フォーラム2006 地域医療の現場で必要とされる人材の育成・・・など医学、医療、健康、一般教養などのコンテンツを診療や健康増 進、自己学習に提供する目的で多数配信している。 公開講座については平成17年度開催分より、18年1月から動画配信サービスを開始。現在、17年度分6講座、18年度分10講座が公開されており、講演要約も掲載されていてプリントアウトできる。健康・医療情報の積極的な情報発信として注目される。タイトルと講師は以下のとおり。 平成18年度第1回「現在の感 染症の動向 」(平井 義一)「身近な感染症と予防」(水戸 美津子)、第2回「プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病、ウシ海綿状脳症:いわゆる狂牛病)」(中村 好一)「感 染症と検査」(山田 俊幸)、第3回「抗生剤と消毒剤について」(林 俊治)「子供の感染症」(柏井 良文)、第4回「予防接種で病気を防ごう!」(五味 晴美)「慢性疾患と感染 症」(外島 正樹)、第5回「感染症の動向」(森澤 雄司)「免疫力を高めるための日常生活」(中村 美鈴)、 平成17年度第1回「自治医科大学とちぎ子ども医療センター・新しい医療の展開」(桃井真里子)「子どもの心の問題」(塩川 宏郷)、第2回「家庭における子どもの救急」(四元 茂)、第3回「家庭での手洗い、消毒」(平井 義一)、第4回「思春期の心とからだ」(塩川 宏郷)「小児の四肢の変形と骨折」(吉川 一郎)。 なお、第34回薬師祭実行委員会 講演会「援助することと充実感」も注目されるコンテンツだ。  

【PC Maestro(マエストロ)】
http://www.hello-chitose.jp/learning/maestro/
http://etlab.spub.chitose.ac.jp/pcmaestro/
 千歳科学技術大学の碓井研究室と高岡研究室の合同プロジェクトが開発し、運営している。音楽界では一般的に「巨匠」を「マエストロ」と呼ぶそうだが「PCマエストロ」とは、こ こで提供している映像とアニメーションによる演習教材統合型の教育用アプリケーションをいうとのこと。つまり巨匠のリードに従って練習しているとスキルが習得できるサイトとい うことになる。練習メニューは「Word」「Excel」「PowerPoint」「HTML」「情報モラル」「Advanced Excel」「Excel special」の7つ。各メニュー、各ステップは同大学准教授の高岡 詠子さんがトレーナーとして登場。映像講義やアニメーションによる演習当で基礎知識や操作方法を説明してくれる。これが自学自習で繰り返しできるところがこのサイトの人気の秘 密か。Wordは「起動、キーボード」「かな漢字変換」「ツールバーを使おう」「続ツールバーを使おう」「メニューバー入門」「保存しよう」「フォントマスターになろう」「メ ニューバーを極めよう」「ページ設定」「表」。Excelは「ワークシートの使い方、セルへの入力」「簡単な計算」「関数を使おう!!」「関数、表計算」「並び替え」「フィルタの機 能」「データベース処理(1)」「データベース処理(2)」「グラフを作成しよう!」「請求書を作ろう!」で構成されている。PowerPointは、6ステップで構成されているが、各 ステップで映像と演習のテーマが少し異なっている。映像ではPowerPointの使い方と資料の作り方の注意点を学習し、演習では実際の画面を使って基本的な使い方を学ぶ。HTMLのメ ニューは講義映像、課題ページ、コラム映像の3要素に整理されていて、各々10ステップで構成されている。因みに講義映像は「HTML入門」「HTML発展」「CSS入門」「CSS発展」「レ イアウト」「リンク」「画像」「箇条書き」「テーブル」「フレーム」となっている。                                                     

【山口大学共通教育物理学実験】
http://w-phys.liberal.yamaguchi-u.ac.jp/
 山口大学共通教育物理学実験のサイト。山口大学の公式サイトでも各種大型実験装置の紹介や利用に関するコンテンツが充実しているが、本サイトでは、次の13の実験について「実験 の目的」「基礎知識として事前に学習しておくこと」「実験原理の概要」「実験で用いる装置の概要」「測定原理の概要」「実験手順のの概要」「実験の注意点」の7項目が各4、5 分のWebコンテンツにまとめられている。実験A「重力加速度の測定」、実験B「ヤング率の測定」、実験C「表面張力の測定(Jollyのバネ秤による方法)」、実験D「電流による熱の 仕事当量の測定」、実験E「線膨張率の測定」、実験F「交流の周波数の測定」、実験G「導線とサーミスタの抵抗の温度依存性」、実験H「ダイオードとトランジスタの特性」、実験I 「オシロスコープによる波形観測」、実験J「電子のe/mの測定」、実験K「回析格子による光の波長の測定」、実験L「ニュートンリングの実験」、実験M「プリズムの屈折率の測 定」・・・と、言葉から想像するとなにやら難しい内容と敬遠しがちだが、映像化されて示されると不思議なことに興味が湧いてくるものだ。、また、マイクロメータ、ノギス、精密 バネばかり、読み取り望遠鏡、分光計、水平水準器、ストップウォッチ、上皿天秤、光学てこ、直流電圧計、直流電流計、デジタルマルチメータ、スライダック、ホイートストンブ リッジ、電子銃、ローレンツ力・・・といった16の実験装置の使い方等のコンテンツについても、映像ならではの、興味を引き、理解しやすい教材となっている。理科系学生や技術者 だけでなく、文科系の学生や社会人が物理や化学の楽しさを知るうえでも有効な学習コンテンツといえるのでは。

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