期待される21世紀型の教師・公務員養成塾
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 政府の教育再生会議や中央教育審議会等では、我が国の教育再生には教師の質の向上が欠かせない課 題とされ、教員免許制度の見直しを議論。今後の動向が注目されている。一方、国の教員採用制度が 改正されたことを受けて、教育特区でなくても、23区や市が直接教員採用ができることになったこと により、いくつかの自治体では、これから教師を目指す、意欲ある学生や社会人を対象に質の高い 教師の養成事業に本格的に乗り出している。

 そこで今回はこの動きにスポットを当て、杉並区師範館、よこはま教師塾、京都教師塾、NPO法人師範塾を紹介し、あわせてスーパー公務員塾についても取り上げてみた。このほか自治体の教師養成塾としては、神戸教師塾、みたか教師養成講座などもある。自治体が運営している教師塾では、京都市を除くと塾を修了すると教員採用試験を優遇され、教員に採用となり、受講料が返還される仕組みになっている。地域の教育力を高めるには、直接いい人材を全国から集める教育投資が重視した結果か。成果は10年、20年、30年先になるかもしれないが、教育こそ国や地方自治体の根幹の政索であり、今後の動向を注視したい。さて、一方の「スーパー公務員塾」だが、小泉政権の構造改革を実現していくには、公務員改革が欠かせない、という竹中平蔵氏の考えを具体化する取組みとして注目されるが、安倍政権に変わって小休止状態だが、本質的に重要なテーマなので、ぜひとも再チャレンジを期待したい。




【杉並師範館(東京都杉並区)】
http://www.shihankan.jp/
 平成18年度から杉並区が導入した「杉並師範塾」のサイト。杉並区では小学校教員免許取得予定の学 生や既に取得済みの社会人を対象に、志ある人材を全国から毎年30名程度募集し、人を教える人間力 とともに実践的指導力に重点を置いた独自のカリキュラムで1年間学んでもらい、塾生を対象に採用 選考が行う事業をスタート。1年間の修塾後は、基本的に杉並区立小学校の教員として採用される予 定。昨年公開された19年4月からの塾生募集によると、応募資格があるのは昭和38年4月2日以降に出 生した者。及び小学校教諭普通免許状(専修、一種、二種)を有する者又は平成20年4月1日まで に取 得見込みの者。受講料は年間96,000円。ただし、杉並区の教員として採用された場合は、同額が返還 される。カリキュラムは「講義(多彩な教授陣による充実した講義)」、「演習(現場経験豊富な教 官によるきめ細かな指導)」、「特別教育実習(実際に教壇に立ち、子どもと触れ合う)」、「合宿 体験活動(絆を深め、社会性を養う)」となっており、教師心得五則は以下のとおり。一. 教師は、 子どもの「学ぶ意欲」を引き出す。学ぶ意欲とは生きる意欲である。 二. 教師は、子どもの「人間 性」をはぐくむ。人間性とは人間ならではの真心である。 三. 教師は、子どもの「社会性」を養う。 社会性とは他者に対する配慮である。 四. 教師は、子どもの「規範」を確立する。規範とは決断し 断行するもとい基である。 五. 教師は、子どもの「資質の芽」を見つけ、認め、伸ばす。資質とは 全人格的人間力である。 なお、応募者は第1期215人,2期210人と狭き門になっている。

【よこはま教師塾(横浜市教育委員会)】
http://www.city.yokohama.jp/me/kyoiku/jyuku/kyoushijyuku.html
 義家弘介氏(横浜市教育委員/ヤンキー先生)が塾長を務める市教委の「よこはま教師塾」のサイト。 横浜市では平成18年度より、しなやかでかつタフな若竹のように伸びる教師、「理想」「情熱」「技」 をもつ教師、「豊かな教師(保護者、地域などと連携し、広い視野から教育に向き合う教師)」、「確 かな教師(授業実践や児童生徒理解などの指導力を発揮できる教師)」、「信頼される教師(様々な課 題を解決していくことのできる、子どもや保護者、地域から信頼される教師」)づくりを目的に「教師 塾」を設立。平成19年1月20日1期生のに入塾式が行い、活動がスタートした。昨年、小学校教員志望者 100名程度を公募したところ376名 が応募。一次の書類、論文審査、二次の面接審査の結果108名が合格 し、うち106名が入塾した。受講料は年80,000円。ただし、卒塾することが前提だが、横浜市教員志望者 は特別選考(面接)を受験でき、採用された場合には受講料は返還される。カリキュラムは、1.講義 (ハマの教育講座):実績豊かな様々な分野の講師による講義を受講し、人間力や社会性向上を図る。 2.演習(ハマのゼミナール):本市教育関係者等による教育諸課題についての演習により、教師力、 マネジメント力の向上を図る。3.実践(ハマの授業づくり):学校で児童の教育活動を支援することで、 子どもの活動場面の理解、授業力・指導力などの向上を図る。4.交流・体験(ハマの絆づくり):地域 での子どもの学習活動の場(土曜学校等)に参加し、対人対応力、地域との連携力などの向上を図る。そ の他、夏季合宿では、教師になることへの想いや「夢」を語り合う場を提供。

【京都教師塾(京都市教育委員会指導部教員養成支援室)】
http://www.edu.city.kyoto.jp/kyoinyousei/sub1.html
  京都市教育委員会が運営する京都教師塾のサイト。平成18年9月30日小・中学校の教員を目指す大学生・ 社会人などを対象に『京都教師塾』を開校。これは、大学で身につけた専門知識を基盤として、市の職員 の熱意あふれる取り組みや理念、教育の現場に直接触れることで、教員として求められる資質や指導力に 磨きをかけるもので、四つの柱で構成される。1.京都市教育講座(必修10回):校長、中堅、若手教員、 保護者、教育委員会職員が講師で登場。実践報告やパネルディスカッション、グループ討議等を行う。学 校現場の中核教員が各グループごとに講座を進行。教育に対する理念を深める。2.京都市立学校実施研 修(必修10日):期間中10日間、京都市立学校で、学校現場の教育実践を直接体験する。3.授業実践講 座(必修2回:授業力向上に向け学習指導案の作成や模擬授業等を行う。総合教育センター指導主事が担 当。4.教育実践講座:総合教育センターの講座や特色ある学校の研究発表会等、京都市の取り組みを5 講座以上選択し、教育に関する見識を広め、深める。このほか、市立学校や幼稚園で教科や部活動補助等 を行う「学生ボランティア」や京都市の教員等で構成する「便きょう会」で「心を磨くトイレ掃除」も体 験できる。ちなみに募集人員300名。応募資格は生年月日が昭和41年4月2日以降の人で、かつ、小学校、 中学校の教員を目指す、短大生・大学生・大学院生・社会人。受講料は年間10000円。京都市の場合は入塾 者、卒塾者であることをもって、京都市立学校教員採用試験の全部または一部を免除することはない、と のこと。

【師範塾(NPO法人師範塾)】
http://www.shihanjuku.com/
 特定非営利活動法人師範塾(理事長:高橋 史朗 明星大学教授)のサイト。塾長は川口雅昭氏(人間環境 大学大学教授)。平成13年4月に設立後、15年4月に法人化。東京都多摩市と福岡県福岡市に事務局があり、 福岡市を拠点に活動している。師範力のある教育者を育成することによって教育を復興することを理念に掲 げ、1.学校教育:優れた教師の育成、2.家庭教育:親の教育力の向上、3.子供たちへの人間教育、4. 教育改革提言・・の4つ事業に取り組んでいる。具体的には「師範力」のある優れた「教育者」の育成事業、 「師範力」をつけるための研修事業、教育に関するシンクタンク事業、教育に関する情報発信事業、感性を 豊かにするための、立場・世代を超えた人々との交流事業などを行う。同塾では「教育者」にとって必要な ものは「師範力」である。「師範力」とは師として範を示すことのできる人間力。豊かな人間性と、高い見 識で考え導く力のことである。そして、「教育」という営みは、日常のあらゆる場面で行われており、全て の人は「教育者」であると考えられる。教師はもとより、あらゆる人を対象に、より良質の情報や体験を効 率的に効果的に共有させることによって「師範力」のある「教育者」を育成する。そして、その結果があら ゆる教育の場で不特定多数の人間に還元されることによってさらに広く公益に寄与する・・・としている。 平成18年9月、同じコンセプトによる埼玉師範塾(http://www.saitamashihanjuku.com/)もスタート。19年 8月の合宿卒業式に向けて月1回の講座が開催されている。                                                     

【西宮スーパー公務員塾 】
http://xdl.be/skj/record.html
 平成17年9月10日〜平成18年1月29日にかけて、1日2講座、計10講座を行った西宮スーパー公務員塾のサイ ト。すでに講座は終了しているが、HP上に各回の講義要旨が掲載されていて参考になる。この活動のバ ックグランドには成17年1月末〜3月末にかけて開講された中間法人「TRIgger Lab(トリガーラボ)」(竹中 平蔵経済研究所:http://www.triggerlab.jp/)、スーパー公務員(Change Agents)養成塾実行委員会主催の 21世紀型公務員創出プロジェクト「スーパー公務員(Change Agents)養成塾」の活動がある。このプロジェク トは『これからの公務員には、自ら課題を発見し、コスト感覚を持ちつつリスクを取って「知恵」と「足」でコ ーディネートしつつ、国民が納得する政策を実現することが求められている。本講座では、そうしたアントレプ レナーシップを持った、積極的に挑戦する若い公務員を育成していく』とされており、西宮スーパー公務員塾も その理念を踏襲し、「西宮市役所は変わらなくてはいけない、これは多くの職員が感じていることです。そのた めには、ひとりひとりの職員がプロフェッショナリズムを認識することが必要です。当事者意識を持ち、「顧客」 である市民に対して向き合うべきです。そこで、改めて行政官としての哲学とビジョンを再確認する必要があり ます。共に感じるだけではなく、自ら行動して汗をかき、現場で人々と共創していく力、「共汗力」が必要です」 としている。この「共汗力」とは、危機感を共有し、誠実さ、率直さ、思いやりをもって各者と連携し、協働、 「共」創できる人材。当事者としての意識と責任感を持ち、自らリスクをとり、自ら「汗」をかくことができる 人材。精神的強さ、経験に基づくセンスとプロ意識により、国民の幸せを実現する「力」を持った人材・・とか。

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