いじめ・虐待・自殺からこどもたちを救おう
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 文科省は伊吹文明文部科学大臣あてに11月6日に届いた「いじめを原因とする自殺予告の手紙」をHPで公表するとともに、自殺予告者のこどもに対し「命というものは、ひとつしかな いものです。そして、命は自分のものだけでなく、生まれたときにお父さんとお母さんが腕の中に抱き取ってくれたものです。いろいろ言いにくいこともあると思いますが、誰かに 必ず君の気持ちを正確に伝えてください。世の中は君を放っているわけではありません」と呼び掛け。広く国民には「手紙には、名前や地域、学校名等、差出人を特定できる情報が 記載されておらず、現在具体的な対応を取ることが難しい状況となっております。もし、手紙の内容や筆跡等から差出人について分かることがございましたら、至急、学校・教育委 員会・文部科学省の方までご連絡を頂ければと考えております」と呼びかけた。

 いじめが原因とされるこども自殺、高校の単位履修問題をめぐる校長の自殺、教育現場でなぜ、こんなに自殺が多発するのか。今回紹介するライフリンク では、日本の自殺の多くは、実は「追い詰められた末の死」であり、「避けられる死」であるにも関わらず、社会的な対策が遅れているがために、いまも1日90人を超える人たちが「自殺」へと追い込まれていっている・・と警鐘を鳴らしている。年間3万人に昇る自殺者を救うために社会教育はなにができるのか、アメリカの公共図書館のように日本も「自殺をする前に図書館へ」なるポスターを作成し、掲示すべき時ではないのか・・・。




【自殺対策支援センターライフリンク】
http://www.lifelink.or.jp/hp/top.html
 2001年、NHKクローズアップ現代『お父さん死なないで〜親の自殺 遺された子どもたち〜』を制作した清水康之さんがNHKを退職し、西田正弘さん(あしなが育英会:交通遺児)、鈴木七沖さん(サンマーク出版)らと立ち上げたNPO法人 自殺対策支援センター ライフリンクのサイト。ライフリンクという名前には「自殺に追い込まれていくいのちを、 みんなでつながりながら守っていこう」「いのちを守るために、みんなで つながりあっていこう」という決意が込められているとか。定款の目的(第3条)には「この法人は、自殺予防や自死遺族ケアなどの自殺対策を行っている全国の団体や個人などに対して、活動促進のために必要な実態の調査や関連情報の提供などを行うことで、より効果的な自殺対策が行われるよう支援し、また自らも自殺対策のために情報提供や社会に対する提言を積極的に行うことで、誰しもが自殺の危機に陥ることなく平和的に暮らせる社会の実現に寄与することを目的とする。」とある。この達成に向けて事業活動も精力的に行なわれている。「ライフリンクからの提言」のコーナーには、『自殺総合対策の実現に向けて』〜自殺対策の現場から「国へ5つの提言」〜や、自殺総合対策推進モデル案(最新版)『総合対策』『地域ネット』『遺族支援』 がアップされている。また「PROJECT私たちの活動」では「地域における自殺対策のあり方」の普及啓発に全国を駆け巡っている様子等が窺える。国の自殺対策基本法成立を後押しする署名活動では2カ月足らずで101,000名を集め、6月15日の衆議院で可決、成立に漕ぎつけた。

【日本いのちの電話連盟】
http://www.find-j.jp/
 日本いのちの電話連盟(FIND:Federation of Inochi no Denwa)は日本全国にあるいのちの電話の全国組織で、日本自殺予防学会、国際自殺予防学会(IASP)と連携して活動している。活動の源流は、英国のザ・サマリタンズとオーストラリアのライフ・ラインとされ、約50年の歴史がある。自殺をはじめとする精神的危機にある人たちの隣人になりたいという願いから生れた運動。日本では1969年、東京のキリスト者有志が設立構想を抱き、2年の準備を経て1971年10月1日「いのちの電話」として発足したのがはじまり。2006年時点では、全国に49センター(7分室)が開設されており、そのうち23センターが24時間体制で運営している。その他、特定の曜日を決めて24時間運営しているところが5機関ある。「2005年度の全国受信件数統計(1月〜12月)」の「センター別:男女別」をみると、全国49加盟センターが受けた電話は男:383,462件、女330,676件、合計714,138件。そのうち自殺志向の電話は、男19,265件、女26,385 件、合計45,650件とされ、約6.4%が自殺志向者からのSOSと推察される。さらに段階別の分析データをみると「念慮」87.4%、「危険」 8.9%、「予告・通告」2.8%、「実行中」0.9%・・となっている。その他「センター別:段階別別」「問題別/年代別」(通常)「問題別/年代別」(自殺志向)「段階別/年代別:問題別」(自殺志向 段階別)等の統計データが公開されている。「こころの苦しい方々へ」のコーナーには、「こころのリンク」として関連する25サイトのリンクリストがある。

【チャイルドライン】
http://www.childline.or.jp/
   俳優の牟田 悌三さんが理事長を務めるNPO法人チャイルドライン支援センターのサイト。デザインやコンテンツを見ると、ホームページの対象は電話をかけてくるこどもたちとしていることがわかる。「チャイルドラインってなあに」では、”チャイルドラインは18才までの子どもがかける電話 どんな話でもオーケー!”とされ、”お説教ぬき、押し付けぬき、子どもたちの声にただただ耳を傾ける、それがチャイルドライン”と、ほんわか・あったか・ムード。「ひみつはまもるよ」「名前はいわなくていい」「どんなことでも、いっしょに考える」「イヤになったら、切っていい」が電話相談の4つの約束。さらに、こどもが電話をかけやすいよう「こんな電話がありました」では、「学校」「いじめ」「家族」「自分自身」「性」「おとなの世界と子ども」のカテゴリーごとに「先生に何を相談しても、何も変わらない、何も解決しない」「いじめられている子を助けたいが、うっかりかまうと今度はこっちが危ないから、知らん顔をしている」「弟がわがままだから、私はいい子にしなければと思っている」「私は明るいふりしているけど、本当はリストカットを繰り返してる。リストカットすると落ち着くのはなぜですか」「避妊について、ちゃんと教えて下さい」「お母さんが突然家からいなくなった。何がなんだかわからない。困っている」等の例があげられている。小学校低学年を意識した「ネット絵本 はいチャイルドラインです〜思い切って電話してよかった〜」の「シリーズ1 友だちできるかな」も公開。

【「命の大切さ」を実感させる教育プログラム(兵庫県教育委員会)】
http://www.hyogo-c.ed.jp/~inochi/
 兵庫県立教育研修所 心の教育総合センターがまとめた、『ひょうご「命の大切さ」を実感させる教育』のコンテンツ公開サイト。メニューは「教育プログラムモデル」「授業用指導案」「教員研修例」『「命の大切さ」を実感させる教育への提言』「リンク集」「更新資料」で構成されている。教育プログラムモデルの「実践編の構成と活用方法」では、誕生の喜びと感動、成長の支援への感謝、限りある命の尊さ、理解し合う心に支えられた命、尊い命を守るためにの5つで構成され、小学校低学年、中学年、高学年、中学校、高等学校ごとに「テーマ」「ねらい」「指導のポイント」「事前準備」「学習・体験」「事後フォロー」がシートに整理されている。 「授業用指導案の作成」は、命を守るために(小学校高学年)、自分を大切にするということ(中学校)、命の大切さを実感させること(高等学校)・・・の3つで構成され、各テーマごとに「目標分析表」「目標構造図」「学習指導案」「振り返りカード」が用意されており、これらを活用した授業が可能。また「教員研修例」は、自尊感情を高める、自己再発見、コミュニケーション能力を高める、情報モラル 指導力を高める、死と向き合う人々や犯罪被害者・遺族から学ぶ・・・の5つで構成されていて、中には研修シーンの映像資料や参照資料が用意されているものもある。120ページ にまとめられた提言や梶田叡一学長の講演『「命の大切さ」を実感させる教育のめざすもの」(2006.7.4)の映像配信も参考になる。                                                     

【こどもの権利支援センター(長野県こども支援課)】
http://www.pref.nagano.jp/kyouiku/kodomos/kenri/center.htm
 こどもの権利支援センターは長野県の公式サイト「WEBSITE信州」の中にあり、運営は教育委員会こども支援課。平成17年5月27日、いじめや体罰など主に学校等で起こる問題で苦しんでいるこどもや保護者の声を聴き、子どもの側に立って、一緒に問題の改善に取り組む。こどもと家庭、学校、地域との間に立ち、仲介・調整を行う。家庭、学校、地域間の連携を調整し、こどもの支援体制づくりをサポートすることを目的に開設され、合わせて外国籍児童・生徒に関する問題についても(財)長野県国際交流推進協会と連携して対応することとされている。トップ画面は”「いじめ」、「たいばつ」などでこまっているあなた、一人でなやまず、ゆうきを出してそうだんしてみてください。私たちがみかたになって、いっしょに考えます”と、こどもに語りかけている。電話の受付時間は月曜日〜土曜日の午前8時30分〜午後6時。公開されている平成17年度の活動報告書には、相談受付の状況、就学前児童、小学生、中学生、高校生、外国籍児童・生徒に関する相談内容、いじめ等の予防・防止に向けた活動などが紹介されて、相談内容は教師の指導上の問題、いじめ、教師の暴言、威嚇などが多いこと、これらによりこどもが傷ついたり、学校で居場所を奪われたりすることが多いことなどに警鐘を鳴らしている。

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