放送局とVODとeラーニング
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 「インターネット放送局」や「ブロードバンド放送局」という表現が目立つようになってきた。一方、「VOD」(ビデオ・オン・デマンド)や「eラーニング」という表現も多く見かけ る。そこで、今回はこの3タイプのサイトとその学習コンテンツを紹介しながら、それぞれの違いや特徴について考えてみたい。

 放送局というと番組編成というのがあって、ニュース、時事問題、ドラマ、バラエティ、音楽、映画、教養、教育・・・等々のカテゴリーから総合的に構成されていたり、特定のカテ ゴリーに絞った専門放送局があるわけだが、今回、紹介する関西学院大学と東亜大学のブロードバンド放送局は「VOD」や「eラーニング」のコンテンツと比較すると、テレビ番組、公 開番組スタイルで作られており、視聴者の興味を引き付けたり、理解を助ける工夫などに配慮されている。したがってコストももそれなりかかっていると推察される。

 一方、香川教育 大学や日本大学のVODは実際の公開講座をビデオ収録したり、講師のストレート・トークのプレゼンテーションをスタジオ収録しているだけなので、制作は比較的簡単でコストも少なく て済むと推察される。しかし、テーマや内容面に関心の高い人でないと視聴は続けにくいと考えられる。よって視聴者のターゲットは「放送局」より狭まるのでは。「eラーニング」に ついては、視聴者はコンテンツと1対1で対面し、自分のペースで学習が進捗していく構成や教材設計になっているので、学習者の目的やニーズ、レベルとコンテンツのそれがマッチ するかどうかが最大のポイントか。 


【香川大学教育VODサービス】
http://www.ymw.co.jp/kadai/kadaivod.htm
 香川大学の教育学部と教育実践総合センターが一体となって行っている教育情報のオンデマンド配信サービス。 同大学及び附属教育機関教師等による教育実践事例、教育研究事例等の発表が動画配信コンテンツとして一般公開されている。サイト上はとくに明記されていないが、内容からみて視聴対象は幼稚園、小学校、中学校、養護学校等の教師及び教育関係者と推察される。2006年1月現在、34コンテンツがあり、時間はそれぞれ10分〜18分程度。公開授業や公開発表を収録してコンテンツにしているわけではなく、スタジオ収録のストレート・トークによる事例発表や研究発表を公開しているので、発表者自身もコンテンツも全体を通じて固い感じは否めない。しかしながら「保健室における健康教育」「紅白梅図屏風の鑑賞−プレゼンテーションソフトによる美術鑑賞教材−」「今、求められているエネルギー学習」「学校支援ボランティアの活用と課題について」「「思考力」を育む少人数指導を通した理科学習」「学校の自己評価を見直そう」など、内容は多岐に渡っているので一般の人が見ても参考になる発表もある。また、教材作成の実践発表等は興味深い。

【KG Broadband Station (関西学院大学)】
http://www.kwansei.ac.jp/ksc/broadband/
   関西学院大学による科学・文化教育番組のブロードバンド放送局。生命科学や情報科学の最前線の研究内容などを実映像やCGで分かりやすく紹介している。中学2年生を視聴者の基準において「分かりやすく」制作しており、中学・高校の教育現場の副教材として役立つ内容となっている。各番組ともコンテンツは、番組サマリー、テキスト版、動画(ナローバンド/ブロードバンド)の3つで構成されいるほか、それぞれの講師の研究テーマや業績等もリンクされており、視聴者・訪問者には親切。現在(2006年1月)、2002年度に制作された『発生のしくみ〜細胞が活躍する世界〜』『原始生命の誕生』『超微細加工の世界〜ナノ領域から見る半導体の未来〜』『がんと細胞社会〜細胞間の情報交換メカニズムを探る〜』『商店街は学びのキャンパス〜暮らしある流通システム再考〜』『ITが拓く音楽の世界〜感性情報処理の最前線〜』『フィールドワークとメディア〜道具・対象・教育〜』『光で探る分子の世界〜スペクトルが語りかけるもの〜』『エンタテイメントの未来学〜進化するインターラクティブアート〜』・・・の9コンテンツが公開されている。各コンテンツは10分程度とコンパクトでかつ充実していて飽きさせない。

【VODサービス(日本大学)】
http://www.nihon-u.ac.jp/service/vod/
   日本大学が提供するVODサービス。学校案内、ニュース・イベント、公開講座等をビデオで見ることができる。イベントについてはNU-SATで(衛星通信)で生中継も行っている。公開講座のコンテンツとしては 「日本の常識は世界の非常識〜日本人の外交感覚を問う〜」「『自分』探しの『英語』学習」「日本経済再生の処方箋」「文章の読み方・創り方」「非『実用』英語のすすめーグローバル化のなかで考えるー」「地域から発信する国際交流―夢っくすプロジェクトの誕生と軌跡―」「生命倫理とは何か?−市民の立場から考える−」など大学院総合社会情報研究科の公開講座を中心にラインナップされている。各講座の時間は1時間半から2時間程度。また、日本大学総合学術情報センターが中継協力したLIVE! ECLIPSE(ライブ!エクリプス、日食中継)、LIVE! LEONIDS(ライブ!レオニズ、しし座流星群中継)等のコンテンツは圧巻。

【東亜大学ブロードバンド放送局 】
http://www.toua-u.ac.jp/touabb/index.htm
 下関市にある東亜大学では公開講座やトピックス、同大学が制作した地域映像などを情報発信している。医療工学部医療工学科(臨床工学技士コース/救急救命士コース/医療情報技師・診療情報管理士コース/社会福祉士・精神保健福祉士コース)を有する関係か、公開講座は現在(2006年1月)、心臓血管を専門領域とする外科医でもある川田 志明(慶應義塾大学外科学教室 教授)氏が、講義や手術の合間に思いついたことをもとに、余談を交えながら医学の現状を紹介していくシリーズ「外科医の能書き」(全12回・各50分)、毎回ゲストを招いて、現在の医療制度を考察し、今後の医療体制の展望を討論する「日本の医療と医学」(全12回・各50分)の2コースが公開されている。どちらも専門的な内容を一般市民にわかりやすく解説する番組づくりがされている。デザイン学部の卒業制作展や大学院生の修了制作展などのトピックス、「高千穂峡」「門司港レトロ」等の環境映像は講座番組の合間などに視聴するのにもいい。

【YMWのeラーニング「NEO」】
http://neo.ymw.ne.jp/index.html
 株式会社よんでんメディアワークス(YMW)が提供しているeラーニングサイト。プラットホームは富士通のInternet Navigware を採用している。「NEO」はNetwork Education On Demandの略。「ヒューマンスキル養成」(5講座)「電力・電気一般系」(8講座)「OA操作」(29講座)「IT技術」(6講座)「IT資格取得」(3講座)「セキュリティ/個人情報保護」(12講座)「スキル診断」(4講座)「実務研修」(3講座)「能力開発」(9講座)「メンタルヘルス」(4講座)「英語力強化」(5講座)の11コース・82講座(有料)が用意されており、ほとんどの講座は体験版で内容を確認できる。ここでは「電力・電気一般系」のコースウェアについて概要を紹介する。「電気理論基礎1 直流回路」「電気理論基礎1 磁気」「電気理論基礎1 静電気」「配電基礎理論 配電用変圧器」「配電基礎理論 低圧単相2(3)線式回路」「配電基礎理論 変圧器V結線と三相4線式回路」支持物強度計算」「安全衛生特別教育 低圧・高圧・特別高圧電気取扱い」で構成されていて、受講費用はワンIDあたり11,500円と12,600円の講座があり、学習期間はいずれも3カ月。

-UP-