ちょっとユニークなWeb講座
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今回はちょっとユニークな生涯学習系のWeb講座を紹介する。”インターネットの塾”というと富山を皮切りに、全国的な広がりを見せている「インターネット市民塾」が有名だが、お隣の石川県野々市町では「インターネット町民塾」なる生涯学習サイトが活動している。コンテンツはより地域密着型だが、利用はもちろんグローバルに可能。富士通の「Internet Navigware(インターネットナビウェア)」を利用したeラーニングが増えているが、このサイトもそのひとつか。デザイン、機能、操作性などのユーザーインターフェースがまとまっているので、利用者や学習者等の戸惑いは少ないように思われる。

 一方「野菜作りのWeb講座」「Web講座 農村遊び学入門」はスローライフやグリーン・ツーリズムに関連していて、傾向としては地道に人気のあるコンテンツと言えるのではないだろうか。「岐阜県立郡上高等学校 Web講座」は、コンテンツは少ないが先生方の熱意とロマンが感じられ、今後に期待したい。「子どもを守るためのインターネット講座 WEB版講座」は、現在の学校現場の切実さが伝わってくる。こうしてみると今回選んだ5サイトは脈絡のないようではあるが、作り手とユーザーがお互いに顔の見える位置関係にある、親しみ深いWeb講座と言えるのでは。


【インターネット町民塾】
http://www.tsubaki-eagle.jp/
 インターネット町民塾は平成15年4月に開設されたインターネット上の生涯学習サイト。運営は金沢工業大学と石川県野々市町教育委員会が協同で行っている。本プロジェクトは 「大学が持つ知識資源、技能資源(教職員、学生の知識資源、技能資源)を野々市町の地域社会に提供することで、地域住民と共に新しい形の生涯学習を創造する」とし、平成16年度 の文部科学省「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」に選定されている。現在、公開されているコンテンツは22講座。とくに「野々市じょんから踊り講座」「能登地方における浄 土真宗寺院の空間特性」「加賀路の文学−『平家物語』における斎藤実盛-」や「安全安心のまちづくり」「これからの時代の建築のつくり方・使い方〜環境・地域住民に優しい公 共施設とは〜」「ゴミのダイエットに挑戦!」など、野々市町の歴史や文化、まちづくりや生活課題に密着したコンテンツが注目される。”町民塾”ではあるが町民以外でも利用者 登録すれば利用は可能。「これからの時代の建築のつくり方・使い方〜環境・地域住民に優しい公共施設とは〜」は、講師の環境・建築学部建築学科 宮下智裕先生の講義に続き、 野々市旧庁舎の再生をテーマに、学生4チームが「旧庁舎新築工事」「メディアツリー」「図書の森」「コミュニティプラザ」なるプランをそれぞれ発表。講評や質疑もあって、な かなか見ごたえがある。

【野菜作りのWeb講座】
http://www.ienohikari.or.jp/yasai/yasai_web.html
   社団法人家の光協会が発行している季刊誌「やさい畑」Web版のメニューのひとつ。本誌の企画と連動してさまざまな野菜づくりのポイント、ノウ・ハウを3分間のビデオクリッ プとして蓄積し、動画配信している。現在公開されているのは2002年冬号から2003年冬号までに企画された「葉ものやさいの収穫のポイント」「トマト栽培のポイント」「野菜づく りの季節がやってきた ジャガイモの栽培(1)、(2)」「ハクサイなどの収穫」「ビニールトンネルの掛け方」「葉もの野菜の上手な間引き」「ハクサイの栽培」「ネギの植え つけ」「ニンジンの種まき」「害虫対策」「寒冷紗」「土づくり」「冬の野菜管理―だいこん―」「ひとりでできるマルチング」「正月用の小松菜を作ろう!」の16コンテンツ。講 師はいずれも 東京・練馬区で体験農園「大泉 風の学校」を主宰しているカリスマ野菜農家の白石好孝さん。ビデオによるカリスマの説明には、紙媒体にない説得力があり、これ をきっかけに、体験農園で実地講習を受け、野菜作りにはまり込んでしまう人も多いのでは。

【Web講座 農村遊び学入門 農山漁村って知ってる?】
http://www.furusato.or.jp/asobi/
   「農漁村等に長期滞在し、様々な田舎暮らしを体験する」「地域の自然や文化に触れ、地元の人々との交流を楽しむ旅」などとされる「グリーン・ツーリズム」を推進する財団法 人 都市農山漁村交流活性化機構が運営するサイト。この講座は、総合的な学習の時間に対応して、自然や農林漁業の体験学習への参考となるよう、農山漁村の生活や文化の一部を 紹介したWeb講座。コンテンツは、遊びを通して森林保護やリサイクルについて学ぶ「森と生態系」。郷土芸能とそれを保存していこうとする様々な取り組みを学ぶ「現代に生きる 郷土芸能」。農村の食生活と行事食を経験して、食にまつわる様々な知恵とスローフードの大切さを学ぶ「地域に根ざした食文」。都会ではなかなか体験できない、面白いこと、珍 しいことを農漁村の1年を通して学ぶ「農山漁村の1年」。「書く(紙すき)」、「着る(染めもの)」、「盛る(陶芸)」の3つのテーマを通して学ぶ「農村の手仕事文化」。有 機野菜について学ぶ「有機農業」の6カテゴリーで構成されている。親子が一緒に取り組むときっと楽しく学べる内容なので、親子のコミュニケーションツールとしても活用可能で は。

【岐阜県立郡上高等学校 Web講座】
http://www.gujo-h.ed.jp/images/lecture/
 岐阜県立郡上高等学校の先生が高校の授業では習わない「料理」「IT」「郷土の踊り」「書道」「方言」「茶道」など生活文化にかかわる講座をWeb上で公開している。現在公開 されているコンテンツは「安くておいしい料理講座」「インターネット設定講座」「本番までに覚える郡上踊り講座」「今日からあなたも達筆講座」「EXCELの便利な利用法講座」 「来年までに覚える郡上おどり講座」「郡上弁を話さんかい講座」「お抹茶をいただこう講座」・・・の8講座。各講座とも4回シリーズで構成されている。なかでも”踊り好き” とされる井上和紅先生が講師の「郡上踊り」講座は独特の調子に合わせてアニメーションが踊る楽しいコンテンツ。井上先生いわく「見るものじゃありません。踊らなきゃ!踊ると きには当然下駄でしょ!郡上踊りの良さは下駄の音にある。(と、私は思う)始め不揃いだった音がだんだん揃って、踊りが終わる頃の一体感。毎年、踊りでしか会わない顔ぶれに 会える楽しみ」・・・という「郡上踊り」全10曲のうち、現在サイトでは「春駒」「かわさき」「ヤッチク」「まつさか」の4曲が練習できる。残りの6曲のアップを期待したい。

【子どもを守るためのインターネット講座 WEB版(長崎県教育庁)】
http://www.manabi.pref.nagasaki.jp/internet/kouza0501/index.html
 インターネットの経験が少ない保護者を受講対象に、長崎県教育庁が実施した「子どもを守るためのインターネット講座」作成資料の簡略版。同教委では講座に参加できない 人、参加したけれども内容がよく理解できなかった人、復習したいという人などのために生涯学習ポータルサイト「ながさきまなびネット」内に「WEB版講座」として開設した。コ ンテンツは「インターネットに関連した犯罪・トラブル」「子どもたちのインターネット利用の実態」「インターネットの危険性・問題点」「子どもが遭遇する可能性のある危険」 「子どもが『犯罪者』『加害者』になることも」・・・など、26シートからなる。各シートともLIVEの講座で用いたプレゼンテーション資料とそれを説明する文章で構成されている ので、ひとつひとつ自分のペースで学習できる。学校・公民館などの講座実施機関向けには、講座の実施資料のダウンロードも可能となっている。また、これから講座を実施する機 関には、紹介されている小学校の取り組み事例なども参考となる。

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