大学が提供する本格派eラーニング
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 前回の生涯学習センターに続き、今回は大学のeラーニングサイトにスポットを当て5サイトを選んだ。これまでも信州大学、東京大学、同志社大学、徳島大学、佐賀大学などを紹介しており、合わせて見ると大学のeラーニングもだいぶ多彩であることを実感した。やはり最高学府が提供するだけに、日本の将来を背負う「新しい学問」や「先端技術」分野の学習提供、知性を磨く本格的な「歴史」や「教養」分野の学習提供に特長が見出せるわけだが、地域社会や社会生活上の今日的な課題に対応した学習内容も増えているように思う。

 基本的には大学の授業や特別講座などのコンテンツをセレクトして提供することで、一般社会人には公共機関ではなかなか提供できない新鮮な学習に出会えるので、今後、ますます盛んになることを期待したい。

 一方、政府が進めている若年者の就業支援・能力開発支援のeラーニング「草の根eラーニング事業」の経済産業省サイドのモデル事業もこの10月から立ち上がりだしたのでサイトを紹介しておく。「草の根eラーニング・ポータル http://www.g-learning.jp/」で5つのモデル事業の概要が公開されており、現在、立ちあがっている3つのモデル事 業のURLが紹介されていて、現在、受講者の募集が行われている。


【日本女子大学 生涯学習総合センター】
http://lcc.jwu.ac.jp/
 本サイトでは現在100本を越えるVOD講座が配信されている。コンテンツは、生涯学習総合センターの講座を収録した「特別講座」、VOD専用に作成した「専用講座」、全学授業である教 養特別講義を収録した「全学授業から」、生涯学習総合センターの知の最前線・アカデミック講座を収録した「知の最前線・アカデミック」等で構成されている。視聴時間は短い もので40分前後、長いもので130分。50分から90分のものが多い。視聴するには無料だが会員登録(Web上)をして、IDとパスワードを取得する。2005年の最新配信講座を紹介すると 「これからのキャリアについて考えよう」(約107分)、「無形の文化財保護 〜その歴史と展望〜」(約102分)、「妖怪文化を後世に伝える」(約74分)、「ハッピーキャリアの法 則」、「国際化時代における女性の活躍」(約98分)、「地球のためにできること・せねばならないこと」(約110分)、「ドストエフスキイの時間、そして私達の時間」(約72分)。 興味につられて、「妖怪文化を後世に伝える」(川崎市市民ミュージアム学芸員 湯本豪一)、「意欲の心理学 第1回「意欲とは何か-自己概念との関係-」(前日本女子大学学長・ 名誉教授 宮本美沙子)、「建築の美と構造」(日本女子大学家政学部住居学科 専任講師 平田 京子)の3講座を体験したが、オンデマンド学習に配慮したつくり方で、飽きさせ ない。お宝サイト発見。

【WIDE University, School of Internet】
http://www.soi.wide.ad.jp/
   本サイトによるとSchool on the Internet Working Group (SOI) は、「世界中の学ぶ意欲を持つ人々に、デジタルコミュニケーションを基盤とした従来の制限や境界にとらわれない高 度な教育と研究機会を提供する」ことを目的に1997年9月より活動している。また「大学におけるあらゆる教育資源をデジタル化し、インターネットというグローバルなデジタル情報 基盤上に乗せれば、教室やキャンパスといった枠を越えて教育資源を共有できます。それによって学びたい個人に自由で多様な学習環境を提供することがSOIの目的であり、そのための 実証実験を続けています。」とある。現在、9月からスタートした慶應大学藤沢キャンパスの2005年秋学期の授業が公開されている。カリキュラムには「インターネット時代のセキュリ ティ管理」(村井 純・山口 英/授業レベル:大学院修士)、「インターネット構成法」(中村 修/授業レベル:学部4年〜大学院修士)、「ネットワークアーキテクチャ」(湧川 隆 次/授業レベル:学部1,2年生)、「プログラミング入門」(斉藤 賢爾/授業レベル:学部1,2年生)、「インターネット概論」 (中村 修/授業レベル:学部1,2年生などが 高度な内容が並ぶ。また、SOIの機能には入学登録し履修登録(いずれも無料)をするとチャットへの参加ができたり、課題が提出されるなどネット上で本格的な授業が体験でき る。SOIラウンジ(掲示板)を読むと学生から先生に質問や問題提起も活発で、さすがである。

【FRe-大学(阪大フロンティア研究機構)】
http://www.fre.jp/
   阪大フロンティア研究機構では、そのミッションのひとつである産業創成を担うことに伴い、そのための新しい学問分野創りや教育を通じた社会貢献を目指している。本サイトではそ の一環として登録すれば無料で受講できる「Webで学ぶナノ工学入門講座」と、講座中に直接質問ができる双方向ライブe-ラーニング講座、また受講時間・場所を自由に"いつでもどこで も"設定できるオンデマンド講座として「ナノ工学を学ぶ最先端講座」(有料講座)を開設している。 「Webで学ぶナノ工学入門講座」の構成内容は「第1章: なぜナノテクが今注目さ れるのか」(総論)、「第2章: ナノテクノロジーの歴史」「第3章:各国のナノテクノロジー戦略」「第4章:ナノマテリアル」 「第5章:ナノ計測・ハンドリング」「第6章:ナノデ バイス」「第7章:ナノバイオ」「第8章:ナノフォトニクス」「第9章:業界別ナノテク市場の可能性」「第10章:ナノテクノロジー関連書籍」「第11章:ナノトピックス」「第12章: ナノテクを学ぶための基本用語」。教材のスタイルとしては各章ともテキストを読むと最後に簡単なテストがあるタイプで、”ナノ”なるものの初歩を自分のペースで学べる。オンデ マンドスタイルの有料講座「ナノ工学を学ぶ最先端講座」(6講座/各講座全5回の講義)のほうは実際の講義を録画したものが視聴できる。費用は1講座あたり1名50,000円。受講 期間は各講座の最終講義より3ヶ月間。

【明治大学e-ゼミナール】
http://www.nifty.com/meiji/index.html
 明治大学ではリバティ・アカデミー講座(会員制有料講座:集合学習形式)の中でも特に人気のあるコースを【e-アカデミー】【e-ビジネススクール】なる有料講座としても展開して いる。有料といっても【e-アカデミー】は1ユニット(15分〜20分)500円(税別)というワンコイン講座。【e-ビジネススクール】は1講座4,200円(税別)となっている。動作確 認、内容確認についてはそれぞれ無料体験講座で講義が視聴でき、資料のPDFファイルも確認できるので安心か。現在提供されているのは【e-アカデミー】が「明治大学考古学講義」 (全11講義)、内訳は「第1講 世界の旧石器時代」「第2講 列島最古の文化をもとめて」「第3講 縄文後晩期の地域社会」「第4講 弥生時代の年代」「第5講 前方後円墳誕生」「第6講 三角縁神獣鏡と王権」「第7講 日本農耕文化の生成」「第8講 黒曜石の利用と縄文鉱山」「第9講 縄文貝塚と社会」「第10講 弥生文化の西・東」「第11講 虎塚壁画古墳とその保 存」。受講期間はそれぞれ30日間。【e-ビジネススクール】では「コーポレート・ガバナンス 改革の実践」と「国際経営戦略の最前線−グローカル・マネジメント」の2講座が提供 されている。教養としてもビジネス能力の開発としても、いずれも本格的なコンテンツだ。

【そのだインターキャンパス】
http://www.sonoda-u.ac.jp/sic/
 園田学園女子大学では、インターネットを利用して大学の専門の授業が受けられる「インターネットキャンパス」を2000年4月1日より運営。現在「一般公開科目」「Sonoda e-Learning Highschool 科目」「高大連携科目」「園田学園女子大学・同短期大学部 e-Learning 科目」の4種の科目を開講中。「Sonoda e-Learning Highschool」では,高等学校の授業の1コマ にe-Learningを取り入れるもので、コンテンツは授業時間の50分以内に終了できるように設計。生徒はパソコンを用いて自らのペースで学ぶ。提出された課題は大学教員が採点・評価 する。現在、用意されている科目は「日本史」2講座、「古文」1講座、「情報」5講座。「一般公開科目」は前期(5月〜3カ月)と後期(10月〜3カ月)で運営しており、現在、 受講料無料(入会金は必要)の「ラジオ講座 −気ままにハングル−」及び有料講座「歴史学を楽しむ」「表計算の資格取得!−ビジネスコンピューティング3級合格講座−」「保育 でのメディア利用を考えよう!」「『複雑系の科学』入門−カオスを中心に−」「源氏物語の世界−第1巻の桐壺から第4巻の若紫まで−」「捕鯨文化論入門」が開講されている。

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