テーマ 「NEETの支援や高校生の職業観育成を考える情報発信」
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今回は、高校生や高校教師、学校関係者に仕事や職業情報を提供しているサイト、ニート対策に取り組んでいるNPOやニート問題に関する情報発信サイトのなかから5サイトを選考した。

 いよいよ平成17年度がスタートし、若年者を対象にした経済産業省と文部科学省の「草の根eラーニング事業」や厚生労働省の「若者自立塾創出推進事業」が動き出そうとしている。

 「草の根eラーニング事業」は、地域の産業政策・雇用政策の側面から、地域に必要な人材育成やスキルアップを図ろうとする経済産業省のアプローチと、生涯学習の新しいテーマとして働く人のキャリア形成を支援したり、中学生や高校生のうちから将来の仕事や職業生活について考える習慣を身に付けたり、社会人の基礎能力を養い、就職活動に必要とされる基本的なスキルを訓練する、といった、現在の学校教育現場の弱点をカバーしたい、とする文部科学省のアプローチが、連携して実施されるとみられる。そして今年の年末以降、様々なコンテンツがインターネット上に公開され、幅広く利用できるようになることが期待される。

 「若者自立塾創出推進事業」については、学びたくても学べない、働きたくても働けない若者を対象に実施する施策。少人数の合宿形式などで、若者が一定期間寝食を共にし、生活習慣や社会人としての態度を身に付け、手に職をおぼえさせ、自立を支援する。NPOやコミュニティアンクルなどの取り組みを参考に国が推進するので、実際にどれだけ就職に結びつくか、成果も問われる。


【ひきこもりサポートナビ】
http://www.hikikomori-navi.com/
 「ひきこもり」や「不登校」で悩んでいる人やその家族、関係者等を対象に、インターネットを活用した情報提供や交流の場の提供、メール・カウンセリング、家庭教師、就労アドバイスなどに取り組んでいるサイト。有料会員になると詳しい情報の利用や個別のサポートが受けられるが、非会員でもなかなか充実した情報に出会える。「ひきこもり・不登校体験記」、ひきこもり度をチェックする「簡易判定テスト」、専門家のアドバイスやひきこもり体験者の話などを、ストリーミングビデオで公開している「サポートムービー」、興味・関心のある職業についてのアンケート結果で、人気の高かった職業をビデオ取材した「お仕事図鑑」などのコンテンツで構成されている。とくに取材やインタビューによるビデオコンテンツが充実しており、生駒 富男さん(ウィザス高等学校 副理事長)、小杉 礼子 さん(労働政策研究・研修機構 副統括研究員)、宮本 みち子 さん(放送大学 教授)、工藤 定次 さん(NPO法人 青少年自立援助センター 理事長)、玄田 有史 さん(東京大学 助教授)など、「ひきこもり」や「ニート」問題の専門家の生の話が聞ける「サポートムービー」は貴重。有料会員は全編視聴できるが、残念ながら非会員は一部しか視聴できない。それでもキーワードは伝わってくる。なお、本サイトは福祉団体、学術、産業の連携によって制作されている。

【情報センターISIS(イシス)】
http://center-isis.net/
   情報センターISIS(イシス)は「働きたい」「仕事がしたいけど、ハローワークに行けない」「ハローワークに行けても履歴書が書けない」、さらに「面接が不安だ」・・・そんな若者の社会参加を後押しするため平成16年3月、主に30代の若者や保護者への情報発信基地として京都市左京区に誕生。就労支援、共同宿泊体験、セミナー・講演会事業などに取り組んでいる。昨年9月には京都府庁労働部の就労支援対策委託事業にも参加。研修生・受け入れ先・ジョブコーチが三位一体となって実社会での就労支援をおこなった。このシステムでは、信頼できるスタッフ(ジョブコーチ)の付き添いのもとで、安心できる職場(受け入れ先)に若者が研修生として入る。「職親」と呼ばれる受け入れ先には、農園(農業体験)、清掃事業所(清掃業務体験)、デイサービス施設(高齢者介護体験)、NPO(一般事務・パソコン体験)などがある。また、20歳以上の「引きこもり」の活動を支援している「NPO京都オレンジの会」が京都府から委託されて実施している若者の宿泊体験事業にも協力している。こちらは丹後半島の自然の中で数日間仲間と過ごし、心身をリフレッシュする企画。因みにISIS(イシス)とは、エジプトの再生の女神「ISIS」からきているとか。センターは月曜から金曜までの10:30〜16:00にオープンしている。

【ドリコムアイ.net】
http://www.n-dricom.co.jp/eye/
   「ドリコムアイ.net」は、高校生を対象にした専門学校・大学・短期大学等の進学研究情報誌や、好きな仕事につくための進路発見情報誌などを発行。教育機関に特化した人材派遣事業等を行っている(株)日本ドリコムのサイトの中にあり、高校教師や学校関係者を対象に、高校生をとりまく教育上の諸問題を正面から取り上げ、季刊で発行している教育情報誌「ドリコムアイ」のweb版である。本誌自体も毎号特集に力を入れており、Web版でもその読み応えのある特集が閲覧できる。2004年秋号では、高度専門職業人の育成に向けて制度化されスタートした「専門職大学院」を特集。経営、金融、マネジメント、原子力工学、公共政策、デジタルコンテンツ等の研究科(専攻)の動向や課題を取り上げていて興味深い。また、2005年冬号では、増えつづける「フリーター」が社会問題としてクローズアップされるなか、フリーターよりもさらに深刻といわれる「ニート(NEET)」問題にスポットをあてている。前者は、国際競争力や産業・経済・政策を強化するのための高度で専門性の高い職業人の育成制度であり、進路指導等の高校関係者はもちろん、企業や自治体で働く社会人にもキャリア形成の新しいコースとして関心が高い。後者は一転して、「働けない」若者をどう支援すればいいのか、ニートを生み出さないためにはどうすればいいのか。教育現場にも国や地域社会にも極めて重いテーマとなっている。特集ではそれぞれの実情や課題がわかりやすく整理されていて参考になる。

【CRN(チャイルド・リサーチ・ネット)】
http://www.crn.or.jp/
 CRNは1996年に設立された「子ども学/Child Science」研究所。インターネットを活用し、専門家による研究レポートや調査データをもとに、子どもについて「調べる」「探す」「議論する」場を提供している。コンテンツ・メニューの「図書館」には、1「オリジナルコンテンツ」(CRN主催シンポジウム、ワークショップ、講演会など)、「研究レポート」(ABM:アドバイザリー・ボード・メンバーレポート、子ども未来紀行、イギリス 多様な教育と子どもたちなど)、2「調査データ・レポート」(モノグラフ:小学生ナウ、中学生の世界、高校生の世界、子育て生活基本調査、学習基本調査など)、3「子どもや教育に関する読み物」といった書架があり、専門的なコンテンツが充実している。このうちベネッセ未来教育センターが埼玉県の公立高校2校の生徒に卒業後の進路や職業について調査した「高校生にとっての『働くこと』」(モノグラフ・高校生VOL.73)では、「自分らしくとニートとの距離」「将来を見据えた進路選択」「高校生とインターンシップ」「仕事をみつける前に思っていること」「希望する働き方」「高校生の職業観」「好き・自由・不安ー仕事への淡い期待と確かな不安−」といった、集計結果の分析・解説がsあり、等身大の高校生の職業観と教育的な課題がレポートされている。

【「お仕事」未来図鑑 Job Shower】
http://www.job-shower.com/
 株式会社JTBモチベーションズが運営する高校生向けの情報提供サイト。主なコンテンツは「ジョブストーリー」(254職種:2005年04月30日現在)、「会社・業界レポート」(23業界)、自己診断の「適職ナビ」で構成されている。「ジョブストーリー」、「会社・業界レポート」とも、実際の職場で実際に働いている人が仕事の内容や職場について紹介しているところが特徴。仕事についての情報を得るには、「ジョブストーリー」の「職種名一覧」もしくは「おもしろ検索」の2系統でアプローチする。「おもしろ検索」では「得意科目から」「クラブ活動から」「趣味から」「目ざす仕事から」など9つのカテゴリーから仕事にナビゲーションしている。自分の適性を調べる「適職ナビ」では、「行動パターン」と「興味・関心」の2つの要素を57問でチェックし、「思考派」「感情派」「正義派」といった「行動パターン」と「専門家タイプ」「人間重視タイプ」「バリバリ働くタイプ」といった「興味・関心」の組み合わせで類型化し、診断者が向いている職業・職種を提示する。有料サービスとしては、学校や先生向けの進路学習パック、15〜18歳(高校生) を対象にした「自分発見プログラム」の通信講座「マイなび」などを提供している。なお、本サイトは無料コンテンツについても登録制により詳しい情報が利用できる。

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