テーマ 「若者の就業や雇用能力に関するデジタルライブラリー」
*コメント・URLは選考時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 この1年間、毎月13才から34歳ぐらいまでの若年者を対象にして、職業や仕事に関する意識を啓発しているサイトを選んできた。12回目の 今回は、感謝の気持ちを込めて、こうした活動する上で参考にさせていただいたり、勉強させていただいた5サイトをご紹介したい。

 リクルートワークス研究所の提言には、現実を鋭く分析し、今後のめざすべき方向が示されていて参考になった。フリーアルバイターやフリー ターという言葉を生んだ文化を背景に、今後の働き方や雇用の多様化を前提にしたキャリア形成社会の早期実現の重要性が浮かび上がってくる。労働政策研究・研修機構は国の研究機関として以前より、若年者の職業観や就業意識に関する数多くの調査に取組んできており、若年者問題がクローズアップされる中で、その存在価値を高めている。社会生産性本部、大阪商工会議所、パソナも定期的に若者等を対象に調査を行っており、若者の職業、就業について、貴重なライブラリーを構成している。

 17年度から、文部科学省、経済産業省が中心となって行う若者の就業支援に向けた草の根eラーニング事業がスタートする。厚生労働省もこれと連携して能力開発に関するポータルサイトを立ち上げ、民間が行っているeラーニングの情報を提供する計画。AVCCも国の動向を先取りして「しごと力向上教材サイト」を昨年夏にオープンし、データ件数は半年あまりで5,000件を越えた。17年度の公共ホームページ[goodsite]運動も、こうした社会の重要テーマに応える活動をしているサイトの掘り起こしと紹介をミッションとしていきたい。


【リクルートワークス研究所】
http://www.works-i.com/
 リクルートワークス研究所は「オープンでフェアな労働市場が形成された社会」「多様なワークスタイルが選択可能な社会」「雇用が絶えず創出されている社会」「キャリアサポート機能が充実している社会」「組織と個人のニーズが高次で統一された社会」「組織と個人の価値が相乗的に高まりあっている社会」の実現に貢献することをビジョンに掲げる民間の雇用や人材に関する研究機関。有料で発行している定期刊行物や単行本のほか調査研究報告書や提言を数多く発表しており、これらはサイトからダウンロードして入手することができる。2004年も「分断されたキャリア教育をつなぐ〜子どもの職業観を育てる3つの視点」(2004年7月:提言)「正社員時代の終焉―社会に新しい人材ポートフォリオを構築するための10の提言―」(2004年1月 :提言)「ジョブシャドウイング〜職場体験ジョブシャドウイングの事例〜」(2004年11月:調査・研究報告書)など、若年者の就業問題や雇用形態の変化など、日本社会が現在直面している教育・雇用・キャリア形成・人材マネジメント等についての情報が充実している。

【独立行政法人労働政策研究・研修機構】
http://www.jil.go.jp/
   労働政策、雇用問題関係の情報が日本で最も充実しているサイト。「労働政策研究」「特集 多様な働き方」「特集 若年者雇用」「テーマ別研究成果一覧」などのカテゴリーごとに、報告書やレポートにリンクが貼られていて、系統的かつ年次に沿って興味深い資料をピックアップでき、ダウンロードできる。2004年も「移行の危機にある若者の実像―無業・フリーターの若者へのインタビュー調査(中間報告)」(2004年6月8日) 、「企業が参画する若年者のキャリア形成支援―学校・NPO・行政との連携のあり方―」 (2004年9月17日)、「日本的インターンシップはどこまで広がってきたか」(2004年7月23日)、「ニート〜若年無業者の実情と支援策を考える」(2004年11月17日)、「ジョブカフェ−若者の就職を支援するために」(2004年9月17日)など政策立案等の基礎や裏づけとなる情報が蓄積されている。専門分野のレポートが豊富に読めるデジタルライブラリー機能に加え、毎週発行しているメルマガも関心のある人たちには便利なサービスである。

【財団法人社会経済生産性本部】
http://www.jpc-sed.or.jp/
   経営コンサルティングや新入社員セミナー等の研修事業に取組んでいる社会経済生産性本部でも、若年者の雇用や新入社員の意識に関する調査報告や提言が充実している。トップページの「提言活動」をクリックすると「最終報告『若者に希望と誇りをもてる職業を』次世代への橋渡しを行うための行動計画』」(2004年5月14日)、 「新入社員の『就労意識』と『生活価値観』の傾向〜平成15年度新入社員『働くことの意識』調査結果からの分析〜」(2004年6月17日)「平成16年度新入社員『働くことの意識』調査結果」(2004年6月17日)、「『子供たちの健全な成長と就業への移行』に対する教育界と産業界の協力のあり方に関する調査研究」(2005年2月14日)、「平成17年度・新入社員のタイプ」(2005年3月24日)など、報道発表資料メニューとなり、各資料がダウンロードできる。3月24日に発表された「新入社員タイプ」によると、17年度の新入社員を一言で表すと「発光ダイオード型」とか。これは電流を通すと(=ちゃんと指導する)と、きれいに光る(いい仕事をする)が、決して熱くはならない(=冷めている)ダイオードに似ているからだという。したがって、教え・学ばせることに注力しないと、せっかくの人材を活かせないことになると警鐘している。因みに16年度は「人気殺到で即日完売の一方で、売れ残り多数。高値落札で入手してもアテはずれあり」の「ネットオークション型」だった。

【大阪商工会議所】
http://www.osaka.cci.or.jp/
 大阪商工会議所には、仕事で役立つ能力は、学生時代のどんな学びや体験が役に立ったかを分析した、たいへん注目される調査報告が公開されて いる。「若手社員の『仕事に必要な能力』と能力形成に役立つ『学生時代の学び・経験』について」(2004年10月)がそれで、入社10年目 までの頑張っている若手社員895人のアンケートによると、学生時代の学びや経験を通して身についた能力として、小学校、中学校では「チームに貢献し、役割を果たす」がトップ。大学・大学院では「専門知識を身に付ける」がトップ。また、入社時に不足していた能力には「英語などの外 国語の会話力」がダントツ。これに「ビジョンを打ち出し、実現プランを立てる」「自分の思いを伝えて相手を動かす」が続く。「大阪における キャリア教育(職業観養成教育)の推進に向けた産業界からの提言」(2004年10月22日)では、こうした結果を踏まえ「職業体験の活用」「仕事に必要な能力の向上」「競争の導入」「教師の視野拡大」「保護者の参画」の5つの視点を提言している。また、「社会・産業ドキドキ!体験サイト」によると府内9つの小中高に社会人講師を派遣し、仕事や職業観の養成を支援しており、モデル事業実施報告も参考になる。

【パソナ】
http://www.pasona.co.jp/
 総合人材サービスの大手パソナグループのなかで、新卒及び第2新卒に特化したサービスを行っている(株)パソナオンが2004年12月に行った 「若者よ立ち上がれ」セミナー参加者を対象にした「仕事に関する意識調査」によると、今後希望する就労形態は「正社員」が69.6%と圧倒的に 多い。これに「独立起業」が18.5%、「派遣社員」6.5%、「契約社員」5.4%と続くが「アルバイト」はゼロだった。パソナのホームページ 「ニュース&トピックス」にある「雇用レポート」のコーナーには、これら若者やフリーターの就業意識に関係する調査として「新卒・第二新卒 者の『働くこと』に対する意識調査」(2002年8月)、「フリーターの就労意識調査」(2003年8月)、「日本雇用創出機構レポート『“フリーター”の 就業意識をさぐる』」(2004年6月)、 『「若者」の仕事に関する意識調査』(2005年3月)などが公開されている。これら調査は派遣事業説明会など の参加者ということで、比較的前向きな若者が回答者となっている関係か、仕事を探す時、一般的にフリーターが重視しているとされる「休日・ 休暇」や「勤務時間」より、「職種・仕事の内容」「やりがい・面白さ」などが重視されている。

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