2004年6月「若年者の自立と就業支援」
*コメント・URLは2004年6月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 6月は、仕事・職業への就業が最も困難と言われている引きこもりの若者や「NEET」(Not in Employment, Education or Trainingの略:仕事にもつけず、学校教育にも所属せず、職業訓練もうけていない人)と呼ばれる若者の自立と就業支援に関わるサイトを選んでみた。
 登校拒否の子どもたちを対象にしたフリースクールにも類似の取り組みが認められ、仕事や職業をテーマにしても、就業に近いところにいる人 を支援するサービス機関と、就業に遠いところにいる人を支援するサービス機関とは随分趣が異なる。
 近いところのサービス機関は、ジョブカフェやヤングハローワークなど、国や地方自治体が政策的に取り組んでいる。一方、遠いところにいる人に対するサービス機関は、NPOが献身的に取り組んでいて、財政的にはかなりつらい状況にある。全国の社会教育機関、生涯学習機関においては、改めてこの問題に立ち向かうべく戦線を整える時が近づいている。
 持ち場としては、両者の中間地帯あたりが、力を発揮しやすいところではないだろうか。 


【NPO法人キーパーソン21】
http://www.keyperson21.org/
 川崎市を拠点に活動するNPO。人は誰でも「生き方」や「職業」を選ぶきっかけになった出会いや体験が ある。今や、職種や業種、技能や技量の訓練、資格講習に関する情報はあふれているが、子どもたちに とっては、生き方や人生設計といった視点から、仕事や職業について考える生き方学習、職業観形成支援 理が重要である。「キ−パ−ソン21」は、小学生、中学生、高校生世代を対象とした職業教育のプログラムと して「自分の夢発見プログラム」を実施している。学校への出前授業「おもしろい仕事人がやってく る」は2001年から続けられており、多彩な仕事人が協力している上、一連の学習プログラムが確立して いると好評。地域で行うトークイベント「おもしろい仕事人に会いに行こう」も、2002年から行われてお り、両方とも生き方や職業選択に参考となる実施レポートがHP上に掲載されている。また「おしえて キーパーソン」という相談サイトも運営しており、子どもたちからの質問にさまざまな職業の仕事人たち が対応している。

【財団法人京都市ユースサービス協会】
http://www.ys-kyoto.org/
   財団法人京都市ユースサービス協会は、市内に7つの青少年施設を運営しており、それぞれが個性的な事業を行っている。対象者は市内在住もしくは在勤・在学の青少年(中学生〜30歳まで)。全体的には勤労青少年のレクリエーション 施設の感が強い。しかし、ユースサービス南(京都市南区)は、ドロップアウトした若者や不登校 など行き場のない若者の「居場所」をテーマに据えた環境づくりと、そこに集まってくる青少年の次のス テップづくりに着目。職場を見に行く、仕事を通して職業観や人生観を語ってくれる「かっこいい大人」 と出会う・・・職業体験事業「しごと発見プロジェクト」を実施している。一方、ユースサービス中京 (京都市中京区)の「ユースinf.スクエア」でも、少年や青年に多い悩みの突破に役立つ情報提供やワー クショップを開催している。「仕事のこと」「友だちのこと」「恋愛」「結婚」など、カウンセラーと1 対1でじっくり話せる "ハートナビゲーション"(カウンセリング無料/月・金曜の午後6時から各50分) を開設している。また、情報コーナーにはパソコンやインターネットのほか、就職情報誌を置いたり、適 性検査を受けられるようにしたり、若者に「働くこと」を意識した事業運営を心掛けている。

【NPO法人ニュースタート事務局】
http://www.new-start-jp.org/
   「家族をひらく」をモットーに、「引きこもり」などから若者の再スタートを支援するNPO(事務局: 千葉県浦安市)。「引きこもり」を解決するための3つのポイントに沿って事業を行っている。(1)同 世代が訪問し、人と関わるきっかけをつくる「訪問部隊」。(2)全国各地からやってくる仲間と共同生活 する「若衆宿」。(3)福祉・地域・飲食・情報ITなどの様々な分野を同時期に複数体験できる「仕事体験 塾」。「訪問部隊」とは、定期的に粘り強く訪問を続け、自力では出てこられない引きこもりの若者を、家 から連れ出す活動を行うスタッフのこと。「若衆宿」とは、家から出ることになった引きこもりの若者 が、共同生活を送るための寮のこと。千葉県に4箇所、埼玉県に1箇所、海外にも3箇所ある(2004年1 月現在)。ここでの生活は寮生たちによる自主運営。日常生活を送る上で必要な仕事は、分担が割り振ら れている。「仕事体験塾」とは、共同生活を送ることができるようになった後、より広い社会に参加する力を身につ けるため、実社会の仕事を体験しながら、仕事をする力、社会に参加できる力を身につけるための場。最初 の仕事体験塾、福祉コンビニ行徳センターは2000年11月に千葉の市川市行徳地域にオープン。日帰りで利 用するお年寄りの介護をする仕事や犬の散歩、引越しの手伝い、買い物の付き添い、家の掃除、病院への 送迎、といった地域に根ざしたサービスを行うお手伝いを体験する。

【NPO法人青少年自立援助センター(YSC)】
http://home.interlink.or.jp/~ysc/
 東京都福生市を拠点として全寮制で自立援助を行っているNPO。基礎訓練(リサイクル資源回収分別作 業、農業実習、ボランティア活動、家庭科実習)、学習、カルチャー教室(パソコン、スポーツ、整体、 陶芸、剣道、書道、洋裁、絵画)、就業訓練(漬物加工作業、ハウス・クリーニング)、コミュニティア ンクルプロジェクト(YSC事業、リサイクルショップ見習い、地場産業事業見習い)をスケジュールに 沿って毎日実施している。母体であるタメ塾は、1976年に福生市に開校。1979年、ひきこもりの青少年の ための共同生活寮「遊游館」を開設後、1982年から青少年の自立を援助する共同作業場創設のため、様々 な事業に取り組み、福生市の資源回収登録団体として「資源ゴミ収集・分別」と「リサイクル家電商品ス トックヤード」としての第一工場、「ハウスクリーニングチーム」、「漬け物野菜の加工作業所」として の第二工場を開設し、運営。一方、通信制、定時制高校、大検、大学受験、専門資格取得等の受験、卒業 資格取得のため各クラスをベースにマン・ツウ・マンに近い学習補助と指導をしている。

【特定非営利活動法人「育て上げ」ネット】
http://www.sodateage.net/
 YSCの永年蓄積した経験・ノウハウのもとに、NEET(Not in Employment, Education or Trainingの略) と呼ばれる若年無業者を主対象にした就業支援機関として立ち上げたのが、特定非営利活動法人「育て上げ」ネット (事務所:東京都立川市)。2001年に任意団体として発足し、2004年5月特定非営利活動法の認証を受けた。東京、愛 知、大阪などで若者の就業支援のための定例会やセミナーを開催しており「対人コミュニケーションが 苦手である」「仕事・アルバイトが長続きしない」「昼夜逆転の生活を改善したい」「第三者のサポート の下で就労支援を受けたい」「共同作業を通じて仲間を作りたい」「経済的自立を目指してがんばりた い」といった若者に対して、地域社会の方々からの協力の下、就労の基礎段階からの訓練プログラムを提供 している。プログラムの到達目標は一定期間、継続してアルバイトができるまで、と位置づけている。 2004年7月には立川市の委託を受けて、Job Station たちかわを運営。

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