2004年5月「キャリアデザイン」
*コメント・URLは2004年5月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

  「キャリア」「キャリアデザイン」といってもなんのことかぴんとこない人も多いことだろう。
  ヤングハローワークなどで開催されている若年者向け就業支援講座などで配布される資料の説明では、「キャリア(career)」とは、一般に「経歴」・「経験」・「発展」さらには、「関連した職歴の連鎖」などと表現され、時間的持続性ないし継続性を持った概念とされている。
 また、「キャリア形成支援」とは、関連した職務経験の積み重ね(連鎖)を通して職業能力を形成していくこととされている。
 わが国も昨年の「若年者の自立支援」政策を具体的に進めることとし、経済産業省はジョブカフェを全国15箇所でスタート。厚生労働省も全国でヤングハローワークを展開する。
 さらには政府は文部科学省、経済産業省、厚生労働省などが連携して、産業人育成やフリーター増加に歯止めを掛けようと、イギリスブレア政権が2000年から導入し、短期間で成果をあげた公設民営の生涯学習・能力開発支援事業「ラーンダイレクト」の導入を検討している。
 今月もそんな風に吹かれながら、ユニークな5サイトに巡り合った。


【CANWORK(キャンワーク)】
http://www.wakamono.jp/canwork/canwork/index.html
 群馬県労働政策課では、若者が自分らしい生き方や働き方を見つけることを応援する取組として「新しい元気な働き方の情報発信」事業に取り組んできた。本サイトはその成果として平成14年5月から開設している「若者による若者のための仕事情報発信サイト」。様々な分野で自分らしく活躍している方々を若者ボランティアスタッフが訪問し、働くことの楽しさ、やりがい、次代を担う若者に対する思いなどについてインタビューし、その内容を若者に分かりやすく発信している。企画、取材、デザインをはじめとした制作は、県内の大学生、専門学校生などの若者ボランティアスタッフが中心になって行っている。県では若者の感性・アイディアを活かした情報発信とその活動を通じて若者のやる気や自立を応援したいとしている。平成15年度は県内の7大学・専門学校生113名がスタッフとして活動。

【職業データベースの世界にようこそ】
http://db.jil.go.jp/welcome
   独立行政法人 労働政策研究・研修機構が開設している職業データベースのサイト。各産業の代表的な300の職業について解説している。学校を卒業して就職しようとする人たちはもちろんのこと、転職を希望する人たち、中高年齢の人たちや再就職を希望する女性など、年齢や経験の異なるいろいろな求職者が関心を持つと思われる職業が含まれている。300の職業の中には、私たちの身近に見られる職業やだれでもすぐに就ける職業ばかりでなく、その職に就くために長期にわたる教育、訓練を必要とする職業や、雇用が急速に拡大している新しい職業、免許や資格を取って開業する自営の職業も含まれている。なお、職業を選ぶ際に考慮すべきことや職業や産業を取り巻く状況について解説した「職業選択のガィド」や「職業の世界の将来」も参考になる。

【福沢諭吉のキャリアデザイン】
http://www.keio.ac.jp/staind/242.htm
   慶應義塾大学のサイトの中にあるページ「慶応義塾を読む」は、塾生・保護者を主対象に冊子『塾』のバックナンバーをPDFでネット配信している。その2004年春の最新号は「福沢諭吉のキャリアデザイン」なるタイトル。ボリュームは少ないが内容は感慨深い。明治維新を境に江戸と明治をほぼ半分ずつ生きた諭吉の生涯をトレースしながら「キャリアデザイン」について考察。諭吉の教え風に「就社」ではなく「就職」が重要。「学生時代はむしろ無目的の学問に専心し、物事すべてに通じる理解力、判断力を養うことが望ましい。そして何よりも世間に流されない独立自尊の人格を形成することが最大のキャリアデザインではないだろうか」と導き、最後は「塾祖福澤諭吉には何の資格を取りどの職に就くかといった狭い意味でのキャリアデザインはなかったが、巨大な演劇ともいえるその一生は学問と人間交際によって世間を広くすることが最良のキャリアデザインであると教えてくれる」と結んでいる。うーん話がでかくて気持ちはいいが・・・この先人の教えをどう現代に生かしたらいいのだろうか。

【リクルート進学ネット  高校生のための進路発見サイト】
http://shingakunet.com/
 高校生一人ひとりの進路選び、学校選びを総合的にサポートするためリクルートが開設している総合進学情報サイト。全国約2200校の大学・短大・専門学校の情報を詳しく紹介。学校の基本的な情報以外にキャンパスの雰囲気や設備など、高校生がより実際の学校をイメージしやすいような情報が掲載されている。「先輩のキャンパスライフレポート」では、1300人以上の在校生の1週間のスケジュールやその学校を選んだ理由、高校生へのアドバイスなど、在校生のリアルな情報が満載。まだ自分が将来何を学びたいか、どんな仕事をやりたいか分からない悩みに対しては、72の学問分野・426職種の中から、「適学診断・適職診断」などで自分に向いた学問や仕事も紹介される。他にも興味ある仕事を選ぶと、その仕事に関連した学問 分野が紹介され、特長的な学習方法、将来の活躍分野、具体的なゼミの紹介などにナビゲーションされる。高校生自身が自分の将来について考えられるように、なかなか工夫されていて楽しめる構成になっている。

【群馬県生涯学習センター】
http://www.manabi.pref.gunma.jp/gllc/
 群馬県教育文化事業団が運営する群馬県生涯学習センターのサイト。同センターでは、調査研究事業として「生涯学習基礎調査」「現代的課題に関する学習方法の開発研究」「群馬キャリアデザイン支援事業」に取り組んでおり、 平成14年度の「群馬キャリアアップ支援事業に関するヒアリング調査」を受けて、平成15年度には、生涯学習の観点から個人のキャリアアップを支援するため、センターの役割や全県的な支援体制、先導的プログラム開発等を研究協議する「平成15年度群馬キャリアアップ支援事業検討懇談会」を設置・開催した。PDFで公開されている「生涯学習 ぐんま 第40号・特集 群馬キャリアデザインの支援事業の概要」をみると、同事業を「自分のキャリア(生き方、働き方)は自分でデザインし、個人、地域人、職業人としての総合的な自己成長、自己実現に向かって、必要な能力の開発・向上を図り行動する生涯学習活動を支援する事業」と位置付けている。キャリアデザインを単なる職業人としての狭義のキャリアとして捉えるのではなく、人間力の観点からアプローチし ているのが特筆される。16年度もパイロット事業のプログラム内容等の検討協議やキャリアデザイン講座を行うこととされ、注目される。

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