2004年4月「職業や仕事」
*コメント・URLは2004年4月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 作家の村上 龍 氏が書いた「13才のハローワーク」が注目されている。目を通してみると、子どもたちはもちろん若者やシルバー層にとっても参考となり、感慨深いナビゲーションがされていると感じた。お役所ものやビジネス在りきの職業ハウツーものとは、えらく違う印象をもった。
 さて、わが国では若年者のフリーターが著しく増加し、少子高齢化や年金制度の崩壊、税収不足などとも絡み、このままでは国家をゆゆしき事態に至らしめると、危機が叫ばれている。
 やはり若者のフリーター増加に苦しんだイギリスのブレア政権は2000年から「ラーンダイレクト」という生涯職業学習支援システムを大胆に導入し、若者の就業支援に効果を上げたといわれている。
 よって、16年度(16年4月選定)からこのgoodsite運動でも時々は意識的に職業能力開発や職業観・仕事感の育成、キャリア支援などに関係するいいサイトを取り上げていくこととしたい。趣味・教養を楽しむライフスタイルは、日本の生涯学習分野の特長でもあり、他の先進国にはない良さも有しているが、働くことに充実感をもてる人生こそ、地域や国の発展には不可欠であり、いまやさまざまな人たちが、それぞれの立場で協力していく時ではないだろうか。


【キャリナビ(CARINAVI)】
http://www.carinavi.org/
 若者が自分が「この人がカッコいい」と思う人を取材し、それを記事にまとめ、そしてWebで情報発信する、という一連のアクションを体験してもらう。職業や仕事に対する考え、態度を身に付けてもらうには生きた手本と直接接して、その生き様を全身で浴びてもらうことが一番、という考え方から、NPO法人キャリナビで16歳から23歳の若者が支援活動を実施している。本サイトには、現在280人の「カッコいい人」がDB化され、生きたお仕事事典となっている。職業はワイン醸造家、サッカーコーチ、メイクアップ・アーチスト、公務員、NPOマネージャー、SOHOワーカー、大工、ベンチャー企業社長、絵本作家、占い師など、とにかく多彩な職業が網羅されている。それぞれ若者ならではの個性と視点で、知りたいことを率直にインタビューし、仕事との出会いや熱い想いが紹介されていて興味深い。同NPOでは「オンリーワントレーニング」という6ヵ月間の学習プログラムの中心にこの活動を位置付けており、若者の人生への旅立ちを応援している。

【A'ワーク創造館(財団法人大阪生涯職業教育振興協会)】
http://www.adash.or.jp/
   A’ワーク創造館は、大阪府・大阪市などで設立した(財)大阪生涯職業教育振興協会が運営するおとなの学習ゾーン。A’(ダッシュ)とはセンターのある「芦原橋の頭文字」Aをとり、芦原橋からダッシュしようとの意気込みをこめて命名された。センターのほか、梅田駅前の大阪市総合生涯学習センター内と読売情報開発大阪マルチメディアセンター内にサテライトがある。講習講座事業、イベント・ネットワーク事業、相談・情報の 提供という3つの柱で事業展開している。いずれも仕事や学習を通じた自己実現・進路選択支援を中心に「おとなが短期間に学べて実用的な知識や技術が身につく講習」「行政窓口とタイアップした丁寧な相談」「人的ネットワークが広がる事業提供」を目指している。A’で学んだことや出会った人々をきっかけにあなたの夢を探してください。

【おとなになったら何になる?「夢・仕事」】
http://www.yumeshigoto.gr.jp/
   本サイトでは、手仕事「伝統工芸・職人」と、東京浅草でお店を営む30代から40代の仲間が、小学校高学年生から中学生に向けて「仕事」をテーマにした情報を発信している。グループの中には代々の家業や父親からの仕事を受け継いでいる人もいれば、家業を継がずに別の仕事にたどり着いた人などさまざま。コンテンツをたどると、生い立ちや、家系などの紹介があったり、仕事と関連付けながらもそれぞれの自分史が語られている不思議な職業ガイダンスになっている。天職に出会った職人や商人たちが、自分史、自分の生き様を伝えることで、子どもたちに「夢」与えようとするほほえましい取り組みだ。手仕事・職人グループが17名、浅草の商店主グループが10名、その他が議員さんの1名。合計28名・28種類の職業や自分史がまとめられている。

【JOB JOB WORLD(私のしごと館)】
http://www.shigotokan.ehdo.go.jp/jjw/top.html
 「もの」「関心」「場所」「生活」「キーワード」「職業分類」から、映像クリップ化された様々な職業情報にアクセスできる。個々の職業情報は、職業ガイダンス、実際に仕事をしている人の体験談、職業につくためのアドバイスなどで構成されており、コンパクトに編集された映像クリップが流れる。また、関連情報として、働く人の人数、年齢構成、給料等の統計情報、産業界や企業情報、職種分類情報、似ている仕事情報、能力開発機関情報などが提供されており、職業に対する知識を得るのに便利な構成となっている。関西文化学術研究都市エリアに設置された「私のしごと館」のサイトの中にあり、全国の子どもたちに職業を理解してもらうための壮大な映像データベースとなっている。今後は、社会の多様化に伴い、子どもたちが興味を持つ職業や仕事の変化にも、きめ細かく対応していく工夫を期待したい。

【は!とネット長野(長野市教育委員会公開教育用ホームページ)】
http://www.nagano-ngn.ed.jp/
 本サイトのVOD学習、進路指導、職業体験の中に「食料品店」「スーパー」「理髪店」「駅」「フラワー ショップ」「ボランティア」「食堂」「旅行代理店」「きのこ製造業」「衣料品店」「動物園」の11コンテ ンツが紹介されている。視聴者の理解をしやすくするには、映像・音声・編集などの技術面、何を見せたいか伝えたいかなどの企画面で、さらに配慮が必要と思われるが、中学生の職場体験活動をそのまま撮影して教材化する積極性はいい。中でも「スーパー」のコンテンツは面白い。個人情報保護の問題もあると思われるが、体験者感想や、受け入れ先のコメントなども加えてもらえると教材として立体的になるのではないだろうか。

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