2004年2月「ウェブ視聴VS読書」
*コメント・URLは2004年2月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

   今月は、大学のe-ラーニングサイトが2つと公共図書館のサイト。それにデジタル百科事典のサイトがひ とつという、テーマ付けに苦しむサイト選びとなった。でも、それぞれのサイトはなかなか意味のあるコンテ ンツや機能を提供している。
   同志社大学の大使講座は文字通り、政府や外務省だけには任せておけない外 交問題を大学講座という場を通じて相互理解を深めるもので注目される。授業の公開は大学が開かれるこ とでもあり、市民の評価にさらされることでもある。佐賀大学には、今後更なるコンテンツの 充実を望みたい。長良川はデジタリウムとでもいえそうな独特のウェブ世界を構築していて良かった。光 町(千葉県)と芦屋市の2つの図書館には、読書推進の重要性からあらためてスポットを当てた。


【同志社大学 大使講座 - 今、世界を語る -】
http://www.doshisha.ac.jp/taishi/
*現在2003年度の大使講座公開は終了しました。2004年度の大使講座は4月下旬公開予定です。

 同志社大学の「大使講座ー今、世界を語るー」のサイト。同大学では読売新聞社との共催事業として外交の第 一線で活躍している6カ国(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、韓国、インドネシア)の駐日大使 を講師に招いて大使講座を実施。同志社大学以外の学生や一般市民にもインターネットで公開している。 ネット公開は「講座を読む」(大阪読売新聞のHPにリンク)と「講座視聴」の二通りがあり、視聴の場合 はオリジナル音声版と日本語同時通訳版があり、ナローバンドとブロードバンドに対応している。講義内 容、映像、音声、要約記事とも高いレベルにあり、大学が発信するコンテンツとして一級品といえる。


【佐賀大学 生涯学習】
http://net.pd.saga-u.ac.jp/llstudy/
  佐賀大学が取組んでいる、パソコンとインターネットを活用した新しい授業形態(e-Learning)のサイト。 2001年4月から学内限定で実施してきたが、2003年12月から一般公開に踏み切った。講師の授業をスタジオ で収録、編集し、それに合わせた資料提示を試みている。インターネットで配信されるため、受講は、い つでも・どこでも・何度でも聴講が可能。講義数は約60からスタート。聴講期間は2004年1月5日〜2004年 12月。毎月、講義科目は更新される。講義はオムニバス形式(1科目を8〜10名の講師が担当) で行われ、講義時間は1講義約40〜80分だが、聴講しやすように1講義を3〜5パートに分けている。異文化 コミュニケーション、オゾン層とオゾン利用技術、バクテリオファージ、線虫の生態、棚田学等、11授業 がフリーで公開されている。画質・音質・資料提示等のレベルアップを期待する。

【長良川デジタル百科事典】
http://nagaragawa.npo-dac.jp/
  「このコンテンツは1.5MB以下の回線をご利用の方はご覧いただけません」とトップページに表示され ているブロードバンドサイト。フラッシュ版とHTML版がある。「テーマで調べる」を選ぶと画像がスク ロールされ、テーマメニューが表示される。見たい画像をクリックしてメニューを選択すると、すばやく 動画と音声が流れてくる。スピード感があり、心地よい。画面横に関連資料も表示され、静止画、関連 項目リスト、参考文献などがリンクされている。「地図で調べる」「市町村で調べる」からも同様にブラ ウジングできる。なかなか楽しめるサイトだ。「長良川と自然」「長良川と社会」「長良川と文化」の3 つの大項目があり、その下にかなりのコンテンツが蓄積されている。運営は岐阜県河川課。

【光町図書館ホームページ】
http://www.library.hikari.chiba.jp/index.html
 本サイトは、図書の貸出し促進を意識して制作されている。それもかなり踏み込んで取り組んでいる。 一般、ティーンズ、キッズのそれぞれに「新刊先行予約」機能があり、クリックするとすで に図書のタイトルが入力済みの予約申込み画面が出たり、新刊図書のタイトルリストからコピー&ペース トするだけで予約を簡単にできる入力フォームが用意されている。また、書評に載った本、ニュースな 本、企画展示の本、文学賞、光町立図書館なんでもランキング・・等のキーワードから蔵書検索に関連付 けられている。「ニュースな本」→「盲導犬クイ−ル」とクリックすると、「クイールへの手紙」「ク イールを育てた訓練士」「盲導犬クイールの一生」「クイールはもうどう犬になった 」「盲導犬になった クイール」の5冊の所蔵資料に案内された。その他メールマガジンや本の取り置き等、サービスの工夫が されている。

【芦屋市立図書館】
http://www.ashiya-city-library.jp/
 芦屋市公民館長時代「IT講習のためのホームページ」を運営していた、前田文也さんが2002年4月に図書館 に異動。約2年間でとてつもなく芦屋市立図書館のサイトを成長させた。蔵書資料にさまざまな視点からスポットを当てる ことで、書架にある本を市民に手渡したい、という熱い思いが伝わってくる。利用案内や蔵書検索さ えあれば良しとする、多くの図書館にはぜひ参考にしてほしいサイトである。メニューに沿って放映中の ドラマや確定申告関係の資料を辿ってみたが、ほとんどが「貸し出し中」。市民が関心も持つような、 本への入口をタイミングよく設けていくことで、資料も人も生きることを示しているようだ。なかでも 「源氏物語」へのナビゲーションは力作である。谷崎潤一郎訳のものも研究者向けから一般まで5種類が蔵 書されており、他にも田辺聖子、瀬戸内寂聴、円地文子ら16人の「源氏物語」ものがある。

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