2002年1月「デジタルアーカイブ その3」 
*コメント・URLは2002年1月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今月は、またまたデジタルアーカイブをテーマにgoodsiteを選定した。

 選定にあたって、当初、全国の視聴覚ライブラリー、視聴覚センターの情報発信の中からいいサイトを見つけ、紹介・応援したいと考えていた。全国に約800箇所あるとされる視聴覚教育施設・組織が、現在のインターネット時代にまったくついていっていないのでは・・・形骸化したままで、新しい目標も役割も見出せないでいるのでは・・・と余計な心配をし、地域映像のデジタルアーカイブこそ、視聴覚施設・組織のこれまでの財産とノウハウを元に、事業と組織を再構築できるテーマではないかと考えていた。

 そこでいろいろなサイトにアクセスしてみたのだが、「これは」という視聴覚ライブラリー・センターには出会えなかった。世の中、まったく別の枠組みで動いている。各県のデジタルアーカイブ推進事業やいろいろな生涯学習機関、NPO等の取り組みが進むなかで、本家として伝統的な業務から脱することができず、時期を逸した感がある。

 しかし、安価なデジタル式腕時計に市場の多くを席巻されながらも、アナログ式の高級時計をあこがれ、求める人も依然として存在する。アナログ式の良さ、サービスも保持し、新しい時代のデジタル映像ライブラリーの構築、そこを拠点とした活動プログラムの開発。2002年最初のgoodsiteはそんなことに思いを巡らしながらはじまった・・・。

【富山県映像センター】
http://www1.tkc.pref.toyama.jp/AVC/HITV/EI.HTM
 生涯学習情報の提供や地域映像資料のライブラリー化に取組んでいる富山県県民生涯学習カレッジのサイト。「とやまデジタル映像ライブラリー」は、市民が撮影した富山県内のビデオ映像をデジタル化して提供。デジタル化の作業も市民講師による技術講習会等を開催し、市民主体で行っている。システムは「富山県マルチメディア・モデルキャンパス展開事業」(TAO委嘱事業)で開発。富山の自然、歴史、行事などの動画映像がデータベースとして蓄積されており、「再利用可」の素材についてはダウンロードし自由に編集ができるため、教育現場での学習教材として大いに活用できる。

【愛媛県立新居浜南高等学校(別子銅山をインターネットで甦らせよう!)】
http://www.niihamaminami-h.ed.jp/akagane/index.htm
 愛媛県立新居浜南高等学校のサイト。情報科学部の生徒達が作成している。この「別子銅山をインターネットで甦らせよう!」は高校生らしいユニークな企画。ふるさとの別子銅山が閉山し30年余り。この貴重な歴史を風化させないよう記録を残そうという主旨のプロジェクトを1999年に発足、以降「旧別子の紹介」「東平の紹介」「四阪島の紹介」と毎年度テーマを決めて取り組んでいる。動画像や音声を使い、生徒達自身のことばでわかりやすく解説されている。貴重な地域のデジタルアーカイブである。

【興福寺】
http://www.kohfukuji.com/
 奈良県 興福寺のサイト。「文化財データベース」では、永い歴史を誇る興福寺が所蔵する貴重な文化財のデータベースを提供。仏像や仏画、書、建造物などといったジャンル、キーワード、制作年代、文化財のランクなどから検索が可能。それぞれの文化財には画像と解説、読みがなが付されている。他にも2001年に行った特別公開をバーチャルツアーとしてネット上で再現するなど情報の発信に積極的。改めて学習教材としても価値のある貴重なコンテンツを豊富に持っていることを実感させられる。

【新潟県の伝統的工芸品(新潟県教育委員会)】
http://www.lalanet.gr.jp/nlpc/dento/dento.html
 新潟県の伝統工芸品を紹介するサイト。新潟県立生涯学習推進センターがマルチメディア教材制作事業の一環として作成したもの。越後与板打刃物、燕鎚起銅器、塩沢紬、加茂桐箪笥といった13の伝統工芸品を紹介している。それぞれの工芸品は「あゆみ」「さかんになったわけ」「原料」「できるまで」「課題と努力」といった項目に整理され、子供達の学習活動に使いやすい様配慮されている。画像も豊富に使われており、解説もわかりやすい。シンプルながらも使い勝手の良いデジタルアーカイブだ。

【上田市マルチメディア情報センター(上田デジタルミュージアムネットワーク)】
http://www.umic.ueda.nagano.jp/
 上田市マルチメディア情報センターのサイト。地域の文化財や映像資料などをデジタル化して保存、情報発信するデジタルアーカイブ事業を推進する全国屈指のサイトとして有名。とくに「上田デジタルミュージアムネットワーク」では、地域の資料館、図書館、美術館などが手を組みそれぞれの所有するコンテンツのデジタル化と提供に参画しており、ITを活用した生涯学習事業として注目される。また「上田情報蔵」では、上田市の地域情報や伝統 工芸など800項目、3000点の情報をデータベース化し提供しており見ごたえがある。

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