2003年9月「ITによる子どもの支援・活動報告」  
*コメント・URLは2003年9月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 平成14年度から導入された学校の週休2日制を契機に、こどもたちがこの増えた休日をいかに有意義に過ごすのか、それを地域社会等がどのように用意し、支援するのかが課題となっています。今月はそんな取り組みの参考になると思われるもののうち、ITを活用した先進的な活動を行っている事例をインターネット上から探してを紹介することにしました。
 こどもが地域の出来事などを取材して、ホームページで情報発信していく、という活動はたくさんありそうな気がしていましたが、単発のホームページ作成講座関連の情報を除くと以外に少ない印象を受けました。そういう意味では滋賀県生涯学習課の取り組み「滋賀県IT子どもクラブ」は出色です。
 また、群馬県伊勢崎市の「IT記者デジタル広報」もメディアリテラシーや取材技術、物事の見方のトレーニングにまで発展すると事業が"大化け"するように思われます。
 一方、福岡県豊前市の「ブゼンキッズ 君とオンライン!」は、委嘱事業終了に伴い、昨年暮れ以降で更新がストップしていますが、住民ベースならではのすばらしい取り組みなので、再度のろしを上げてくれることを心より期待しています。
 地域づくりは人づくり。大垣市の地道で果敢な「IT致道館」は、果たして将来どんな効果もたらすのか、注目されるところです。そして最後に、こどもエコクラブの地道で壮大な活動には敬意を表したいと思います。


【IT記者デジタル広報】
http://www.news.imap.ne.jp/e-machi/index.html
 本サイトは群馬県伊勢崎市が総務省の「eまちづくり・地域コミュニティ創出支援事業」に応募して採択された、市民公募のボランティアIT記者による世代を超えた地域コミュニティ創出支援事業のサイト。市民公募で任命されたボランティアIT記者26名が、中央公民館、三郷公民館、市民プラザ、宮郷公民館の各支局を拠点に地域の身近なニュースを取材してインターネットで発信している。ニュースは6月から毎日のように発信されており、花火大会やコンサートなどでは動画によるニュース配信もある。記者は小学生、主婦、お年寄りなど多彩な顔ぶれで構成されており、年齢や生活感が記事に反映されている。今後は、単なる紹介にとどまらず、取材者の視点や出来事の意味をより工夫して伝える努力を期待したい。市の担当課は情報政策課。サポートはNPO法人アイマップネットワークが行っている。

【ブゼンキッズ 君とオンライン!】
http://www.buzenkids.gr.jp/
   1999年7月文部科学省委嘱事業として福岡県豊前市の子どもセンターを中心に設立され、活動するブゼンキッズのサイト。3年間の委嘱事業終了後も地域住民や関係者の高い評価と活動存続の賛同を得て、住民ボランティアによりホームページの運営が継続され、現在でも公開されている。「教育」的な匂いを廃し「こどもの遊び」を徹底的に支援する姿勢がいい。そんな子ども本位な情報が、多様でかつ豊富に、そしてダイナミックに発信されていた様子と、そうした活動を住民が率先して推進していた様子が強く伝わってくる。活動経費を捻出するために地域の医院や商店のホームページづくりを受注するなどの柔軟性にも感心する。

【集まれ!まちのジュニア特派員 -滋賀県IT子どもクラブ推進事業-】
http://www.longlife.pref.shiga.jp/itkodomo/index.html
   滋賀県IT子どもクラブは小学生から18歳未満まで誰でも参加できる体験情報活動のクラブ。平成14年度から滋賀県教育委員会生涯学習課が取り組んでいる事業で、ホームページは学習情報提供システム「におねっと」のなかにある。クラブ員の活動は「体験しよう」「発信しよう」の2つ。クラブ会員になると単独もしくは仲間同士、グループなどでいろいろな活動を体験して、その感想などをレポートし「情報発信」できる。さぽこね新聞(愛知川町中央公民館)、チャレンジ教室通信(今津町チャレンジ教室)、パソコン活動 (多賀町子どもIT倶楽部)、自然観察や公民館活動(秦荘町子どもトライアル)など楽しい情報がたくさん発信されている。社会教育施設等を拠点に地域のこどもと地域社会がITを軸に結ばれた意欲的な取り組みだ。

【大垣市IT学校「IT致道館」(大垣市情報工房)】
http://www.city.ogaki.gifu.jp/johokobo/
 岐阜県大垣市の取り組み。天保11年(1840年)に設立された大垣藩の人材育成のための藩校「致道館」にちなんで、平成14年4月1日に大垣市IT学校「IT致道館」が開設された。高度情報社会を担う人材育成プロジェクトの一環であるとともに、将来の大垣市のITリーダー育成を目的としている。生徒は小学校5・6年生を対象とし、平成15年度は「ロボット作成コース」と「ホームページ作成コース」の2コースを開いている。定員は各12名。前期、後期の2回実施しており、授業料は1人1,000円(全8回)。 講師陣も県職員や教育委員会職員のほかにソフトピアジャパン研究員、情報科学芸術大学院大学、岐阜大学・岐阜経済大学の学生、情報のボランティアなどが参画しており、行政と地域の学校等が連携した新しい形の事業になっている。情報先進都市ならではのITエリート養成といえるかもしれない。

【こどもエコクラブ】
http://www.env.go.jp/kids/ecoclub/index.html
 こどもエコクラブ(主宰は環境省)は、小・中学生なら誰でも参加できる環境活動クラブ。サイトの運営は(財)日本環境協会が担当している。平成15年8月末時点で、全国で3,633クラブ 70,686 人の小・中学生が登録し活動している。活動は「エコロジカルあくしょん」と「エコロジカルとれーにんぐ」の2つがあり、「エコロジカルあくしょん」は、各クラブが自主的に行う活動。生き物調査、町のエコチェック、リサイクル活動など、環境に関することなら何でも「あくしょん」になる。「エコロジカルとれーにんぐ」は、毎日の生活の中で地球や環境のことを楽しく考えるプログラムで、活動報告は会員に配布されるJECニュースで紹介される。「エコロジカルあくしょん」や「エコロジカルとれーにんぐ」の活動を1年間がんばった会員には、「アースレンジャー認定証」が送られる。1995年からはじまっている官庁、地方公共団体、民間企業が協力して環境をベースに子どもたちの地域活動を支援する息の長い取り組みだ。

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