2003年7月「生涯学習情報提供」  
*コメント・URLは2003年7月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今月はあらためて生涯学習情報の提供・・・とくに公的機関が運営する生涯学習サイトに注目してみました。結果的に推奨サイトとして選ばせていただいたのは、山口、鳥取、千葉、愛知の4県と東京都北区の計5サイト。まずは各サイトの工夫と苦闘に敬意を表したいと思います。
 いま、なぜ生涯学習サイトなのかというと、そもそも国や自治体が生涯学習を推進していくうえで、学習情報提供と学習相談により、市民の学習を支援することが重要と強調されてきました。そのため多くの公的機関が税金を投入して情報提供システムを構築し、サイト運営と対面や電話による学習相談に取り組んてきました。
 最近は電子メールで学習相談の受付と回答を行うサイトも増えています。しかし、今回選んだサイトをはじめ、生涯学習サイトが最近、学習コンテンツそのものを配信するようになっていることを思うと、情報の提供と学習相談の連携方法は変わってきているように思います。「学びネットあいち」の学習相談コーナーには学習相談会議(掲示板)がありますし(現時点で書き込みはないが)、ここから専門に特化した他の相談窓口にリンクが貼られています。
 また、「ちばりすネット」のオンライン講座ごとの掲示板は一種の学習相談・学習支援になっています。これらのことをみると、「DB情報の補完」「学習行為の支援」「専門相談先へのナビゲーション」この3つの機能が情報システムによる学習相談の実体のように思われますが、みなさんいかがでしょう。


【ふるさと学習コンテンツ 知っちょる!? やまぐち】
http://www.ysn21.jp/furusato/
 山口県教育委員会が運営しているふるさと学習サイト。このサイトが学校教育や生涯学習の場で活用され、多くの県民に山口県のすばらしさを再確認してもらい、山口県人としての誇りとアイデンティティを醸成(じょうせい)すること、県外在住の方々にも山口ファンとなってもらうことなどを狙いとして平成14年3月から全面公開した。オール県庁、全市町村・全小中高参加型で構成されているところが特徴のひとつ。ふるさと学習というと、とかく歴史や文化に偏る場合もあるが、くらし、自然、産業,未来にも幅広く視点を当てている。明治維新を支えた人たちを生んだ山口から、21世紀を支える人材が輩出されることを期待したい。

【未来をひらく鳥取学(鳥取県立生涯学習センター)】
http://www.pref.tottori.jp/sgcenter/
  鳥取県生涯学習センターではとっとり県民カレッジ主催講座の目玉として、「未来をひらく鳥取学」を東部・中部・西部の3ブロックで、それぞれ5月から12月にかけて7科目(歴史・文化/産業/教育・福祉/国際化/自然・環境/人権/健康・生活)を展開中。鳥取県ではこの講座を鳥取ルネッサンス運動と位置付け、いずれの科目もふるさと鳥取を多様な視点で見直し、現代的課題について学ぶ講座とし、片山善博県知事(県民カレッジ学長)はじめ、県内講師中心の講座を展開している。全科目(7科目)修了者には修了証を交付される。
 また、7月30日からは動画・音声(RealOnePlayer対応)を配信するトリピー放送局を開始。未来をひらく鳥取学や生涯学習講座、センター制作の生涯学習事業関係ビデオなどがラインアップされている。今後、講座の進行にしたがって骨太の講義が次々と公開されるのは楽しみだ。因みに片山知事の講義では、国や自治体は従来、箱物行政が優先される財政や人事の仕組みになっていたが、これからは文化や芸術などにも配慮した仕組みへ政策転換が必要であるとのことで、改革派知事の発言として注目される。

【ネットで楽しく学ぼう(ちばりすネット・オンライン講座)】
http://www.clis.ne.jp/ok/index.html
  さわやか千葉県民プラザが運営する生涯学習情報提供システム「ちばりすネット」(http://www.clis.ne.jp/index.htm)では、平成14年11月からインターネットによるオンライン講座をスタートした。現在、提供されているコンテンツはいずれも初心者を対象にした「FLASH講座1・2・3」「Word講座」「Excel講座」「Word&Excel講座」「デジカメ写真補正講座1・2」「俳句入門講座」「マンガ(イラスト)入門講座」の10コース。もともとITスキルのe-ラーニングでスタート。掲示板を使った質疑応答で利用者との双方向性を確保。15年3月から県民により身近なテーマである「俳句入門」、7月からは「マンガ(イラスト)入門」が加わった。こちらは毎月季題やテーマが提示され、ネット上で投稿を受付、入賞者発表などが行われる。まだ、スタートしたばかりだが、ITスキルトレーニングと楽しみを重視したオンライン講座の今後に注目したい。

【学びネットあいち(愛知県生涯学習情報システム)】
http://www.manabi.pref.aichi.jp/
 本サイトは平成14年4月24日オープン。続いて平成15年1月には愛知県生涯学習推進センター(http://www.pref.aichi.jp/kyoiku/shogai/llcenter/)がオープン。この2つのサイトが独立しながら連携して愛知県の生涯学習情報をフォローしている。「学びネットあいち」は他県の生涯学習情報システムに比べると、生涯学習情報のうちの学習講座・イベントなど学習機会情報(2次情報)と学習コンテンツ(テキスト、動画などの1次情報)に特化している。学習コンテンツ一覧には、学校・教育/地域社会/生活全般/健康・福祉/スポーツ・レジャー/遊び・体験/芸術・文化/文化財・芸能/ビジネス・経済/自然科学・環境/哲学・歴史・地理/政治・法律/国際交流の13分野のコンテンツが蓄積されており、県庁各課や県立大学などが実施したシンポジウムの報告書などの文献が読める。 また、学習コンテンツガイドにはビデオコンテンツ集、視聴覚室(視聴覚教材)、公開講座・講演録(静止画とテキスト)のほか、親子、健康、暮らし、収蔵資料といったテーマ別にリンクが貼られている。

【ようこそ東京都北区教育委員会生涯学習推進課のページへ】
http://www.city.kita.tokyo.jp/kyouiku/syougai/syougaitop/index.htm
 管理係、社会教育係、文化財係、中央公園文化センター、赤羽文化センター、滝野川文化センターの6つから構成されており、これによって北区の社会教育・生涯学習関係のさまざまな情報をとりまとめて発信している。全体的に事業や行事の解説や案内情報に限定されているが、多様な取り組みがわかりやすく整理されている点がいい。社会教育係のメニューには、区民大学総合コース、ことぶき大学、ジュニアリーダー、シニアリーダー、青少年団体指導者講習会、あすか青年教室、スーパーサイエンススクール、家庭教育学級、大学公開講座、地域寺子屋、学校公開講座、子どもセンターが並んでおり、教育委員会自身は高齢者、こども、子育て、障害者への支援を主に取り組み、文化センターは住民の生涯学習支援を主に取り組んでいる構図がうかがえる。また、教育ボランティア制度やこどもセンター(http://www.netcity.kita.tokyo.jp/nobisuku/)の取材ボランティアなど、行政とボランティアの連携の方向も注目される。

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