2003年5月「パブリックの新しい展開」  
*コメント・URLは2003年5月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今月は、さまざまな立場の人たちがそれぞれの分野で新しい社会システムの構築を目指している取り組みにスポットを当ててみました。
 最近発行された経済産業研究所コンサルティングフェローの澤 昭裕さんと「公を担う主体としての民」研究グループがまとめた「民意民力」(東洋経済新報社発行)に 触発されたのがきっかけです。
 今回紹介したサイトや団体以外にも、全国でさまざまな動きが高まっており、とてもすべてを取り上げることはできませんが、goodsiteなりの視点で5サイトを取り上げてみました。
 「生涯学習や文化は『教育』という呪縛から、もっと民の自由さや柔軟さ、大胆さのなかに開放してもしかるべきである」という考え方に強く感じるところがあります。今後ますます民すなわち市民やNPOの力がこれからのパブリックサービスの支える力にシフトし、行政はいかにこれら市民セクターの活動とパートナーシップを構築していくか、が問われていると痛感しています。
 社会教育や生涯学習の分野も決して例外ではないので、今後改めて取り上げてみたいと考えています。


【ASK-NET(特定非営利活動法人 愛知市民教育ネット)】
http://www.ask-net.jp/
 「特定非営利活動法人 愛知市民教育ネット」は、もともと「愛知の私学運動」から端を発しているが、インターネットを積極的に活用し、かつNPO化することで、学校教育とNPOの協働へと進化を遂げた。現在は「教育への市民参加が、学びを循環させ、お互いがお互いを向上させる『学びの共同体』が形成されていく」「学校は子どもたちが社会へ出る前の大切な準備期間。子どもたちがいろいろな夢に向かって、それぞれが自分自身の『学び』を深めていく。学校はそんな『学びの場』であってほしい」という理念に基づき、市民と学校を結ぶ市民主体のネットワークづくりを行っている。
 活動においては「市民講師ナビ」の存在が大きい。これは、市民講師と学校をつなぐボランティアで、「市民講師(市民講座)をあつめるコレクター」「学校に市民講師をすすめるプロモーター」「市民講座を実際に開催するための調整をするコーディネーター」の3つの役割を持つ。
 また、市民参加の教育イベント推進事業、学びの交流事業、市民参加の教育情報発信事業 、情報環境の整備事業、情報教育事業、政策提言、助言相談事業などダイナミックに活動しており、学校教育現場を地域に開き、市民参加で地域の教育力を高める原動力となっている。


【po・npo・n web(ぽんぽんweb NPO&ボランティア情報サイト)】
http://www.po-npo-n.com/
  本サイトを運営する「NPO法人伊勢志摩NPOネットワークの会」は、「南勢志摩県民局の2市15町村の地域で活躍するさまざまな市民活動団体とボランティアが、有機的に結びついて活動する運動体」。「NPOがいきづき、住民が責任を持って参画する社会を、自らの努力と行政との協働によって作り上げよう」という目的で活動している。po・npo・nとは、「Powerful(パワフル)=力強くて、Positive(ポジティブ)=積極的で、Possible(ポッシブル)=可能性を信じる、NPOのNETWORK」の略。
 継続的に参加できないが単発的に活動に参加したい、いつ参加できるか分からないけれど、情報だけは知っておきたい、自分の特技を役立てたいなどの人たちと、個人ボランティアを必要とする団体を繋ぐ「ちょこボラ情報システム」には現在12件のボランティア募集が掲示。また、111人のボランティア登録がある。
 また、伊勢志摩生活創造圏ビジョンに参加する17市町村の“きらりすと”(地域で活躍している人)を紹介する「きらりすとDB」には、個人198人、市民団体・NPO134団体が登録されている。一般公募した伊勢志摩の『きらり』(地域のたからもの)を参加型で書き込んでいける関連サイトの「伊勢志摩きらり1000選」(http://www.kirari1000.com/)も充実している。

【NPO Coupii Art(ようこそ!クーピーのページへ)】
http://www.asahi-net.or.jp/~sf3t-kgi/home.htm
本サイトを運営する「特定非営利活動法人 クーピーファッションアートグループ」は、心身障害者のピュアな感性とアーティストとの融合により、デザイン性の高い作品、商品創りを進め、障害者に夢と実益を感じてもらい、夢や希望を持って芸術、スポーツ、音楽などあらゆる分野での社会参加をサポートしていく団体。
 展示会やイベントなどを通じたアーティスト活動とWebによる作品(商品)展示や販売案内を連携させ、ITを使った障害者のためのビジネスモデルを提案している。ホームページ上に掲載されているアクセサリーや、Tシャツ(イラストをプリントしたもの)などを商品例として掲載している。展示室には芸術性の高いイラストがたくさん掲載されており、作者のピュアな感性に惹きつけられる。また学生であるリーダーの熱いメッセージに、心を惹かれる。


【MIMINet(みやぎモデル・イニシアティブ・ネットワーク)】
http://www.tpminc.co.jp/miminet/
 環境、医療、福祉、在宅医療、在宅介護、 教育、安全といった宮城県の地域・コミュニティの課題をニーズとし、経済・産業の経営資源等を課題解決のためのシーズとする具体的なプロジェクトを、情報技術とフィールドの活用によって推進することをめざして活動しているネットワーク型非営利組織(NPO)。世界の先進的モデルの研究を通して、宮城県に最適な「みやぎモデル」を創造して行こうという社会変革の壮大な試みである。
 プロジェクト方式の活動を進めており、障害者の自立、メカトロの普及啓発、デジタルアーティストの育成、資源リサイクル、僻地医療・在宅医療、バリアフリー、学校のIT環境の支援など9つのプロジェクトが走っており、着実に成果も上がっている。市民と行政が連携したNPOパワーが、地域の暮らしやすさや人々の活力を引き出し、地域を活性化していくエンジンとなりつつあることがうかがえる。


【e-デモ会議室(三重県民e−デモクラシー)】
http://www.e-demo.pref.mie.jp/
 e-デモ会議室は、地域住民自らが地域を創りあげていく社会の実現を目指すため、多くの生活者(県民等)が参加し、生活者が中心となっていつでも自由に意見を述べ、議論に参加できる電子会議室等として運営していくことを目的としている。
 会議室の適切な運営を図るため「e-デモ編集会議」を毎月1回開催。編集会議では、テーマの選定やテーマ別会議室の開始・終了の決定を行なうなどe-デモ会議室の基本的なことを審議しており、公募で選任されたe-エディターもメンバーに入っている。
 会議室のテーマについては「テーマ公募会議室」で募集しており、新規テーマ候補については、(1) 既に類似のテーマ会議室が存在しないテーマであること(2) 三重県地域に関連するテーマであること(3) 三重県がテーマに関する情報を提供可能なものであること・・などの条件を満たしていれば採用される。電子会議の初心者のための「練習・体験コーナー」やこどもを対象にした「e-デモ・ジュニア」も用意されていて、まさに高度情報化時代のリテラシーとデモクラシーを推進するパイオニアとなっている。
 運営事務局は三重県総合企画局e−デモクラシー推進プロジェクトグループ。

-UP-