2003年3月「e-ラーニング」  
*コメント・URLは2003年3月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 14年度のgoodsiteの締めは、キャリアアップを目的とし、動画を使った教材を提供するサイトに注目したいことから「e-ラーニング」と決めていました。

 しかし、いざ探してみると、ここを取り上げよう!というサイトを見つけるのには苦労しました。当初、資格取得やキャリアアップ等の通信教育系のe-ラーニングサイトをブラウジングして、5サイト選定するつもりでしたが、いろいろアクセスしてみると、これらのサイトは有料サイトのためIDとパスワードがないと、コンテンツそのものにたどりつけません(これはごもっとも)。お試しバージョンはあるものの、それだけではよくわからない・・。

 ということで、今回の「e-ラーニング」は、いよいよ日本でも岐阜県の国際ネットワーク大学コンソーシアムや信州大学で本格的なe-ラーニングが始まっているよ、というご紹介を中心に、この間気になっていた産業経済研究所と科学技術振興事業団のサイト、それにおつまみ1つを紹介することとしました。


【独立行政法人経済産業研究所(RIETI)】
http://www.rieti.go.jp/jp/index.html
 本サイトでは、「フェロー(研究員)」「イベント・セミナー」「コラム連載」「寄稿論文」「出版物・ディスカッションペーパー」「プロジェクト」等のメニューがあり、経済問題に関する専門的な論文、講演、シンポジウム等のコンテンツが充実。講演、シンポジウム等については、当日会場で配布、もしくは提示された資料、講義そのものの動画配信、講義内容のまとめなどを公開。遠隔地のため当日参加できなかった人などにも、充分理解できる丁寧な情報公開は大変親切。また、一部についてはスライド(パワーポイント)つき動画配信を行っており、ネット上で実際の講義が体験できる。Webデザインも洗練されており、コンテンツも整理されており使いやすい。公的な研究機関の情報公開として先端を走っているサイトの代表といえる。

【Webラーニングプラザ(技術者Web学習システム)(科学技術振興事業団)】
http://WebLearningPlaza.jst.go.jp/
 本サイトでは、ナレーションとアニメーションを使ったコンテンツで、総合技術監理、機械、土木、化学・化学工学、塑性加工、材料、環境、生物(バイオインフォマティクス)などの分野別の教材と、製造現場の実写映像を中心としたコンテンツで、鉄・非鉄金属・木材の加工技術、超高真空をつくる技術、強化層形成を目的とした金属表面処理などの教材を提供。最後に自己診断テストもあり、それぞれのステップを丁寧に学ぶことができる。無料でありながら高度な教材を提供している。さまざまな分野の技術教材のWeb化が望まれる今日、さらなる充実が望まれるサイトだ。

【国際ネットワーク大学コンソーシアム(INUC)】
http://www.inuc.gifu.gifu.jp/
 IT先進県である岐阜県では、国際ネットワーク大学構想の第1段階として、岐阜県と県内の国公私立大学(16大学、1高等専門学校)との連携により、独自の教員や教室を持たないバーチャルな方式による「国際ネットワーク大学コンソーシアム共同授業」を平成11年5月より開講している。共同授業は、マルチメディアを活用した遠隔授業で、平成14年度は、前学期に「生命科学と情報の最前線」「知識社会論2002」、後学期に「企業と環境」及び「NPOコミュニティ論」の計4科目を提供。また、14年度からは対面授業、テレビ会議システムによる遠隔授業(主会場:岐阜県県民ふれあい会館/サテライト会場:授業担当大学)に加え、インターネットによるe−ラーニングを本格的に開始。平成15年度は、単位互換科目85科目の中から、共同授業として前学期に「生命科学と情報の最前線」、後学期に「NPOコミュニティ論」と「人間福祉学」の3科目の他7科目の計10科目を予定。受講生は、参加大学の学生はもちろん、社会人も大学の単位を取得することができる。また、単位取得を希望しない聴講のみも可能。共同授業の模様は収録・編集し、受講生は、各講義日翌日より1週間(原則)国際ネットワーク大学コンソーシアムのホームページからビデオ・オン・デマンドで受講することができ、また質疑応答はインターネット・メール及び掲示板にて実施。高等教育・リカレント教育分野における本格的な取り組みが日本でも始まっている。

【信州大学(SUGSI)】
http://cai.cs.shinshu-u.ac.jp/sugsi/
 信州大学では、先端的工学系分野において、将来高度な専門知識と総合的な判断力を備え、社会の各分野で活躍し得る、高度専門職業人の人材育成を図ることを目標に据え、インターネットによる修士レベルの大学院コースを実施。 SUGSIとは『”Shinshu University Graduate School on the Internet”の略称で「講義教材配信と遠隔ゼミナールのためのネットワークVODシステム」のメタプロジェクト全体の総称』。 現在、主に工学部情報工学科で行われている講義や演習について、その教材配信と講義を収集・記録し、VODでインターネット上への再配信を行っており、卒業研究時や大学院での少人数ゼミナールもインターネット接続された遠隔地間で実施している。平成14年度にはインターネット大学院に81名が入学。学生の出身地は関東地区が約半数を占めるが全国に分布。他大学の教官や大企業の技術者もおり、とくに企業の現職者にとっては貴重な学習機会の提供となっている。

【videobrowser.jp】
http://www.videobrowser.jp/
 手前味噌ではあるが、AVCCの関連サイトである本サイトでも、動画とスライドを連携したWeb教材、または動画メインのWeb教材を公開。毎月1本づつのペースでアップしており、視聴は無料。現在「ビジネス教育」「生活・文化」「情報化・技術」「健康」の4分野にわたって12コンテンツを提供。世の中のコンテンツ不足を少しでも解消するため、とにかくこうすればWebコンテンツが比較的簡単に制作できる!ということを普及し、ITを活用した生涯学習の推進を実践する試み。教材制作には時間やコストがかかってしまいがちであるが、ITを活用してより軽い負担で効果のある教材を制作していく方法を探る必要がある。今後は対象を見据え、特定の分野においてもう少しまとまった、あるいは体系的なものも開発していきたいところである。

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