2003年1月「それぞれのeコミュニティ」  
*コメント・URLは2003年1月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今月は、総務省の「eまちづくり」交付金事業に触発され、eコミュニティ関係のサイトをいろいろチェックしてみました。

 同事業は、市町村が都道府県を通じて事業申請するもので、事業にあたってはNPO、地域のIT事業者が協力して事業スキームをつくり、新しく人を雇用し、ITを活用した地域の活性化や生活支援、コミュニティビジネスの創出などのモデル事業を全国で100件認定するものです。事業費は100%補助で1,000万円、1,500万円、2,000万円の3ランクの募集がされました。

 一方、ネット上ではすでにさまざまなアプローチからeコミュニティがトライされており、自治体自身が住民サービスの向上のために実験しているもの、NPOが地域づくりのために自主的に取組んでいるもの、ビジネスモデルの開発のため行政・大学・産業界が組んだものなどがあります。

 エレクトリックの「e」といい(good)の文字合わせの妙で、「e・・・・」という言葉だけはが大流行していますが、果たしてその内実はヒトや地域をどこまで救うのか?e地域づくり、e社会教育、e生涯学習・・・。今回はそんなイメージの参考になる5サイトを選んでみました。

【徳島大学公開講座IT&マラソン・ジョイントプログラム「ゴールはホノルル」】
http://www.cue.tokushima-u.ac.jp/honolulu/
 徳島大学大学開放実践センターの吉田敦也教授が運営するサイト。平成14年12月8日開催されたホノルルマラソンに向けて「ホノルルマラソンを走ろう/中継しよう」という生涯スポーツ講座とIT講座が連携して実施された画期的な事業の一部始終がネット上に公開されている。本企画には「知としての健康」「生活創生技術としてのIT」「健康科学と情報学の融合」「健康と情報と人との繋がり」「総合学習型公開講座」の5つの理念が包含されており、「走ろう講座」は平成14年5月から11月にかけて18回開催され、約90人が受講。「中継しよう」講座は28名が受講した。そして本番には総勢77名(マラソン出場者、インターネット中継チーム、応援)が現地ハワイに飛び、出場者55名は全員マラソンを完走。中継チームはインターネットライブを見事に成功させた。準備から終了までの様子はたくさんのデジカメ画像とオンデマンドムービーで紹介されており、掲示板ではハワイ組と徳島組の活発な会話がメモリーされている。エネルギッシュでアットホームな「eヒト・e関係づくり」はまだまだ続く・・・。

【京都街中無線インターネットプロジェクト「みあこネット」】
http://www.miako.net/
 特定非営利活動法人日本サスティナブル・コミュニティ・センター(SCCJ)が実施主体となり、市民、民間企業、大学、商店街などが協力して推進している「みあこネット」のサイト。「みあこネット」は京都市内を散策しながらインターネットに接続して、観光、文化、商業、イベントなど生活に身近な情報サービスが受けられる、ITによるまちづくり・ビジネスモデルをめざしている。平成14年4月から実験サービスがスタート。平成15年12月末まで実験を行なう予定。アクセスポイントは現在(14年12月末)約200箇所。現在は(1)インターネットに時間無制限で接続できる(2)産経新聞を無料で読める (3)タダで話せるIP携帯電話を使える(4)地域情報を提供する「ここどすえサービス」(5)地域のコミュニケーションに使えるチャットと掲示板(6)視覚障害者向けのアクセスホットラインサービス(計画中)などのサービスが利用できる。無線LAN(「IEEE802.11b」方式)を用いることで携帯電話やPHSよりも高速に通信(最大11Mbps)ができる。月々の通信費はアクセスポイントのオーナーが負担し、一般利用者は無料で利用できる。京都というもともとのまちの魅力にさらにITサービスが加わった「eまちづくり」の決め手はやはりコンテンツか。

【デジタルde「みんなのムービー」Project】
http://www.dcaj.org/movie/
 経済産業省の「デジタルコンテンツ地域上映事業実証試験」第2フェーズのサイト。本プロジェクトは映像制作者、映像事業者、流通サービス業者等の参加を得て、デジタルコンテンツの上映事業を行いたい者とデジタルコンテンツ保有者のマッチングシステムを整備し、双方を結びつけることで、上映型デジタルコンテンツの初歩的なマーケットの構築、デジタルコンテンツの上映型利用のより一層の拡大を目指している。すでに第1フェーズを終了。平成14年秋より公募した新たな上映事業者、コンテンツ保有者が参加して平成15年4月以降、第2フェーズの実証実験が行なわれる。HP上にコンテンツリスト(「提供者名」「タイトル」「種類」「上映時間」)、上映者リスト(「上映予定会場」「座席数」「上映希望時期」 「総上映回数(希望)」「上映の目的」「上映希望コンテンツの内容」「期待される観客層」「希望上映時間」「希望料金設定」)を掲載。上映機材のない会場で上映会を計画している場合は機材の無料貸し出しにも応じている。「eまっち」によるヒトとコンテンツ出会いとそこから生まれる触発と感動に期待したい。

【東根インターネットクラブ】
http://hic.sakuranbofarm.com/
 山形県東根市の市民、IT事業者、教育関係者などが参画して運営しているサイト。同クラブはインターネットを活用した町おこし、ITの有効活用をみんなで勉強しながら、実践していくことをモットーにしている。ITをツールとすることで地域コミニュティを盛り上げ、地域や教育現場を活性化へ導いていくという信念から、東根市の小学校の総合学習や公民館、ボランティア団体のIT活用支援などを試み、地域の情報化推進支えている。講演会やコンサート、直撃インタビューなどのビデオ番組の配信、フリーマーケット(地域通貨によるネットオークション)、そばの食べあるき会の実施とそば屋の紹介、市民参加のメルマガの編集・発行など、ユニークな活動をリアルな世界とネットの世界を結んで展開している。また、地場産業、生産者のリンク集兼検索サービスよるeビジネスの支援も実施。そばとさくらんぼ、プラス「e地域づくり」。東根の文化とライフスタイルの情報発信に拍手。

【eぎゃらりー川口】
http://www.egk.jp/
 本サイトは埼玉県川口市内と周辺のアート情報をネット上で配信している。運営は市内で活動するアーティスト、ギャラリー経営者、芸術教室主宰者、美術愛好家、情報メディア関係者が参画し、ボランティアで行なっている。扱う情報は団体・個人、プロ・アマ、公・民を問わない。相互に刺激し合い、交流を深め、創作意欲にあふれる地域づくりをめざしている。コンテンツはニュース、ギャラリー、イベント、芸術教室、公民館、アーティスト、グループ、美術館、文化財、掲示板で構成されており、「アーティスト」のコーナーでは自分や自分の作品を掲載したり、販売したい人の登録ページがあり、登録されると作品の画像と販売希望者には連絡先などが記入された個人データが公開される。Web上でeショップをおこなっているわけではないが、魅力的な作品が並んでおり、思わず作家に問い合わせしたくなる。「文化財」のコーナーも充実している。鋳物のまちだけに、「鋳物の誇り」のメニューには旧鍋平別邸、「キューポラのある街」、 福禄ストーブ、学習院女子短大の正門、本一通り、国立競技場聖火台といった鋳物縁の文化遺産がアーカイブされている。「eぎゃらりー」から生まれるアート&文化の創造とビジネスの融合を期待。

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