2002年9月「デジタルミュージアム」  
*コメント・URLは2002年9月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今回はタイプの異なるデジタルミュージアムをセレクトしてみました。

 「くすりの博物館」は中身が濃く学習コンテンツとしても注目されます。「京都市学校歴史博物館」は京都が幕末から明治にかけ、教育に力を注いだその信念が偲ばれ、地域を強くするには教育が重要なことをあらためて現代に訴えています。「彦島」は歴史の隙間に埋もれた地域の歴史と現代の姿をWebを利用することで全国に伝えています。「ドコモ電子図書館 DoCoMo Digital Library」は情報企業のリーダーらしく、利用者にストレスを感じさせない見せ方、聞かせ方の工夫があります。「かごしまデジタルミュージアム 」は、本物を見に行く、調べに行く前の情報提供という点で、横断検索システムの良さが生きているように思われました。

 個人、企業、教育委員会と運営者が異なれば、内容も相応に異なりますが、デジタル化することにより、地域の資料や専門的かつ貴重な資料を広く公開しようという目的は共通しており、どのサイトもそれぞれの情熱が伝わってきます。

【くすりの博物館】
http://www.eisai.co.jp/museum/index.html
 エーザイ株式会社の創業者・内藤豊次氏が1971(昭和46)年6月に開設した「内藤記念くすり博物館」のインターネット上の博物館。「人と薬の歩み」のメニューでは「くすりを探し求めて」「医療のあけぼの」「配置売薬と行商」「くすりをつくる」「健康への戒め」「蘭学のおこり」「近代薬学の夜明け 」といった項目に沿って概要説明があり、データベースの画像とテキストで構成された関連情報へとナビゲーションしている。専門博物館ならではの貴重な資料をわかり易い構成でブラウジングでき、しばし薬の世界の歴史と知を探索できる。「薬草に親しむ」では、キーワードで薬草の検索ができる。

【京都市学校歴史博物館】
http://www.gakurehaku-unet.ocn.ne.jp/
 京都から江戸に都が移るという変革期に強い危機感を抱いた京都の人達がとった近代化政策の一つに日本で最初の学区制小学校の導入があるが、京都市学校歴史博物館は京都の教育と学校の歴史を、教科書、教具・教材や古文書などの歴史資料により展示するとともに、学校ゆかりの作家から母校に寄贈された美術工芸品等(学校文化財)を展示する全国に例を見ない施設。インターネットでも「学校文化財ギャラリー100選」「教科書コレクション」などを公開している。ギャラリー100選のデータベースは「作家名から選ぶ」「寄贈を受けた学校から選ぶ」の二通りで検索でき、教科書コレクションでは12冊の貴重書の表紙や中味の一部が閲覧できる。

【日子の島(山口県下関市彦島)】
http://www2.tip.ne.jp/~nakani00/index.htm
 文治元年(1185年)源平最後の合戦の舞台となった壇ノ浦は歴史的にも有名だが、その時、平家が壇ノ浦へ打って出た最後の拠点が彦島だったことはあまり知られていない。本サイトは瀬戸内海の急峻な潮の流れとともに滅亡していく平家を見届けた彦島の現在の姿と平家物語との関わりについて豊富な資料で紹介している。とくに写真集は力作で大正時代から現在までの彦島を地域別、日常の風景、海、文化と教育、神社仏閣、産業、史蹟などのカテゴリーで整理している。Web掲載にあたっては、写真や文献の利用許可を得る地道な作業を積み重ねている。また、サイトの全データを収録したCD-ROMの提供も行っており、これには収録画像ファイル数約800枚、収録ニュース数136件がおさめられている。

【ドコモ電子図書館 DoCoMo Digital Library】
http://www.digital-lib.nttdocomo.co.jp/
 ドコモ電子図書館は、NTTドコモが創立10周年の節目として取り組んでいる社会貢献活動「NTTドコモ10周年記念事業」の一環として、2002年7月より公開しているスペシャル・プログラム。「電子図書館」は情報通信をテーマとした「移動通信ライブラリー」や、失われつつある日本文化の保存をテーマとした「日本文化の記憶」、「こども電子図書館」等で構成されている。こども電子図書館にはBGM、アニメーションとともにページをめくりながら物語を読み進める「日本のむかしばなし」(12作品)、リアルプレーヤーで楽しめる「かみしばい博物館」(5作品、実演の声はプロの紙芝居士)がある。また、「むかしのおもちゃとあそび」(8作品)では、むかしのおもちゃの完成写真、遊び方、作り方が解説されている。

【かごしまデジタルミュージアム 歴史と文化の宝箱】
http://kagoshima.digital-museum.jp/
 鹿児島市教育委員会文化課が運営するサイト。鹿児島市の美術館等に所蔵されている「美術品」(鹿児島市立美術館)「考古資料」(ふるさと考古歴史館)「文学」(かごしま近代文学館) 「人形」(かごしまメルヘン館)「西郷隆盛ゆかりの品」(西郷南洲顕彰館) 「明治維新ゆかりの品」(維新ふるさと館)等のタイプの異なる資料が串刺しで横断検索できる。また、市内に点在する「彫刻・記念碑」「伝統工芸品」「自然遊歩道」「文化財」については、マップから検索できる。試しに「西郷隆盛」をキーワードに横断検索したところ各施設の所蔵資料84件がヒットした。基本情報、詳細情報ともメタデータは多くないが、「どこに何があるか」「同じテーマについて館種を越えてどんな資料があるか」を探すにはなかなか便利。分類別、年代別の検索コースもある。

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