2002年5月「地域学習へのアプローチ」  
*コメント・URLは2002年5月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 4月のテーマ「地域学」を今月も続けるつもりで、5月のサイト選びを行なっていましたが、どうも「学」より「地域コミュニティづくり」とか「地域学習」とかのほうが落ち着くような気がして、選定の視点を「学」より「地域コミュニティ活動としてのWeb利用」や「活動の現在進行形や成果をライブラリー化しているWebサイト」に変えてみました。

 それでも推奨5サイトは結構タイプに違いが出てしまいましたが、但馬学研究会の活動はインターネットの無い時代からスタートしているにもかかわらず、ホームページにはその頃の活動成果もきちんと反映されていて敬服しました。

 地域を学ぶということは過去と現在を未来につなげていくことであると、どこかのページに書いて有りましたが、未来につなげる知のネットワークを広げるには、インターネットは本当にいいツールだと改めて感じた次第です。

【但馬学研究会】
http://www.tajimagaku.org/
 1990年7月に第一回公開セミナー「但馬学への誘い」を開催して以来、12年間にわたって、スタディ例会や公開シンポジウム等を毎月企画実施している研究グループが運営。スタディ例会のレポートを毎回まとめて公開しており、講座案内だけで内容が乏しいことが多いこの手のサイトでは出色のサイト。掲示板では、専門的な問合せにもきちんと対応している。インターネット上のレファレンス機能を果たし、但馬に関するインターネット上の図書館といった感がある。研究・学習活動の蓄積がコンテンツの豊かさと、レファレンスに繋がっており、但馬地方外の人にも地域の良さや歴史・風土の重みが伝わってくる。

【山形県地域文化情報館】
http://www.yamagata-net.jp/bunka/index.html
 東北芸術工科大学地域文化創造支援グループが情報コーディネータとなり、山形県とともに制作したサイト。みんなが楽しく学習したり、地域の情報を伝えたりできる市民参画型ネット「やまがたネット」のなかにある。内容は、同大学 赤坂憲雄教授執筆の「山形の原風景をもとめて」と「山形の文化(総括編)」、同大学メディア環境研究室の前川道博さんが推進しているPopCorn・PushCorn(Webサイト編集・生成ツール)を使って作成された「草木塔データベース」「民話データベース」「紅花文化データベース」「文化振興データベース」で構成されている。本サイト構築の指針となった「山形地域文化データベース調査報告書」も公開されており、興味深い。地域文化のデジタルアーカイブを専門家や市民、学生、児童が参加し、育てていくというインターネット時代ならでは生涯学習の試みとして注目される、デジタルアーカイブのリーディングサイト。

【仁尾町地域学習のページ】
http://www.town.nio.kagawa.jp/clt/
 仁尾町(香川県)について勉強したい小・中学生を対象に構成されたサイト。「文化財探検」「お仕事探検」「自然探検」の3つの分野で構成されいる。現在「文化財探検」が公開されており、その他は作成中。「文化財探検」は指定文化財の紹介、子ども文化財探検日記、町内文化財マップ,仁尾町歴史年表、町内文化財一覧で構成されている。子ども文化財探検日記は「子どもたちが伝統文化に親しみ、それに関わる人々と交流を深め、ふるさとの歴史や文化に誇りを持ちながら、心豊かに成長することを願い、地域に残る文化財、民俗芸能、伝統技術などについて調査・体験学習を行う」という趣旨で企画され、地域の伝統文化の保存会や自治会、子ども会などが協力して実施している。人口約7,000人、小中学生約700人の町の心意気に感動。是非とも今後の充実が期待される。

【Information かのがわ】
http://www.nwo.go.jp/index.html
 国土交通省中部地方整備局 沼津工事事務所が運営している狩野川水系の総合情報サイト。魚の特徴や川の中の生活を調べる「バーチャル狩野川水族館」、川について調べる「デジタル狩野川資料館」、水中の魚を見ることができる「柿田川ライブカメラ」等、川をテーマにした総合学習等に向けた情報から、地域で生活している人全体を意識し、災害を想定した「浸水想定区域図」「洪水非難地図」「氾濫シミュレーション」等、官が持っている情報を積極的に公開。情報の専門性、詳細性、正確さが求められる公的機関のサイトがさらに地域学習にも積極的に取組んでいる姿勢が注目される。

【NPO法人 グラウンドワーク三島】
http://www.gwmishima.org/
 富士の湧水が豊富な三島市を中心に「右手にスコップ左手に缶ビール」をモットーに活動しているNPO法人グランドワーク三島のサイト。市民団体や商工会議所など20団体が参加している。設計から構築まで市民参加の水車づくりを進めている匠の会や、ホタルが棲息できる水辺環境を工夫し、ゲンジボタルの幼虫を育てて放流しているホタルの会などが、学校週5日制に伴い、学校や公共施設、海、山、川などの自然を会場として活動。「グランドワーク」というだけあって、自分たちの暮らす地域の環境改善をテーマとしながらも、遊びの要素も入れた身体で学ぶ地域学習が持ち味。親子参加の環境学習や体験学習を重視する県の生涯学習事業にも一役かっている。

-UP-