2002年4月「地域学」  *コメント・URLは2002年4月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 4月推奨サイトは「地域学」とした。「学」という以上、領域・体系・レベル・傾向等があるのだろうが、地域学はカテゴリーキラーなうえ、生涯学習や地域学習という視点から考えると、各地域の自然風土、生活、そこから生まれた文化の意味を受け止め、現代から未来へ受け渡していく知識や知恵を獲得したい、とする学びのように思われる。

 また、全国の生涯学習機関の学習プログラムにも〇〇学講座があるのは、自分の住む土地や育った土地と自分を結びつける確かな精神世界を、多くの人が求めているからかもしれない。

 今回、手始めとして、いろいろな地域学関連サイトをブラウジングしてみた。しかし、活動紹介は盛んだが、地域学のコンテンツ自身の発信はそれほど多くはない印象をもった。また、前年度に推奨した「デジタルアーカイブ」のサイトとも重なり合う部分があり、この分野のコンテンツを充実していくには、ICTリテラシーの推進が重要な鍵を握ると痛感した。

 推奨サイトの5サイトの他にも「姫島学」http://contest.thinkquest.gr.jp/tqj1998/10089/index.html「長崎学(「長崎東高在京同窓会」内)」http://www19.big.or.jp/~higashi/nagasaki/index.html「長崎楽会 」http://www.webgates.or.jp/~ichbinhy/gakkai/index.htmのサイトに味わい深いものがあった。個人の力の結集はやはり公的な世界を突き抜けるものがある。

【ザ・地域学(山形県生涯学習文化財団)】
http://www.yugakukan.or.jp/main.html
 山形県生涯学習センターは、「山形学」の主催講座やシンポジウムを行っている。県内各地の教育委員会やNPO等の実行委員会との「地域連携講座」に力を入れる一方、全国的な地域学の交流にも力を注ぎ、H13年度に山形県で行われた生涯学習フェスティバルでは、「全国地域学サミット」を開催する等、全国のリーディング機関の役割を果たしている。同県では、地域学を学問としての側面の他、学習活動等で培われた資質・能力・知識などを地域活性化や地域づくりに役立て「地域を創る」ことを目標とする運動・地域活動と位置付けている。「ザ・地域学」は、「全国地域学の一覧と概要」、「平成12年度全国地域学交流集会報告書」、「全国地域学交流会議室」(掲示版)、地域学の「リンク」等で構成されており、地域学の貴重なサイトとなっている。

【長崎学(長崎県教育庁学芸文化課)】
http://www.pref.nagasaki.jp/nagasakigaku/index.html
 長崎学県民講座、ふるさとビデオ作成、冊子刊行、資料展開催、高等学校での教育活動、シンポジウム等、約15年にわたる地道な事業から蓄積された情報を整理し発信している。また、「民俗芸能の保存振興」では県内の国指定、県指定の無形民俗文化財を一覧で紹介。「長崎県の文化財」ではエリアやキーワードで検索が可能で、1件1件の登録データをPDFでダウンロードできる。このほか「長崎街道」、「長崎県の産業遺産」など、地域社会の文化、歴史を学ぶ事業や成果等を公開するポータルサイトとなっている。県教育庁が生涯学習、地域学習推進の柱として「長崎学」に腰を据えた取り組みをしている点に注目したい。

【東北芸術工科大学 東北文化研究センター】
http://www.tuad.ac.jp/tobunken/index.html
 同センターは、“弥生史観の暗闇の中から、縄文の光が次第に大きく日本の魂を揺さぶりはじめている”(同センター宣言文)とする明快なコンセプトのもとに、「公開講座・公開講演会」、「シンポジウム」、「高校生のための地域学ゼミナール」、「東北文化友の会」、「地域学連携のための助成制度」(友の会会員対象)、「東北の地域づくりのためのセミナー」「地域映像シリーズの自主制作」、「東北学の刊行」等を行っている。本サイトはそんな「東北学」研究・普及拠点として、事業活動とその成果等を発信する場を提供。また、列島全域を領域とした民俗学、歴史学、考古学にまたがる図書資料を収集し、ネットでの検索サービスを提供している。

【「とはなにか学舎」Cゼミ2000(掛川市教育委員会・生涯教育課)】
http://www.conception.co.jp/nanika/
 掛川市および地球掛川学研究所が開設している単位制の生涯学習講座「とはなにか学舎」2000年度生のセカンドステージ(第2年次)・Cゼミによる「提案」を活動の記録とともにまとめたページ。本事業の特長は、「掛川で楽しく、豊かな暮らしを実現するための提案と実践を、コトおこし(イベントの実施)、モノづくり(商品やサービスの開発)を通じて試みる」というもので、Cゼミは「川」、「水」、「音」、「茶・器」の4つのグループに別れ、それぞれ「地域の個性、自然資源、得意ワザ」をテーマに掛川流の新しいライフスタイルを提案するため、活動を通して「視点:ビジョン」、「着想:コンセプト」、「仲間:ネットワーク」の基本発想を学び、その成果を公開している。地域に根ざし、地域ならではの新しい生活スタイルを発見していく過程とその手法が、レポートで簡潔にまとめられており、生活レベルにおいて「コトを起こす」地域学として注目される。

【吉野熊野学(フレンズネット)】
http://www.mie-c.ed.jp/friends/index.html
 「吉野熊野学」は紀伊半島の自然・歴史・文化等を3つの分野(自然・歴史・文学)に分けて教材化した新しい科目。平成11年度より三重県立木本高等学校、奈良県立五條高等学校、奈良県立十津川高等学校、和歌山県立新宮高等学校の4つの高校がテレビ会議システムを用いた遠隔共同授業として取り組んでいる。平成13年度の授業のレポートが本サイトで公開されている。フレンズネット(紀伊半島3県高等学校ネットワーク推進事業)自身は3県の高校がマルチメディアを活用して高度情報化時代の教育ネットワークのあり方を研究する目的で平成8年から検討が行われ、11年から共同授業がスタートしている。テレビ会議とインターネットによる地域学の遠隔共同学習事業の例として生涯学習機関の今後の取り組みの参考となる。

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