2001年9月「デジタルアーカイブ その1」
*コメント・URLは2001年9月当時のものです

選考者のつぶやき(財団法人AVCC 普及啓発部長 丸山 修)

 今回は「デジタルアーカイブ」をテーマにすることで、選定作業を始めた。

 いろいろ見ていくうちに、デジタルアーカイブといっても、視点の置き方で幾つか異なるタイプに分けるべき、と考え始めた。

 前川道博さんの「PopCorn(Multimedia Mapping支援/生涯学習支援ツール)」に出会ったとき、「今回はこういうタイプのサイトを選ぼう」と決めた。大上段にデジタルアーカイブなんて名乗らずとも、生活に密着した活動のなかから、出来てくるデジタルアーカイブもいいんじゃないか、と考えた次第。

 デジタルアーカイブが目的ではなく、自然を守る活動が蓄積されること、活動自身にインターネットが利用され、そしてその蓄積自身が広く公開されることにより、多くの人の利用に供されること、そんな草の根のデジタルアーカイブ広がることを願う。

 今回は自然系に限定したが、次回は別な視点でトライしたい。

【電子博物館(滋賀県立琵琶湖博物館)】
http://www.lbm.go.jp/emuseum/emuseum_f.html
 本ページは滋賀県立琵琶湖博物館のサイトの一部。「電子図鑑」、「画像(写真)データベース」、「魚類標本データベース」、「図書データベース」で構成されている。電子図鑑は琵琶湖の魚とトンボが索引から検索できる。データ量は魚が17科67種、トンボが11科98種。画像(写真)データベースは「写真で見る生活史」(6428件)、「水環境カルテ」(10493件)、「災害写真」(446件)で構成され、地図をリックするとその場所のデータと地図(全県、部分拡大)が示される。地図データはクリック位置に対応して表示範囲が東西南北に移動する。□の中の赤い点をクリックすると、その位置に関係付けられた写真を表示する。使いやすく、データ量も多い。 水環境カルテは、環境に関心の高い地域住民がコミュニティ水環境調査員として調査に参加している。画像(写真)データベースは、博物館を中心に様々方々が資料を提供し、地域の生活文化、自然、環境などのデータをデジタル化した未来へのメッセージ。

【PopCorn(Multimedia Mapping支援/生涯学習支援ツール)】
http://www.mmdb.net/popcorn/
 「PopCornワーキンググループ 」(事務局:東北芸術工科大学デザイン工学部情報デザイン学科専任講師 前川道博さん)が運営しているサイト。テキスト、静止画、動画、音声などのマルチメディアデータを素材として、手軽にWebページを自動生成す るツールを提供している。WGのメンバーがそれぞれのテーマで成果物をサイトにUPし ており、山形、岐阜、茨城などの地域情報をはじめ、旅のレポート、生涯学習/学習 教材などのコンテンツが紹介されている。「PopCorn」の仕組みは技術的な知識が必 要なため、現在誰でも簡単に使えるツール「Push Corn」の開発が進められている。 誰もが簡単に情報を発信することができるツールが整うと、さらに「デジタルアー カイブ」という側面でもWGが普及すると期待できる。 前川さん自身はマッピング 霞ケ浦、マッピング津軽なども運営している。

【多摩川流域リバーミュージアム】
http://www.tamariver.net/index.htm
 本サイトは市民(団体)、自治体、河川管理者などの協働により維持、運営されている。事務局は財団 法人河川情報センター広報課。広大な多摩川流域の自然、環境、生活、歴史・防災などの情報を、専門 分野の高度な情報から、市民による情報まで幅広く提供している。「水辺の再発見情報」「市民のパト ロール情報」のコーナーでは、流域の小学校や市民がIDとパスワードの発行を受け、情報登録者として 参加。「航空写真」、「宿河原堰周辺の変遷」、「地形図」は年代順に写真とデータで構成されてい る。活動とその蓄積(データベース化)、インターネットによる情報発信・交流をみごとに実践してお り、ネット上の優れたミュージアムになっている。画面.構成も洗練されていて使いやすい。

【勝浦川流域ネットワーク[勝浦川と棚田の学校]】
http://www.soratoumi.com/river/ryuiki/index.htm
 本サイトは徳島県上勝町の棚田と勝浦川流域の自然を守る活動を実施している勝浦川流域ネットワークが運営している。同会は年会費3,000円で運営するボランティア団体。棚田の学校は1999年より活動を開始。田植え、茶摘み、草取り、稲刈り、収穫祭などの活動を実施、その内容を写真と文章でレポートしている。2001年は「海と山を結んでいる川の原点は森にある」ことから森林づくりの準備として植樹活動に取組んでいる。流域の人も都市部の人も、親も子も一緒になって汗を流す活動が、一つ一つ記録され、データとして蓄積され、未来への遺産になっていく、普段着のデジタルアーカイブに乾杯。

【バーチャル自然公園 IN AOMORI】
http://www.vmas.kitasato-u.ac.jp/natural/home.htm/
 本サイトは、十和田市在住のアマチュアカメラマンの方と北里大学獣医畜産学部の学生が撮影した写真などを集めてつくられている。青森県の自然が盛りだくさん。動物、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、魚類、昆虫、その他、植物、きのこ、風景に分類され、それにぶる下がる形で 個々のデータが表示してある。キーワードを入力して検索したり、項目を選択して検索したりせず、 ストレートに目的のデータに辿り着ける。操作方法も「戻る」、「進む」のパターンでやさしい。 小学生や高齢者などパソコン初心者でもストレスなく、情報を堪能できるので、IT講習の体験サイト としてもお勧め。データ量も多く、写真もいい。居ながらにして貴重な風物詩に出会える奥入瀬渓流や 八甲田の風景は絶品。

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